新型ウイルスへの防御力、上げましょう!お口からはじめる感染症対策!

新型コロナウイルスという新たな脅威の詳細は、まだ明らかではありません。しかし、インフルエンザウイルスと同じエンベロープ(被膜)をもつウイルス族だけに、感染の仕組みは共通していると考えられます。ですから、新型コロナウイルスから身を守るためにもっとも参考になるのは、インフルエンザの予防法でしょう。そこで、インフルエンザウイルスを例に、ウイルスがどのように私たちの体内に入り込むのかをみていきましょう。

 

★ウイルスはどうやって体内に入り込む?

 ウイルスはみな、生きた細胞に入り込まないと生きられず、細胞の中でしか仲間を増やせないパラサイトです。

 ノドなどの粘膜細胞のレセプター(細胞の膜にある受容体/入口)に吸着すると、自分を包む膜と細胞の膜を一体化させてスルリと内部に侵入し、細胞の中に自分の遺伝子を放り込みます。そして乗っ取った細胞のタンパク質やエネルギーを利用して、自分の遺伝子を増殖させていくのです。

 とはいえ、粘膜細胞はそうやすやすと乗っ取られるわけではありません。ふつうは豊富な粘液で覆われているので、ウイルスがレセプターに吸着しようとしても、粘液が邪魔してなかなか吸着できないのです。

 

★歯周病菌がウイルスの侵入を手引きする?!

 ただ、この粘膜による防御作用が弱くなってしまうことがあります。それにかかわっているのが、思わぬ伏兵、「歯周病菌」なのです。お口にプラークがたっぷりあり、歯周病菌が跋扈していると、歯周病菌の出す毒素が粘膜の層を溶かして壊します。するとウイルスの標的である粘膜細胞のレセプターが丸見えになり、吸着が容易になってしまう。つまり歯周病菌が、ウイルスがすばやく体内へ侵入できるよう手引きするのです。

 歯周病菌とウイルス感染のかかわりは、これだけではありません。歯周病菌の出す毒素が、ウイルスのもつ「細胞の入口を開ける鍵」をパワーアップさせてしまうこともわかっています。

 お口の中で歯周病菌が増える原因は、お手入れ不足です。歯みがきを怠ってプラーク(細菌のかたまり)が溜まったり、歯周病菌の巣になった歯石を放置していたりすると、歯周病が起きてしまいます。

 感染症から身を守るには、マスクに手洗い、うがい、体調管理と3密を避けること。これに加え、「ふだんからお口の中を清潔にして歯周病を予防すること」とおぼえてください。そのためには、歯科医院への定期受診もお忘れなく!

引用参考文献:nico 2020年7月

ヒリヒリ、ピリピリ、つらいです。原因不明の痛み 舌痛症!

★舌痛症ってこんな病気です

 「舌痛症」って聞いたことありますか?舌に起きる原因不明の慢性的なヒリヒリ、ピリピリ感。それが舌痛症です。

 舌が痛む場合、原因には、舌を噛んだときにできるキズや口内炎にはじまり、カンジダ症やドライマウス、舌がんに至るまでさまざまありますが、それらの可能性をすべて調べても特定の病気が見つからない場合に診断されます。

 中高年の女性の患者さんに圧倒的に多く、痛む場所は通常、舌の先や横っぺた。つまりちょうど歯に触れるあたりです。 

 朝よりも夕方から夜にかけて痛みが強くなる傾向があり、就寝中には痛みはなく、食事中や、何かに集中しているときには悪化せず、痛みが消えてしまうこともあります。そのため食事や睡眠の障害になることはまれです。

 

★「心の痛み」が原因のことも

 舌痛症の原因は、現在の研究では残念ながら「不明」とされていますが、脳が「心の痛み(ストレス)」をキャッチしたときに、その情報をうまく処理しきれず「からだが痛い!」という誤った翻訳をしてシグナルを発してしまうことが一因ではないかと考えられています。

 治療法も不明な点が多いものの、少なくとも心身両面からの対応が必要な病気であることが明らかになっています。

 もしかしたら舌痛症は、患者さんの心が「そろそろ少しのんびりしませんか」と発しているシグナルなのかもしれません。

 

