「歯ぎしりから歯&治療を救いたい!」

治療の連鎖、ブラキシズムが原因かも!

 患者さんのなかには、歯のケアに熱心なのに、歯が欠ける、折れる、被せ物が壊れるなどのトラブルを繰り返すかたがいます。私の勤務する病院にも、そんな患者さんが来院します。お聞きすると、奥歯を失い、ブリッジやインプラントを入れてからも何度も壊れて作り替えたなど、治療の連鎖に悩んでおられるのです。

 そんなとき疑われるのが「ブラキシズム」です。ブラキシズムによって歯や歯の周りの組織、あごの骨などにその耐久性を越える力が繰り返しかかることでトラブルは拡大していきます。

 過剰な力が原因となれば、大切なのはその力を減らすこと。そのため欠かせないのが、患者さんの気づきです。普段の行動を認識することが改善への第一歩になります。食生活の見直し、クセの改善、睡眠時のブラキシズムは?etc.……あらゆる角度から力の影響を洗い出し、リスクをひとつずつ減らしていく必要があります。

 

眠りのサイクルとの関係って?

 睡眠中のブラキシズムはさまざまな要因が複雑にからまり合って起きるため、じつは残念なことに、その発生原因はいまだに解明されていません。

 一方、睡眠中のどんなときにブラキシズムが起きるかは明らかになっています。じつは眠りが浅くなるときに起きるのです。

 眠りには周期があり、浅いノンレム睡眠に引き続いて深いノンレム睡眠が現れ、その後、睡眠がぐっと浅くなりレム睡眠に移行します。浅いノンレム睡眠のあいだは、一過性の覚醒が頻繁に発生しますが、ブラキシズムはこの一過性の覚醒とともに集中して起こります。

 たとえば、いびきをすると息が苦しくなるために、たびたび眠りが浅くなります。すると眠りのサイクルが乱れ、ブラキシズムの発現も頻繁になります。健やかな眠りは、心身の健康にとって大切であることはもちろんですが、ブラキシズムの改善にとってもたいへん重要なのです。

 

小さな気づき、見逃さずに相談を!

 睡眠時ブラキシズムの被害を食い止めるためもっとも重要なのは患者さんの気づきです。患者さんが睡眠時ブラキシズムを認識し、納得してくださることが、スプリントを使って確実に被害を減らす第一歩です。

 むし歯や歯周病の感染対策に加え、今後は力がもたらす問題にも目を向けていただくと、あなたが抱えるトラブルを解決する新たな突破口が見つかるかもしれません。ぜひ試してみてください。

引用参考文献:nico 2014年3月

「これってどうして?治療のあとの痛みや違和感。」

治療後にシミるわけって?

 象牙質まで進んだむし歯を治療する際、さいわい神経を取らずにすんだ歯に、治療後冷たいものがシミる、違和感がある、強く噛むと痛いなどの症状が出ることがあります。治療自体はうまくいっているのにシミてしまうわけをお話しするには、まずは象牙質の構造の説明が必要でしょう。

 健康な歯は硬いエナメル質で覆われています。ところがエナメル質に穴が開くと、むき出しになった象牙質に加わるさまざまな刺激が神経に伝わるようになってしまいます。じつは象牙質は、細いチューブを寄せ集めたような構造をしていて、その象牙質のチューブのなかを、神経から延びる細長い神経組織が通っています。つまり、象牙質がむき出しになるということは、「神経がむき出しになるのとほとんど同じこと」なのです。

 治療後にシミるという症状も、やはりこうした構造が影響しています。むし歯を治療するには、細菌に汚染された象牙質を削って取り除きますが、じつはこのとき、チューブを通る細い神経組織の末端も一緒に切り取らざるを得ません。むし歯の治療とは、生体を切除するいわば外科処置。治療後にしばらくシミるのはこういうわけです。

 

刺激をブロックして神経を守る!

 また、細菌がチューブから神経へと入り込んでいる場合、生体が炎症を押さえ込むまで軽い違和感があります。

 しかしよくしたもので、刺激が神経に伝わり続けると、歯は刺激をシャットダウンするために、二次象牙質という防御機構を作り上げます。これには3ヶ月ほどかかりますが、二次象牙質ができると完全に症状が消え、新たに神経を取る治療を追加しなくても、様子を見ているうちに症状が消えてしまうことがほとんどです。

 

「自分の歯」を長持ちさせよう!

 神経は、神経組織以外にも毛細血管などが通っている、歯に栄養を運ぶ大切な組織です。神経を取っても、被せ物をして使い続けることはできますが、歯のいのちが失われるため、耐久性が落ちてしまいます。手の加わっていない自分の歯ほど丈夫でいいものは他にありません。

 歯科医師も、患者さんが久々に来院するたびに、嫌がられながら硬い歯を削らなければならないのは気が重いものです。そこで治療が終わったら、今度は予防のために歯科医院に通いましょう。治療の繰り返しから解放されているご自分に、しばらくしてきっと気づくことでしょう。

引用参考文献:nico 2014年2月号

知覚過敏と歯周病

歯がしみて困ったという経験はありませんか?

