「がん治療を受けるなら。歯科の口腔ケアがお役に立ちます!」

 

がんと歯科って関係あるの?

 じつはがんの治療中は、口にさまざまなトラブルが起きやすくなります。アメリカの国立がん研究所のホームページにも載っている有名なデータによると、たとえば抗がん剤治療を受ける人の40%に口内炎などが起こります。さらに強い抗がん剤を使う骨髄移植や白血病の治療では80%の口にトラブルが起きます。口の周りに放射線治療を行う場合は、じつに100%の割合で口内炎などのトラブルが起きます。

 以前は、こうした副作用は、仕方のないこととされてきました。ところが治療が進歩し、手術も攻めの手術になり、昔なら切り取れなかったものも10数時間という長い時間をかけて切除するようになりました。また、抗がん剤が強くなるにつれて、口内炎などの副作用も以前よりつらいものになってきました。

 

医科と歯科が連携してサポート!

 こうした状況下で、静岡県立がんセンターの大田洋二郎先生らが取り組んでいた歯科の支持療法の成果が注目を集め、多くのがん治療の専門病院が「歯科の支持療法を取り入れたい」と模索するようになりました。

 そこで日本歯科医師会では、国立がん研究センターの大多数の患者さんの居住圏である東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県、山梨県の歯科医師会に協力してもらい、関東圏に連携モデルを構築することにしました。質の高い支持療法を実現できるよう、連携のための講習カリキュラムを作り、会員を呼びかけて、手を挙げた歯科医師に講習会を受けてもらうのです。

 こうして数年間で関東5都県だけで2、600人の歯科医師が講習1・2の受講を終え(2013年6月時点)、現在ではがんセンターの患者さんが、お住いの近くの登録歯科医院を名簿から選び、安心して受診できる体制が整っています。

 また、関東圏で構築されたモデル連携事業のノウハウは、全国の都道府県歯科医師会に伝達され、国が後押しをする形で各地域のがん医療連携拠点病院などとの連携をはじめています。

 

がんとの闘いを有利に進めよう!

 現在は、副作用の苦しみをゼロにはできないまでも、「やれることはなんでもやろう」「しんどい期間を少しでも短くしよう」という観点から、合併症の原因となる口のなかの細菌を減らすため、がん治療をはじめる前に歯科で口腔ケアを受けることが必須となっているのです。「がん治療を受けることになったらまず〈歯科〉へ」。このことを忘れないでください。

引用参考文献:nico 2013年5月号