★痛みの改善に向けたアドバイス

 「心の痛み」に着目して、舌痛症の痛みを減らすためのヒントをお教えします。専門外来の受診と合わせて、お試しください。

  • 痛む場所の繰り返しの確認は避けよう

 痛む場所が気になって、舌に変化がないか鏡で見たり、指で触ったり、歯に舌を触れさせるのを繰り返すと、痛みの記憶が定着し、症状が悪化することがあります。

  • どんなときに痛みが減るか観察しよう

舌痛症の痛みは、日や時間帯によって増減します。何をしているときに痛み

が増すのか、減るのかを意識してみてください。痛みを客観的にとらえて、痛みの不安から距離を置くきっかけになります。

  • お薬にくわえ生活の改善をしよう

お薬は舌痛症の抑制に効果的ですが、服薬をやめると痛みが元どおりになっ

てしまうのでは困ります。そこで、問診とカウンセリングで受けた生活指導を毎日に活かしましょう。食事では刺激物を避け、睡眠時間を確保します。できるところから、日常生活のストレスを減らしていきましょう。

引用参考文献:nico 2020年3月号

歯並びのためのお口のトレーニング

★歯並びに舌とくちびるが影響?!

 歯はきれいな馬蹄形に生えるのが当たり前だと思われがちですが、この馬蹄形は、歯と接しているくちびるや舌の筋肉から加わる力の支え合いによって生まれています。なぜなら、歯は力を与えられると、その方向にジワジワと動いていくからです。

 言いかえれば、歯は舌の力とくちびるの力のバランスが釣り合うところへと動き、並んでいます。とくに歯の生え替わり時期のお子さんの場合、

・乳歯が抜けた部分など、気になるところをつねに舌で触っている。

・飲み込むときに舌で歯を押している。

・お口をいつもポカンと開けている。

というように、お口の癖が、歯にかかる舌やくちびるの力のバランスを崩していると、その影響で歯は前へと動き、噛み合わせも崩れていってしまいます。

 

★舌には理想的なポジションがある。

 歯に加わる力のバランス、ひいては歯並びを乱す原因となりやすいのが「舌」です。いまこれを読んでいるあなた、舌の先はお口の中のどこに触れていますか。上あごの天井付近ですか。それとも前歯ですか。

 じつは舌には、収まるべき正しい位置があります。リラックス時に舌が上あごの天井につきつつ、舌先は前歯に触れないか、触れたとしてもほんの軽く触れるくらいの位置が理想です。

 対して、舌が上あごにつかず、低い位置にあり歯にもたれかかっていると、常に歯に力が加わってしまいます。

 また、舌の癖は矯正治療の妨げにもなります。舌からかかる力のせいで、矯正装置を入れても想定したほど歯が動かなかったり、治療が済んで装置を外した後に後戻りを起こしてしまうことがあるのです。

 

★トレーニングで矯正治療がスムーズに。

 こうした癖を改善し、矯正治療をスムーズに進めるために役立つのが「お口のトレーニング」です。舌を上あごの天井に当てる、舌を上に持ち上げる力を鍛える、奥歯を噛みしめて噛む力を強くするなどの練習を、矯正装置の装着と並行して(または単独で)繰り返していただきます。これは専門的には「MFT:口腔筋機能療法」といい、舌をはじめとしたお口まわりの筋肉のバランスを整える効果があります。

 ただし、トレーニングはすぐに効果が出るものではありません。長時間、毎日繰り返していただくことで、徐々に効果が表れてくるものです。慣れるまで舌が疲れたり痛くなりますし、時間も根気も必要となります。ですが、素敵な歯並びのために大切なことですので、歯医者さんといっしょに根気よくがんばっていきましょう!

引用参考文献:nico 2020年2月号

被せ物は人口。だけど土台はむし歯になります。意外と知らない?被せ物長持ちナビ!

★被せ物を支えるのは患者さんの天然歯

 被せ物の治療が終わり、きれいな人口の歯が入ると、「これでもう歯科医院にしばらく通わずにすむ」と思う方もいることでしょう。人口の被せ物により「歯が強くなった」と考える方もおられるようです。

 でもこれ、じつは大間違い。被せ物の治療というと、口を開いたときに見えるところにばかり目が行きがちですが、その耐久性を決めているのは、歯ぐきの下、歯を支えている骨の中に隠れている「患者さんご自身の歯の根(歯根)」なのです。もちろん被せ物自体は一定の耐久性を備えていますが、それを支える土台の歯は、ケアを怠るとむし歯や歯周病になってしまいます。

 

★土台の歯のむし歯にご用心!

