「インプラントを可能にする 骨造成術を知りたい!」

歯槽骨が足りない?!

 インプラント治療を希望なさっているのに、「歯槽骨の骨量が足りない」という患者さんはじつにめずらしくありません。

というのも、歯を失うに至る過程で、歯槽骨にすでになんらかのダメージを受けているかたがほとんどだからです。

なかでも多いのは、歯周病や歯根部に生じた病巣のために歯槽骨を失っているケースです。

病気が軽度の頃に治療をしておけばこんなことにならなかったでしょうが、

痛まないからと限界まで放置してしまうと、炎症のために歯槽骨が広範囲に溶け

てしまう場合があります。

また、歯槽骨は強い噛む力でも溶ける場合があり、外傷のために歯槽骨を失ってしまうこともあります。

 もうひとつの理由としては、もともと歯槽骨が少ない部位があることが上げられます。

たとえば上あごの奥歯のすぐ上方には、上顎洞という空洞があります。

上顎洞の大きさには個人差があり、大きく発達しているかたでは、抜歯後の歯槽骨の高さがほんの数ミリしかないことがあります。

奥歯は力のかかる場所ですから、本来ならば長いフィクスチャーを埋めたいところですが、数ミリの骨ではとても足りません。

 また、上あご、下あごともに、前歯のところは歯槽骨が幅が薄いため、歯を失うとますます骨幅が薄くなります。歯槽骨が薄すぎるとフィクスチャーが骨から露出し、インプラント治療が不可能になります。

 ただ、歯槽骨が足りないためにインプラント治療ができないとなると、残される道は入れ歯かブリッジになります。

入れ歯は装着した際の違和感が気になったり、入れ歯に対する抵抗感のあるかたもいるでしょう。

ブリッジは、失った歯が多いときには適用できない場合もあります。

 

インプラントを実現する最後の手段!

「インプラントにしたいのに歯槽骨が足りないと診断された」という患者さんのために、現在はご自身の骨や人工骨を用いて歯槽骨を増やす手術が行われています。

生きた骨を増やすのですから、治療には相応の時間がかかり、効果にも個人差があります。

しかし、歯槽骨が増えてはじめてフィクスチャーの骨結合が可能になるわけですから、骨造成術はインプラント治療を可能にする画期的な手術なのです。

 患者さんご自身の生体反応を利用して歯槽骨を増やすというデリケートな治療だけに、「先生におまかせ」というのでは治療はうまくいきません。

インプラント治療を成功させるためには、患者さんご自身も治療内容を理解し、歯科医師とともに骨造成術にじっくりと取り組んでいきましょう。

引用参考文献:nico 2011年7月号