歯の歯髄には知覚繊維がりそれには痛覚繊維しか存在しないため、通常冷たいもので

                    「  歯がしみる  」

と感じているのは、実際は

                      “  冷たさ  ”

ではなく

                      “  痛み  ”

を感じた結果なのです。

この知覚過敏は専門的には

                  「  象牙質知覚過敏症  」

と呼ばれているもので、露出した象牙質の表面に冷たいものが接したときやブラッシングでこすたときなどに生じる一過性の痛みのことを指し、むし歯によって歯が侵蝕(しんしょく)されて生じる痛みとは明確に区別されています。

また意外に思われる方も多いと思いますが、この知覚過敏と歯周病には深い関連があります。

一般的に、歯周病になると歯肉や歯槽骨などの歯の周りの組織が破壊された結果、歯ぐき全体が下がってきます。

この状態を

               『  歯肉退縮(しにくたいしゅく)  』

と呼びます。

この歯肉退縮が起こると、隠れていた歯根部が表面に見えてきて相対的に歯が長くなったような外観になります。

歯肉退縮により歯根面が露出すると、冷たい刺激や歯ブラシの擦過刺激により知覚過敏を起こしやすくなってしまいます。

海外の文献では、歯周病の患者さまの60~98%に知覚過敏が認められる、という報告があります。

歯肉退縮が著しくなるにしたがって、知覚過敏の歯の割合も徐々に増加する傾向もあるようです。

次に知覚過敏症の対処法としては、予防としてプラーク(歯垢)をしっかり除去することが原則です。

冷水などの外部からの刺激は、象牙質表面に露出した象牙細管というわずかな空間を経由して歯髄内の知覚繊維に伝達されます。

そこでプラーク(歯垢)が歯根面に付着すると酸性度が高くなり、歯の表層が溶解され象牙細管が広くなった結果刺激が伝わりやすくなるので、プラークの存在が知覚過敏を助長するのです。

ただプラークを除去するために力まかせに歯磨きするのもよくありません。

過度のブラッシングは歯根部をすり減らしてしまい、結果として象牙細管を広げますので知覚過敏が起こりやすくなります。

したがって日々の歯磨きでは、歯面をすり減らさないように

                適度の力

で上手にプラーク除去することが大切になります。

また市販されている知覚過敏用の歯磨き剤の使用も有効です。

これらの歯磨き剤には、象牙細管を目詰まりさせる成分や知覚繊維の痛みの閾値(いきち・・・痛みとして感じる最初の限界)を挙げる成分が含まれていて一定の効果があることも証明されています。

それでも知覚過敏の症状が改善されない場合は、一度かかりつけ歯科で相談された方がいいと思います。  ^^



( 今回の記事は 

           『 月刊  糖尿病ライフ  さかん  2月号  』  

を参考に記載しています。 )

たかが?されど?口内炎!

種類さまざまな 『 口内炎 』 。

おそらく、普通はポツッと白いものができて痛い
「 アフタ 」 とよばれるものを思い浮かべると思います。

これが、多くの方が経験する口内炎で、 『 口内炎 』 という言葉はこの代名詞のように使われることが多いです。

もともと 『 口内炎 』 とは、口の粘膜に起きる炎症の症状をかなり大雑把にひとくくりにして表現している俗称なのです。

なので、本来はアフタ以外にも

・ カンジダ

・ ウイルス感染による水泡

・ 誤って噛んでできたキズの炎症

・ 全身疾患の症状が口の中にできたもの

・ ガンに変化する前の病変

など数多くの粘膜トラベルが含まれます。

「またできた?なかなか治らない?たかが口内炎、されど口内炎!」

口内炎、じつは種類はさまざま!

 「口内炎」という言葉を聞いて、みなさんはどんな病変を浮かべますか?おそらく、ポツッと白いものができて痛い「アフタ」を思い浮かべるのではないでしょうか。「アフタ」は多くのかたが経験する口内炎で、そのため「口内炎」という言葉は、「アフタ」の代名詞のように使われることも多いですね。

 もともと「口内炎」とは、口の粘膜に起きる炎症の症状を、かなり大雑把にひとくくりにして表現する、とても便利な俗称なんです。「口内炎」と一般的に呼ばれる症状のなかには、アフタのほか、カンジダ、ウイルス感染によってできる水疱、誤って噛んでできたキズの炎症、それから全身疾患の症状がお口の中に出たもの、がんに変化する前の病変など、数多くの粘膜のトラブルが含まれます。

 

なぜ見た目が似るの?