 被せ物の治療では、患者さんの歯を削ってつくった土台の上に、キャップ状の補綴物(セラミックや金属など)をかぶせます。建築物の耐久性がその土台にかかっているように、被せ物の治療の寿命は、土台の役目をする歯にかかっています。

 ただ、この土台の歯は、もともとそれほど強度に恵まれていません。被せ物がかぶさっている歯の多くは、むし歯のために神経を取ってあるなど、大きな負荷がかかる治療を経ているからです。大きな治療を経て残すことのできた歯は、健全歯だった頃にくらべると、むし歯に対しても噛む力に対してもだいぶ弱くなっています。

 

★定期的なメインテナンスが長持ちの秘訣

 大切の土台の歯を守って、被せ物をなるべく長く使っていくにはどうすればよいのでしょう?そのカギを握るのが、歯科のプロフェッショナルによるお口の健康の維持管理=「メインテナンス」です。

 土台の歯は、被せ物に隠れて見えません。神経を取ってしまった歯であれば痛みも出ません。歯のことは、「痛くないから大丈夫」と判断しがちですが、被せ物の土台の状態を把握するには、痛みと見た目はあまり役に立ちません。油断していると、被せ物と土台の歯のすき間にむし歯が入り込んだり、噛む力に耐えられずに土台の歯が割れてしまうこともしばしばです。

 割れてしまった歯は、ほとんどの場合抜かざるを得ません。ですから被せ物を入れた後は、放っておかずに、土台の歯がむし歯や噛む力で傷んでしまわないようにプロの目で見守ってもらう必要があります。

 お口の中に被せ物がある方は、被せ物の治療の寿命を延ばすために、定期的なメインテナンス受診を始めましょう!

引用参考文献:nico 2020年1月号

見過ごしてない? お口のなかのにおいの元 不快な口臭のふか〜い話

 口臭というと、「歯磨きはしているから胃腸が悪いせい?」とお口以外の原因を思い浮かべがちですが、ほとんどの口臭の原因はお口の中にあります。歯周病やむし歯、舌や歯の汚れがにおいの元となっていることが多いのです。口臭ストップの早道は、歯科治療とお口のケアにあり!です。

 

★においの主犯はお口の細菌!

 ミクロの世界で見ると、口臭の主犯はお口の中の細菌といえます。細菌のうち、特に歯周病菌などの酵素を嫌う菌が、悪臭をともなうにおい物質を生み出します。彼らが唾液や血液、はがれ落ちたお口の粘膜、食べかすに存在するタンパク質を分解したときに、揮発性の硫黄化合物を出すのです。

 

★あなたは大丈夫?お口の中のにおいの元

 不快な口臭の元となるのは、おもに以下のようなお口の病気や汚れです。

・歯周病になっている歯周ポケット

 歯周病になっているとき、歯周ポケットの中にはプラークや歯石のほか、死んで歯ぐきや頰からはがれ落ちた細胞(老廃物)や、血液、体液、細菌の代謝物が溜まり、強いにおいを発します。

・溜まったプラーク

 磨き残しにより溜まったプラーク(歯垢)もにおいの元になります。入れ歯の方は、入れ歯自体のお掃除も欠かせません。

・象牙質に及んだ多数のむし歯

 歯の表面を覆うエナメル質はほぼ100%無機質ですが、内部の象牙質は約3割がタンパク質(コラーゲン)でできています。むし歯が進行すると象牙質のタンパク質が細菌により分解され、においを出します。むし歯が深く多いほど、においは強まります。

・被せ物やブリッジと歯ぐきの境い目

 被せ物と歯ぐきの境い目や、ブリッジのポンティック(ダミーの歯)と歯ぐきが接する面もお掃除が行き届かないことが多く、においの元になりやすいです。

・舌苔

 舌の表面は一見平坦のようですが、じつは非常に微細で長い毛足をもつじゅうたんのような構造です。舌苔は、これに新陳代謝ではがれ落ちたお口の粘膜や細菌が付着し、ベットリと厚い層になったものです。

 

 歯周病やむし歯など、お口の病気が原因のにおいは、治療をしなくては解消されません。また、プラークや舌苔がたくさん残ったままでは、ブレスケア製品でにおいをごまかそうとしても焼け石に水。歯の健康を取り戻す、または維持するついでに口臭予防もできるのですから、定期的に歯医者さんに行かない手はないですよ!

