「切実だけど、なぞもいっぱい!原因不明の歯の痛み「非定型歯痛」

歯の痛みだけど、原因は歯以外にある?

 非定型歯痛とは、歯科で調べても原因がわからず、痛み止めもほとんど効かず、耳鼻咽喉科や内科で調べても原因が不明だ、という痛みをいいます。この痛みのはっきりした原因はまだわかってはいませんが、脳の中で起きており、ストレスや心理的な葛藤の影響を受けている可能性があります。

 つらい歯痛の原因を、「歯以外に原因があるかもしれない」「メンタルが原因の可能性もある」などといわれると、なんだか問題をはぐらかされているようで、納得のいかないお気持ちになるかもしれません。でもその歯痛の原因がもしも歯以外なら、歯科治療を繰り返しても、決して治りません。原因不明の歯の痛みが続くとき、歯以外の原因も探ってみることは、原因を正確に鑑別するためのとても重要なプロセスなのです。

歯科治療のストレスがきっかけに?!

 非定型歯痛が始まったきっかけが歯科治療だったというケースは、じつはしばしばあるのです。それには「口」という器官を扱う歯科ならではの事情が大きくかかわっています。

 口は、外界から食べ物を取り込む入口です。もしも誤って危険なものを取り込んでしまっては困るので、口には優秀なセンサーが集まっています。たとえば手や足に髪の毛が触れても、どうということはありません。しかし、口の中に髪の毛が1本でも入ったらどうでしょう?不快でたまりませんよね。口という器官は、それほど特殊な鋭敏さをもった器官なのです。

 そのうえ、口の周りには、目、鼻というセンサーもあります。こうしたさまざまなセンサーから厳しく警戒され見張られているため、歯科治療では、「不安」「不快」といった情動が本能的に働きやすく、大きなストレスになる傾向があります。

よりよい治療のため、ご相談ください!

 患者さんの治療に関する不安を減らし、納得して治療に臨んでいただくためには、カウンセリングや治療説明についての、いっそうの努力が歯科側には求められています。それと同時に患者さんも、治療についてわからないこと、不安なことがあれば、遠慮なく歯科医院にお尋ねください。ご相談いただければ、笑気麻酔などを使用して不安感を和らげることもできます。

 十分に話し合い、納得してから治療を受けることが、治療のストレスの軽減につながります。信頼関係を築き、より良い治療にしていきましょう。

引用参考文献:nico 2016年2月号

 

「この治療を成功させたい。だから禁煙をお願いします!」

タバコが歯にもたらす影響って?

 タバコが健康に悪いことは、みなさんよくご存知ですよね。

 お口は、毒性の強いタバコの煙に直接触れる場所。それだけに受ける被害も大きく、その影響は多岐にわたります。口腔がん、歯周病の重症化や治療・予防の効果への悪影響、外科治療後の回復の遅れをまねくほか、最近ではむし歯のリスクまで指摘されるようになりました。

 タバコが歯に悪さをする要因として従来から指摘されてきたのが、タバコの有害物質による免疫機能や修復機能の障害です。たとえば歯周病の炎症は、免疫機能がジャマされて歯周病菌をやっつけられないと重症化しやすく、歯を失いやすくなってしまいます。また、炎症や傷を治す修復機能がにぶるため、喫煙者の場合、せっかく歯周病の治療をしても治療効果が思うように上がらなかったり、治療後にいったん良くなっても再発しやすくなったりします。

タバコで細菌がパワーアップ?!

 じつは最近、こうした従来言われてきたリスクに加えて、タバコの有害物質に鍛えられて、歯周病菌やむし歯菌の病原体が強まることまで明らかになってきました。

 お口のプラークに似せた細菌叢を作り、タバコエキスを垂らして実験すると、歯周病菌はより攻撃的に毒素を出すことがわかりました。いっぽうむし歯菌も粘度の高いプラークを作ってその中に隠れ、旺盛に糖を食べて酸を作ります。プラークの外膜はタバコの刺激で厚く丈夫になり、酸をタップリ溜め込むことができます。すると酸で歯が溶け、むし歯ができ、プラークは悪玉化した細菌を保護してどんどん増やしてしまうのです。

治療・予防効果アップのため、禁煙を!

 ただし、歯石の除去やクリーニングを受けるなどの専門家による清掃と一緒に禁煙をすると、こうした悪玉菌もとたんに穏やかになります。細菌の細胞は比較的短周期で生まれ変わるので、ヒトの細胞が入れ替わってタバコの影響から脱するよりもはるかに早く変化が起きるのです。禁煙によって悪玉菌が減れば、歯周病やむし歯の治療後の再発が減り、予防もグッとしやすくなります。

 いまはすぐれた禁煙補助剤があり、辛い症状をやわらげながら比較的楽に禁煙することができます。

 治療や予防の効果を上げ、失う歯を減らすために、受診をきっかけに禁煙をはじめませんか?

引用参考文献:nico 2016年1月号