★メタルボンドクラウンの弱点って?
ほんの数年前まで、前歯の自費治療のクラウンといえば、金属で作ったフレームの上にセラミックを焼き付けて外側を白くしてある金属の焼き付け冠「メタルボンドクラウン」が主流でした。
というのも、同じ頃、前歯の自費治療のもうひとつの選択肢であったポーセレンジャケットクラウンは、メタルフリーで透明感があり非常に美しいという利点がある一方、割れやすいという決定的なデメリットがあったのです。結果的に、透明感はなくともセラミックの光沢を備え、しかもしなやかに噛む力を受け止めて丈夫なメタルボンドクラウンが、圧倒的に選ばれ使われていました。
ただ、このような優れた性格をもつメタルボンドクラウンにも、金属を使っているがゆえの弱点があります。クラウンを歯に被せるとき、その継ぎ目は歯ぐきの溝に隠すのですが、時間の経過とともに患者さんの歯ぐきが痩せると、その継ぎ目が外に見えるようになり、金属フレームの色が目立ってしまうのです。また、金属イオンが溶出し、歯や歯ぐきを黒くしてしまうこともあります。金属フレームを使った古いクラウンにはこうした経年変化がつきもので、これにお悩みの患者さんは多いのではないでしょうか。
★美しい歯&丈夫な新素材で、笑顔美人に!
むし歯になっているわけではなく、純粋に審美的な問題できれいなクラウンに変えたい、という患者さんにとって、少し前まで、治療のやり替えはかなりハードルの高いものでした。
というのも、その頃、きれいな前歯を作るための選択肢は2つしかなく、ひとつが、美しさは折り紙つきながら割れやすいポーセレンのオールセラミッククラウン、もうひとつは金属を使うメタルボンドクラウンを再度新たに入れることだったからです。
しかし現在では、審美性と耐久性を兼ね備えた新素材の「オールセラミッククラウン」が誕生し、課題だったデメリットが解消されました。それにつれ、治療のやり替えに積極的な患者さんも増えています。私たち歯科医師としても、審美治療をご希望の患者さんに、デメリットの少ない選択肢をご提案できることはうれしい限りです。
ただ、治療のやり替えが可能かどうかは、クラウンがよくお手入れされ、歯根が健康で歯質が十分に残っているかどうかにかかっています。新たな治療をご希望のかたは、まずは歯科医師の診査・診断を受けましょう。
引用参考文献:nico 2014年4月号