引用参考文献:nico 2019年12月号

歯周病が進行たその歯 歯周組織再生療法で救えるかも。

 歯周病が進行すると、あごの骨をはじめ、歯のまわりの組織が失われていきます。そうなると歯を支える組織が減ってしまうため、歯の寿命にも影響が及びます。そんなときに歯を救う助けとなり得るのが「歯周組織再生療法」(以下、再生療法)という治療法です。

 

★再生させるのは骨だけじゃない。

 歯を支えているのはあごの骨だけではありません。歯の根の表面にある「セメント質」や、セメント質とあごの骨のあいだにある「歯根膜」が、歯と骨を結びつけているのです。再生療法はこれらの組織を再生させることを目的とします。

 再生療法では、歯の根のまわりの組織が失われた部分に特殊な再生材料を入れるなどして再生を促します。

 歯ぐきを切り開いて歯の根を露出させ、プラークや歯石を除去してから、再生材料を充填。それから歯ぐきを元通りの位置に戻して縫合します。歯の根のまわりにはほとんど血餅ができますが、この血餅がとても重要で、これが歯を支える組織––––歯根膜やセメント質、あごの骨の変化していくのです。

 

★治療の手法はいろいろあります。

 再生療法には、「エムドゲイン®ゲル」や「リグロス®」といったジェル状の材料のほか、お口の中のほかの場所から採取した骨、人口の骨補填剤(ウシやブタなどに由来)、薄い膜状の材料などが用いられます。

 とはいえ、再生療法はどんな状態の欠損でも再生できるわけではなく、欠損の範囲が広いと十分に再生できないこともあります。そのようなときには、上記の手法を組み合わせるなどして治療を行います。

 

★治療を行なった後は、約2週間後に縫合したところを抜歯し、経過観察を続けて8〜9か月後に組織の再生を確認します。

 抜歯までは、治療した歯では噛まないように。また、歯ブラシを当てるのもNGです。治療した歯とそのまわりは、殺菌作用のある洗口液でケアをしましょう。歯みがきができないぶん歯科でクリーニングをしますので、週に2回は必ずご来院ください。

 抜歯後は、毛先のやわらかい歯ブラシで歯みがきを再開します。その後は1週間に1回、数週間に1回と来院していただく間隔を伸ばしながら、治療したところのチェックとクリーニングを繰り返します。

 8〜9か月たって、無事歯を支える組織の再生が確認できたら、治療を行なった歯を長くもたせるために、その後も歯科のメインテナンスに通ってくださいね。

引用参考文献:nico 2019年11月号

奥歯がないと糖質過多に?!噛めるお口で減らす 糖と脂肪のおはなし。

★奥歯を失ったままだと太りやすい?!

 奥歯を失って、不便に感じながらもいつの間にか慣れてしまい、治療を先延ばししている患者さんをときどきお見受けします。ですがこの「慣れ」こそ怖いのです。

 奥歯を失うと、咀嚼機能が低下します。すると、ラーメンやカレーライス、スナック菓子といった、軟らかくて食べやすく、簡単に満足感を得られやすいものに手が伸びやすくなります。こうした食事はカロリーオーバーを引き起こしやすい一方、筋肉量の維持に必要な動物性タンパク質や、老化を防ぎ体調を整える抗酸化物質、ビタミン、ミネラル、食物維持などに乏しく、深刻な栄養不足をまねきやすいのです。

 奥歯を失ってから、食の好みが変わってきていませんか?糖尿病や脳梗塞、心筋梗塞などの発症リスクを減らすために、歯科治療で噛めるお口を取り戻しましょう!

 

★肉や野菜、不足していませんか?

 奥歯を失うと次第に食べにくくなるもの、その代表格が「肉と野菜」です。

 奥歯を失ってからよく噛めない状態は、本来とても強いストレスを生みます。その結果ストレスを感じずに食べられる軟らかい食事を自然と好むようになり、糖質過多、低タンパク質、低ビタミン、低ミネラルに陥ってしまう人がとても多いのです。

 タンパク質の摂取が不足すると、「サルコペニア」(骨格筋減少症)になる危険性が。これはつまずきや転倒の原因で、いま話題のフレイル(要介護状態への前段階)に直結します。くわえて、ビタミンやミネラルは、摂取したタンパク質を使って効率よく筋肉量を維持するために欠かせません。

 しっかりと栄養の摂れるお口を戻すにはどんな治療法があるのか、歯科医院でご相談いただきたいと思います。

 

★噛めるようになってからもご注意を!

