コロナ感染対応について実例

コロナ感染対応実例

2020.8.5(コロナ第2波時)

当医院では2020.8.5のコロナ第2波で、まだ感染者も今ほど多くない時期に歯科スタッフの1人にPCR(+)の反応で感染者が出た中で、その当事者の歯科医院としてどういう対応をしたのか?ということをありのままにお話ししたいと思います。

まずは8.5.の朝にスタッフから今日は少し体調悪いので、大事をとってお休みします・・・との電話があった。

その時には、まさか当医院から感染者が出ることなどあまり考えてなかった。。。
丁度そのころは、もうすぐ産休に入るスタッフの勤務時間をどうするか?またそれに伴い診療時間をどうするか?といったことで頭を悩ませていた時期でもあったから。

その日は水曜日だったので、診療時間は午前中のみで終了して少し休んでいるときにスタッフからの保健所での確認でPCR(+)だったということで第一報が入った。

まず考えたのは、「 明日からのことをどうするか? 」だった。

その時のスタッフは医院に迷惑かけるということで、ただただ泣き崩れていた。。。

無理もない。

あの頃はまだコロナがでて半年程度で対策も手探り状態の中アクリル板での飛沫対策や風除室・待合室での換気、患者さまの触る場所のアルコール消毒の徹底などコロナ対策を十分すぎるほどやっている中だったので、院内感染やクラスターになるはずがない、ことはある程度分かっていた。

それから各スタッフからも 「 明日から院長どうします? 」 という連絡がたくさん入っていたこともあり、こういう時だからこそ 「 自分が院長としてしっかりしなきゃ! 」 と強く思い、考えた挙句に自分が出した結論は、 

『 明日から2週間医院を休診にする! 』という決断!

それには、その前の週の土曜日に昼食を一緒にとっていたので、スタッフの3人が 『 濃厚接触者 』(都城の保健所の定義では、症状の出た日の2日前からお互いにマスクを外した状態で距離が1m程度の状態で15分以上会話した場合に限る!)になったのも大きいが、それまでも昼食を時間差でとることや車の中や自宅に帰るなどして場所を変えて昼食をとるなど密になることの対策をとっている中で、土曜日のみ昼休み1時間でたまたま密になることが多い日でもあった。

2週間休診にすることは、自分が出した結論ではあり、医業収入が減ることはわかりきったことではあるが、それよりも大事なことは 

いつも一緒に働いてくれているスタッフやいつも当医院に来院して下さっている患者さまを守る!

ということだったのは間違いない。。。

そう考えると、濃厚接触者が例えPCR(―)だったとしても後から(+)になったという事例もあったことなどから、医療機関であることも考慮すると 『 2週間は休診にする! 』という結論になることは、自分の中では明白だった。

自分自身が迷っている場合ではない!

決断してからは、自分の信条でもある 『 即断・即決・即行動! 』だった。

まずは各スタッフに電話をかけて気持ちを聴くことから始めたが、この行動は2週間の休診期間中も何回も行った。

不安なのはスタッフも一緒だから・・・

その日の夜のうちにスタッフの1人からLINEをもらい、こういう風に公表しているところがありますっていう地元の大企業(都城に限らず、全国的にも有名な企業!)の公表している文章も参考にしてみて下さいって言うLINEだった。

自分もスタッフのみんなも公表することに関しては、何の躊躇もなかった!

後日談だが、コロナ感染対策のon-lineセミナーでは、

「 大きな企業や総合病院クラスだと公表するべきだが、1歯科医院程度ならば大々的に公表することでの風評被害などを考えると、今までも公表している医院などはないので、(*実際はこの時点で自分の医院だけは大々的に公表していたのだが・・・)これからも公表しなくても大丈夫ですよ! 」という結論だったが、果たしてそうだろうか?

自分の考え方で、特異なのは

      「 一般的にはこうだからこうしましょう! 」

みたいな考えが大嫌い!

