抜歯のまえ 抜歯のあと コンプリートガイド

 現在の歯科は、よほどの理由がなければ歯を抜きません。歯を救う方法はないかと検討したり、治療をしてみたりして、それでもやはり「炎症が止まらない」「周りの健康な歯まで悪くしてしまう」という場合に歯を抜いています。

 とはいえ、いくら理由があるといっても、患者さんにとって抜歯はつらい選択。頭で理解はしていても、心は不安でいっぱいという方もおられるでしょう。

 そこで今回は、抜歯まえに患者さんに必ず知っておいていただきたい注意事項や、抜歯後のスムーズな治癒に役立つアドバイスをコンパクトにまとめてご紹介します。

 

抜歯のまえのチェックポイント

・持病の薬は必ず申告を!

 狭心症や脳梗塞などの治療で血液サラサラの薬を飲んでいる方は、血が止まりにくいので事前に必ず申し出てください。

 また、中高年の女性に多い骨粗しょう症。この薬は、抜歯したときあごの骨が壊死する副作用がごくまれに出ます。その危険性を回避するために、こちらの薬も、服用している方は必ず事前に申し出を。

・体調管理に気をつけて。

 つい軽く考えがちですが、抜歯の手術は、骨がむき出しになる小外科です。体調はキズの回復にとてもだいじですので、体の調子を整えてのぞみましょう。

 このほか、抜歯の予約は医院の休診日の前日は避けたり、事前に歯科から処方されている抗炎症剤などの薬はしっかり飲んでおくことも大切です。

 

抜歯のあとのチェックポイント

・ガーゼは30分ちゃんと噛もう!

 傷口をおさえ止血するため、抜歯後にはガーゼを「30分」しっかり噛みましょう。血が止まったと自己判断し半端にやめると再出血のもとです。

・ブクブクうがいはNG!

 傷口にふたをしてくれている血餅が、うがいや舌で触れたせいでなくなってしまうと、骨が露出しひどい痛みが。口をすすぎたいときは、水をそっとふくむ程度で。抜歯した日の歯みがきもお休みしましょう。

 このほか、鎮痛剤は痛くなるまえに飲んだり、食事はトロトロのおかゆやポタージュ、ゼリーなどにしたり、運動、入浴、飲酒は2〜3日我慢することも大切です。

 

 歯を残すのはとてもだいじなこと。ですが、治らない病巣を温存していると炎症があご・頰・鼻に広がり、さらに危険な状態におちいることもあります。必要な抜歯は適切に受け、からだを守ってきましょう。

引用参考文献: nico 2017年2月号

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その治療に責任を持ちたい。だからメインテナンスにおいでください!

 歯が痛くなって歯科医院を受診したらほかにも悪いところが見つかったり、治療が終わって安心していたら、しばらくしてまた悪くなった経験はありませんか?

 お口の環境を改善して病気の原因を減らさないと、新たなトラブルと治療のいたちごっこに。むし歯や歯周病になりにくいお口に変えるため、定期的なメインテナンスをはじめましょう!

 

治療の繰り返しを止めるには?

 メインテナンスとは、歯科医院で受けられるプロフェッショナルケアのこと。お口の健康診断のほかに、歯や歯ぐきをすみずみまでクリーニングし、患者さんにあったセルフケアや間食のコツをお教えします。

 患者さんにメインテナンスの大切さを説明するとき、私はこんなたとえ話をよくします。「もし高血圧が原因で血管が切れたとき、血管だけつないで患者さんを帰すお医者さんはどこにもいませんよね?」って。

 高血圧の改善のために、患者さんごとに原因を調べ、投薬や食事指導など、その人に合った指導をするはずです。そのままだと再発してしまいますからね。

 お口の中の病気も同じです。治療がうまく終わっても、原因を減らさなければまた同じことが起きてしまう。だからこそ、専門家が患者さんといっしょに歯を守るメインテナンスが大切なのです。

 

メインテナンスで歯を守る! 

 歯周病が進行すると深い歯周ポケットができますが、問題は、治療して炎症が治ったあともポケットがなかなか浅くならないこと。放っておくと、歯ブラシの届かないポケットのおくに歯石やプラークが溜まって炎症が再発し、重篤になりやすいのです。

 また、詰め物や被せ物の周りは、削ったことのない健康な歯にくらべむし歯に弱いってご存知ですか?歯と詰め物の継ぎ目には、どんなに上手に治療しても、ミクロの目で見るとギャップ(段差)があり、そこにプラークが溜まりやすいからです。

 むし歯も歯周病も、知らないうちに少しずつ壊れていく病気。壊れてから「穴が開いた!」「グラグラする!」と気づいて治療を受けても、歯を救うには手遅れになってしまっている場合が多々あります。

 早めに気づいて対策をとるため、メインテナンスをはじめましょう!むし歯と歯周病のコントロールをトータルに受けられるので、歯の寿命に断然違いがでてきます。

 痛くなったら行く歯科医院から、お口の健康管理のために定期的に通う歯科医院へ。歯医者さんとの新しいお付き合い、はじめてみませんか?

引用参考文献:nico 2017年1月号

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