 奥歯にインプラントが入ると、以前のように「よく噛めるお口」が戻ってきます。ただ、私が非常に気になっているのが、急激な体重の増加です。入れ歯やインプラントの治療を終えた患者さんに、少なからず起きてくる変化だからです。

 噛まずに流し込める軟らかい食事は、歯が入っても食べやすいことに変わりはありません。そのため、放っておくと治療後も、奥歯がなかった頃の食の好みが継続してしまいます。定着した食習慣を改善するのは難しいものですが、改善をしないとますますメタボが加速し、動脈硬化や糖尿病などを発症、または重症化させかねません。

 治療が終わってよく噛めるようになったら、歯科医院や職場の栄養相談を利用して管理栄養士などの専門家の指導を受け、からだに良い食生活に戻していきましょう。

引用参考文献:nico 2019年10号

口内炎との違い、予防のコツ etc. いまこそ知りたい!口腔がん

★口腔がんってどんながん?

 「口腔がん」はお口の中にできるがんの総称です。舌、歯ぐき、口腔底、頰の粘膜、口蓋、顎の骨、唇など、歯以外のどこにでも発生する可能性があります。なかでも多いのは舌にできるがんで、約6割を占めます。

 年代・性別としては、60代以上の高齢者や男性に発症しやすい傾向があるもの、昨今では女性や若者の患者さんも増えてきています。日本では、口腔がんはずっと前から増加の一途をたどっており、現在の患者数は年1万人以上と推計されます。

 

★口内炎とはどう違う?

 口内炎がすべて口腔がんになるわけではなく、口内炎がある日突然、口腔がんになるわけでもありません。口内炎のうち、粘膜の細胞の増殖に異常が起きて、ごくまれにがんになる潜在能力を有したものが口腔がんになる可能性があるのです。

 くわえて、潜在能力をもった口内炎ががんになるには、必ず「前がん病変」(がんではない状態)を経由します。そして口内炎が前がん病変を経てがんになるには、5年以上の長い年月がかかります。前がん病変も必ずがんになるわけではなく、そのまま状態が変わらないこともあります。

 とはいえ、繰り返し口内炎になる場所では絶えず細胞の増殖と修復が行われていますので、細胞に異常が起きる可能性が高まります。口内炎ができるようなお口の環境を放置するのは、やはりよくないのです。

 

★「慢性的な刺激」が原因に。

 一般的にがんの原因は、食事、生活習慣(お酒とタバコ)、ウイルスだといわれていますが、口腔がんではさらにお口の粘膜への「慢性的な刺激」が原因となります。刺激が繰り返されるうち、ある時粘膜の細胞に異常が起き、口内炎から前がん病変、そして口腔がんになるのです。

 刺激には、歯が傾いていて舌やお口の粘膜にぶつかる、唇や舌を噛んでしまう、被せ物や入れ歯が当たるなどの物理的なもののほか、食品の添加物や、歯周病による炎症などの化学的なものがあります。重度のむし歯が絶えず当たる粘膜が床ずれのようになり、がんになった例もあります。

 口腔がんの早期発見には、異常を感じていなくても半年に1回は歯科で定期検診を受け、粘膜のチェックもお願いするようにしましょう。発症を防ぐために、慢性的な刺激となるお口の要因を取り除くことも大事です。万一、前がん病変が見つかった場合は、がん化を確認したらすぐに対応できるように、少なくとも3か月に1回は歯科で経過を見守ってもらえるようにしてください。

引用参考文献:nico 2019年9月号

お口に悪いだけじゃないんです。歯周病とからだの病気

 「お口の病気である歯周病がからだの病気に関係する」という話は、みなさんも耳にしたことがあるでしょう。今月は、特に関連性が高いと考えられている病気について、進行した歯周病がどのようにかかわっているかを、現在想定されているパターンをもとにご説明します。

 

★歯周病菌が脳梗塞や心筋梗塞を起こす?!

 歯周病が進行すると、腫れて出血した歯ぐきから歯周病菌が体内に侵入します。血流に乗った歯周病菌は、血管の内壁に入り込み、死んだあとにおかゆのようなかたまりとなります。すると、コレステロールが血管に沈着して動脈硬化を起こすように、かたまりとなった歯周病菌が血管を狭くし、血流を阻害するのです。これが脳の血管で起これば脳梗塞、心臓の弁で起これば心筋梗塞を起こしかねません。

 

★歯周病の炎症が糖尿病を悪化させる?