だからこそ、この時には特にそう感じた。。。

スタッフと患者さまのこと考えたら、まずは公表した上で今ではこういうしっかりした対策をとっているので安心してご来院下さい!として、後は患者さまの判断に任せるのが筋だと思う。

確かに実際は最初のころはいろんな風評被害もあった。。。翌日の患者さまへは当日になるので、院長自ら当日のキャンセルをお電話で伝えると

「〇日の〇時〇分に、お宅の医院を伺ったのですが、その時感染した方はいましたか?」

「評判がいいから、いろんな方に紹介したのに、こんなことになるくらいなら紹介しなければよかった。。。」

「最悪!!!」 

など、大きくため息ついて無言で電話を切る方もいた。


院長の中には、自分自身のメンタルもやられる方もいるだろうなぁ~と一瞬考えた。

これも後日談だが、別の感染対策のon-lineセミナーでは、

公表していないにも関わらずあとで分かって、すべての窓ガラスを割られた歯科医院 や 院長は公表したくないがスタッフは公表するべきとの考え方の相違でスタッフ全員辞めた。。。etc. いろんな話も聞いた

中にはもちろん「大変ですが頑張って下さいね!」など励ましの言葉をかけて下さる方々も多くいた。

こういう風に人って有事の時にこそ、その人の「 ありかた 」がそのまま出るんだと強く感じた出来事だった。。。

翌日からのキャンセルは申し訳ないと思いながらも、予約システムからの一斉送信メールで対応して、もちろん歯科医院への問い合わせの電話も半端なかったので、2週間は毎日患者さまが来るわけでもないのだが、朝8:00~19:00くらいまで歯科医院に出向いて電話対応に追われていた。

ただ、他の歯科医師の先生には自分があまりにも明るく電話に出るので驚かれたのも事実!

実際、自分はこれからのことしか考えていなかった!前しか向いていなかった!

起こってしまったこと(PCR陽性のスタッフがいる)を悔やんでもコントロールできないことは事実なので、これからコントロールできることに対してのみ集中した。

それで公表する上で、いいか悪いかは別としてもっと拡散するという手段をとり、自医院のHPの新着情報やFacebook、Googleマイビジネスを使って結果として、1週間で以下の内容で4回更新した。

この時の拡散は凄まじく、改めてネット社会の実情にただただ驚いた。。。

1. PCR(+)のスタッフが出たことに対しての休診へのご迷惑への謝罪と現状説明

2. 患者さまは濃厚接触者ではないことと歯科受診は安全であるために受診をすすめる

3. 除菌・抗菌コーティングしたことの安心・安全へのアピール!

4. 感染したスタッフの退院のご報告と風評被害なかったことへの感謝とこれから!

まずは第一報として PCR(+)のスタッフが出たことに対しての休診へのご迷惑への謝罪と現状説明 で、8月6日(翌日)にまずははっきりと 『 2週間休診します! 』 ということをお伝えした後で以下のことを記載した。

  • 6日午後からの予約については申し訳ないが一斉メールでお知らせします!
  • 保健所から患者さんは全員濃厚接触者から外れるということでご安心を!
  • 濃厚接触者となったスタッフ3名はPCR(―)だったこと!
  • 個人情報保護の観点から感染者名などは歯科医院からは公表しないこと!
  • 一般的に歯科医院での感染防止策は徹底しているので安心して受診して下さい!
  • 問い合わせ電話殺到しているのでお待たせすることがありますがご了承下さい!

また第2報として 患者さまは濃厚接触者ではないことと歯科受診は安全であるために受診をすすめる ことを記載した。

  • 保健所からの濃厚接触者の定義の確認!
  • 再度、一般的な歯科医院での感染防止策の徹底にて安心して受診を!
  • 適切な歯科受診の必要性と他医院での安全の説明!
  • 患者さまに不安を与えないように、なぜ今休診しているのか?の事実!
  • 保健所からも歯科医師会からも診療再開することは問題ないこと!
  • これからの診療再開の予定の再確認!