 ふだんあまり意識してはいませんが、私たちのお口の中には、ばい菌がいっぱいいます。楊枝の先にチョコっとついた程度のプラークのなかに、数億もの細菌がいるというのですから、トータルすれば相当の数になります。まして、お掃除をていねいにしていないお口の中には、たいへんな数のばい菌がいるはずです。

 そのためお口の粘膜にできたキズ、水疱、前がん病変も、それ自体には炎症がなくても、二次的に感染を起こしやすいのです。お口に入ってきた硬い食べ物は粘膜をこすります。水疱はあっという間につぶれ、破れます。すると最終的にはどの病変も同じような炎症によって、同じような顔に見え、十把ひとからげに「

口内炎」と認識されやすい、というわけです。

 

粘膜チェックでお口もからだも健康に!

 みなさんのお口の中にできた炎症は、ほとんどの場合、放っておいても平気なアフタやキズでしょう。ただ、さまざまな患者さんを診察している私たちは、「もっと早くに受診してくれていたらなあ」という深刻な場面にも少なからず出会うのです。

 そこで口内炎ができたとき「これは大丈夫だな」とか、「何かヘンだぞ」と念のため疑ってみるポイントを覚えておいてください。粘膜の細胞は約2週間で入れ替わります。それを過ぎてもなかなか改善してこないというときには「なにかヘンかな?」と念のため疑ってみてください。

 粘膜の健康は、からだの健康にとって大切なバロメーター。お口の粘膜の健康にも日ごろから目を向けて、お口とからだの健康を維持していきましょう。

引用参考文献:nico 2013年9月号

ドライマウスって???

最近ちらほら聞くようになってきた

               ドライマウス

ってご存知ですか?

自覚症状のない方も含めると全国で1000万人近くの方がかかっているのでは?とも言われています。

口臭って???

お口の臭いって気になりますが、自分ではなかなか気付かないうちに相手に嫌な思いをさせていたりしてもなかなか相手も指摘してくれません。

ニンニク料理などの食べ物によるにおいは一時的なものですが、お口の中の疾患(むし歯や歯周病など)が原因の場合は、治療しない限りはなくなりません!

「がん治療を受けるなら。歯科の口腔ケアがお役に立ちます!」

 

がんと歯科って関係あるの?

 じつはがんの治療中は、口にさまざまなトラブルが起きやすくなります。アメリカの国立がん研究所のホームページにも載っている有名なデータによると、たとえば抗がん剤治療を受ける人の40%に口内炎などが起こります。さらに強い抗がん剤を使う骨髄移植や白血病の治療では80%の口にトラブルが起きます。口の周りに放射線治療を行う場合は、じつに100%の割合で口内炎などのトラブルが起きます。

 以前は、こうした副作用は、仕方のないこととされてきました。ところが治療が進歩し、手術も攻めの手術になり、昔なら切り取れなかったものも10数時間という長い時間をかけて切除するようになりました。また、抗がん剤が強くなるにつれて、口内炎などの副作用も以前よりつらいものになってきました。

 

医科と歯科が連携してサポート!

 こうした状況下で、静岡県立がんセンターの大田洋二郎先生らが取り組んでいた歯科の支持療法の成果が注目を集め、多くのがん治療の専門病院が「歯科の支持療法を取り入れたい」と模索するようになりました。

 そこで日本歯科医師会では、国立がん研究センターの大多数の患者さんの居住圏である東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県、山梨県の歯科医師会に協力してもらい、関東圏に連携モデルを構築することにしました。質の高い支持療法を実現できるよう、連携のための講習カリキュラムを作り、会員を呼びかけて、手を挙げた歯科医師に講習会を受けてもらうのです。

 こうして数年間で関東5都県だけで2、600人の歯科医師が講習1・2の受講を終え(2013年6月時点)、現在ではがんセンターの患者さんが、お住いの近くの登録歯科医院を名簿から選び、安心して受診できる体制が整っています。

 また、関東圏で構築されたモデル連携事業のノウハウは、全国の都道府県歯科医師会に伝達され、国が後押しをする形で各地域のがん医療連携拠点病院などとの連携をはじめています。

 

がんとの闘いを有利に進めよう!