 糖尿病は、すい臓から分泌されるインスリンの働きが悪くなり、血糖の濃度(血糖値)が慢性的に高いままになってしまう病気です。歯周病に侵された歯ぐきでは、炎症が起こっていますが、進行した歯周病の場合、歯ぐきから「炎症性物質」がからだに入り込み、血糖値を低下させるインスリンの働きを邪魔します。その結果、糖尿病が悪化すると考えられています。

 

★お口の細菌たちが誤嚥性肺炎の原因に!

 誤嚥性肺炎は、本来は胃に入る食物や唾液が、誤って気管から肺に入ってしまうことが原因です。肺の中で食物や唾液に含まれていた細菌やウイルスが増殖し、肺炎を起こします。歯周病になっていてお口の中に細菌が多い状態だと、肺に入り込む細菌の量も必然的に多くなります。

 

★歯周病が早産や低体重児出産を招く?!

 歯周病による炎症性物質の増加は、妊娠中の母親のからだに作用し、子宮の収縮を引き起こす恐れがあります。子宮の筋肉が収縮した結果、赤ちゃんが押し出されて予定より早く生まれてしまうのです。また、歯周病菌が子宮内部に感染して早産を促す可能性も指摘されています。

 炎症が起きている歯ぐきは傷口と同じで、歯周病菌が体内に流れ込む入口になります。「歯ぐきから血が出る」という方はできるだけ早く歯科で治療を。炎症のもとであるプラークと、プラークがたまる足場となる歯石が除去されれば、炎症は徐々に治まります。

 

 今は異常はないと感じている方も油断は禁物。少なくとも半年に1回は、歯科でメインテナンスを受けてくださいね。

引用参考文献:nico 2019年8月号

ただの当座の歯と思ったら大間違い。知ってる?仮歯のだいじな役割

 歯の根の治療中や被せ物の製作中など、治療している最中の歯にかぶせる「仮歯」。取れやすく割れやすいので、患者さんにとってはやっかいな歯かもしれません。

 でも仮歯には、治療のクオリティを上げ、患者さんの歯を守るだいじな働きがあります。仮の歯だからどうでもいい?いいえ、決してそんなことはないんです!

 

★良質な治療のための“仮歯の3大役割”!

 なぜそんな仮歯がだいじなのか、その訳をご説明しましょう。仮歯は大きく分けて3つの役割を担っています。

  • 削った歯を細菌感染や刺激から守る。

仮歯をつけずに放っておくと、そこにプラーク(細菌のかたまり)がくっつき、被せ物をかぶせる土台の歯がむし歯になってしまいます。仮歯は細菌の感染や知覚過敏から、包帯のように歯を守るのです。

  • 歯が動かないように固定する。

歯を放っておくと自然と動きます。仮歯を入れておかないと、空いたスペースに隣の歯が倒れ込んできて、本番の被せ物がピッタリ入らなくなることがあります。

  • 歯根膜の感覚を維持する。

仮歯が入っていないとその部分で噛むことがないので、歯の根の周りにある、噛む力を感じるセンサー「歯根膜」が怠けます。すると、いざ被せ物を入れたとき「当たりすぎ!」と噛む力に過剰に反応してしまいます。そこで本番に備え、仮歯を使って、噛む感覚を忘れないようにします。

 

★仮歯をだいじに使うコツって?
・硬いもの、くっつくものは我慢。

 仮歯が取れたり割れたりしないように、硬い食べ物は避けましょう。グミやガム、キャラメル、おもち、求肥の和菓子などのくっつきやすい食べ物はよくありません。しばらくのあいだ我慢を。

・取れたらすぐ連絡を!

 仮歯が取れて1週間もたつと、歯が動いて本番の被せ物が入りにくくなります。もし取れたら、すぐに歯科医院にご連絡を。

・お掃除はていねいに。

 仮歯は、本番の被せ物ほどピタリと調整されていません。歯ぐきとの境目に汚れが溜まりやすいため、ていねいな歯みがきを。ただし、フロスや楊枝は仮歯に引っかかってしまうおそれがあるので使わないで。

 

 せっかく被せ物を入れるなら、お口にピッタリ収まって噛み心地の良い方がいいですよね。そのためには、本番の被せ物ができあがるまで、仮歯を壊さないように上手に付き合ってください。治療をより良いものにするために、ご協力をお願いします。

引用参考文献:nico 2019年7月号