続報としては、ここで1週間経過後に通常のアルコール除菌だけではなく、業者の方へ依頼して  除菌・抗菌コーティングしたことの安心・安全へのアピール! を心掛けた。

これは、まず 感染対策に強い専門業者に清掃を依頼 することでのスタッフや患者さまへの安心・安全が第一なのは間違いない!

不安なのはスタッフも患者さまも一緒なのだ!とスタッフと話す中で強く感じた。

最後の第4報としては 感染したスタッフの退院のご報告と風評被害なかったことへの感謝とこれから! についてこれから診療再開することへの決意を記載した。

  • 感染していたスタッフの退院の報告!
  • 濃厚接触者のスタッフの現況報告!
  • 診療再開予定について変更なしの確認!
  • なぜ今なお診療中止しているのか?理由の再報告!
  • 感染したスタッフの行動歴について歯科医院から公表なし!
  • 誹謗中傷なかったことへの患者さまはじめすべての関わる方々へのお礼!
  • 診療再開に向けての感染予防を徹底することへの宣言!

 

こうして2週間という長いようで短かった日も過ぎていき、いろんな振り返りやこれからの歯科医院についてやっていきたいことの確認など、自分にとってはとても充実した2週間だった。

診療再開するにあたってスタッフとは、実はその2日前から適切な感染防止の処置をとりながら集合していた。

今まで開業して15年経過するが、直近5年間で来ていない方々のカルテの整理をしたり、翌々日以降の来院する方々への電話対応などをしたりしてもらいながら、お互いのこの2週間の気持ちを聴いたり、感染したスタッフとは直接面談の時間をとったりしていきながら2日間半日出勤してからの診療再開だった。

最初、感染したスタッフは医院に迷惑かけたから辞めようと真剣に考えたことを別のスタッフに相談したらしいが、その相談されたスタッフが院長なら「こんな時に絶対何か言う人がいても、『 絶対俺が守る!から辞める必要はない!』っていうと思うよ!」と言ってくれてスタッフが思いとどまったということを聞いて泣きそうになった。。。

その感染したスタッフは、今でも元気に一緒に働いてくれている。。。
今となっては絶対欠かすことのできない存在になって、以前以上にめちゃくちゃ医院に貢献してくれている!

なんて自分は幸せなスタッフたちと一緒に日頃から働けているんだろう・・・と考えた。

一緒に働いてくれているスタッフも医院のことをこんなにも考えてくれているんだ!って再認識するにはイイ機会だった。

本当にすべての起こる出来事は必然で、そのピンチと思える出来事も乗り越えてみると大したことではないし、本当に大きなチャンスととらえることで、捉え方の違いだけだと思う。

実際今回のこの件で当医院を知った方もいると思うし、こういう考え方の歯科医師がいることも知ってもらえたと思う。

よく コロナのせいで~~~とかいう方がいるが、こういう時代だからこそ、できることって確実にあると思う。

結局他責にして被害者意識を持つことは楽だが、世の中の方々がすべてにおいて自責(自己責任)のもとで当事者意識を持ち自分が源の考え方で生きていけたら世の中も世知辛いものではなくなると考える。

みんなが利他的に 『 For you 』 精神で、自分がしてほしいことを他人にもしてあげることが出来れば、もっと幸せになると思う。

ここまで コロナ感染者が出たことの2020.8.5~ の対応について色々記載してきたが、この出来事を通して多くのことを学ぶことができた。

また新たにコロナでPCR(+)のスタッフが出た歯科医院の方からの当医院が公表していたことでのお問い合わせを多くいただいているのも事実。

これからもそういった方々への相談大歓迎だし、勇気付けになれば。。。という思いもあり長々と記載したことをご了承ください。

ここまで読んで下さったことへ対して感謝いたします。。。本当に心からありがとうございます!

医療法人 社団  ハートデンタルクリニック 理事長 葉 清貴