 現在は、副作用の苦しみをゼロにはできないまでも、「やれることはなんでもやろう」「しんどい期間を少しでも短くしよう」という観点から、合併症の原因となる口のなかの細菌を減らすため、がん治療をはじめる前に歯科で口腔ケアを受けることが必須となっているのです。「がん治療を受けることになったらまず〈歯科〉へ」。このことを忘れないでください。

引用参考文献:nico 2013年5月号

「そのいびき、歯科で治るかも!」

いのちにかかわる眠りの病気

 「睡眠時無呼吸症候群」という病気をご存じですか?運転士が居眠りをして新幹線の停止位置を間違えた事故でこの病気が大きく取り上げられて以来、日本でも広く知られるようになりました。

 この睡眠時無呼吸症候群は、「いびきをかいて寝ている」と思って聞いていると、突然のどが詰まったような「クッ」あるいは「カッ」という音がして、そのあと「……」と10秒以上呼吸が止まります。その後、息苦しそうな大きないびきが再開するという、気道の閉塞が原因の深刻な病気です。

 呼吸が苦しく、眠りが浅くなるため、からだは休息を必要としているにもかかわらず、いくら寝ても休息になりません。放っておくと、いのちを縮めてしまうこともある、怖い病気なのです。

 

いびきはからだの悲鳴!

 もうひとつ、気をつけていただきたいのが「いびき」による不眠症です。いびきは、寝息に近いようなあまり問題のないものもあり、ほとんどは単なる騒音として片付けられがちです。ところがいびきの原因の正体も、程度の差こそあれ、睡眠時無呼吸症候群と同じ気道の閉塞なのです。

 「いびきをかいて寝ている」というと、グッスリと眠っているイメージがあり放置しがちですが、現実はその逆。いびきは、眠りの邪魔をするやっかいものです。

 

なぜ歯科でいびきの治療を?

 こうした不眠症は、眠れないからといって、いくら眠り薬などを処方してもらっても改善はしません。原因の根本は気道の閉塞、つまり気道が物理的に塞がれてしまうことが問題だからです。

 横になったとき、ダラリと気道のほうへ下がってしまう舌や軟口蓋がトラブルのおおもとなら、それをなんとかしないかぎり、改善は望めません。口のなかの治療、といえば、歯科治療の領域内ですよね。というわけで、いびきが引き起こす不眠症の治療は、歯科で受けることができます。ただし、現在の健康保険制度の規定では、治療を保険診療で受けるための「診断」は、医科で受けなければなりません。

 そのため、まずは耳鼻咽喉科や呼吸器内科、睡眠センターなどに受診して保険適応を診断してもらったうえで、具体的な治療は歯科・口腔外科や専門知識のある歯科医師が行うことになります。「もしかしたら」と思うかたは、お早めに専門の医療機関に受診なさることをおすすめします。

引用参考文献:nico 2013年7月号

「歯と治療をこわすクセ!上下の歯、いつもさわってない?」

歯って離れているべき?!

 私は、顎関節症の専門医として、多くの患者さんを診てきました。その臨床のなかで、じつは気づいたことがあります。それは、「上下の歯は、さわっているのが当たり前だ」と思っている患者さんが意外に多い、ということです。

 私たち歯科医師は学生のときに、「なにもしていないとき、くちびるを閉じていても上下の歯の間には安静空隙があり、離れている」と教えられます。ですから、離れているのが健全な状態だと歯科医師ならだれもが知っています。

 

歯を接触させてませんか?

 ところが、顎関節症の悩みを抱えて来院する患者さんと話していると、上下の歯はつねにさわっているものだ、と思い込んでいる方が非常に多いのです。

 そこで調査してみると、顎関節症の外来を受診する患者さんのおよそ半数に上下の歯を接触させるクセがありました。

 じつは以前私は、「日中に食いしばっていませんか?」「噛みしめていませんか?」と患者さんに問診していました。するとたいがいの患者さんから「していません」という答えが返ってきます。しかし、その患者さんの口もとを見ると、筋肉が緊張しピクピクと動いているではありませんか。「あれっ?」と思い、「上下の歯が今さわっていませんか?」と質問すると、患者さんは「ええ、さわっています」といいます。なかには、「歯っていつもさわっているものじゃないんですか?」と驚く方もおられました。

 質問のしかたを変えてわかったことは、多くの方に、ふだん上下の歯を接触させるクセがあるということでした。

 

悪いクセが、さまざまな症状の原因に!

 この「発見」は、私の専門分野である顎関節症や噛み合わせの違和感の治療に大きく貢献しました。このような症状で悩む患者さんの多くに歯を接触させるクセがあり、このクセをなくせば症状の改善にとても効果があるとわかったからです。

 しかし、上下の歯を接触させるクセの弊害はこれだけではありません。というのも、上下の歯が瞬間的に接触する時間は、本来1日わずか20分以下。いくら軽い力でも、歯を接触させるクセのある方は、歯や歯の周りの組織に本来の働きをはるかに超える過酷な長時間労働を強いているのです。

 余分な力は、エナメル質を傷め、歯槽骨を減らすなど、むし歯や歯周病の原因にもなります。たとえごく軽い力であっても、疲労の習慣的な積み重ねの影響はとても大きいのです。

引用参考文献:nico 2013年2月号