いのちにかかわる眠りの病気
「睡眠時無呼吸症候群」という病気をご存じですか?運転士が居眠りをして新幹線の停止位置を間違えた事故でこの病気が大きく取り上げられて以来、日本でも広く知られるようになりました。
この睡眠時無呼吸症候群は、「いびきをかいて寝ている」と思って聞いていると、突然のどが詰まったような「クッ」あるいは「カッ」という音がして、そのあと「……」と10秒以上呼吸が止まります。その後、息苦しそうな大きないびきが再開するという、気道の閉塞が原因の深刻な病気です。
呼吸が苦しく、眠りが浅くなるため、からだは休息を必要としているにもかかわらず、いくら寝ても休息になりません。放っておくと、いのちを縮めてしまうこともある、怖い病気なのです。
いびきはからだの悲鳴!
もうひとつ、気をつけていただきたいのが「いびき」による不眠症です。いびきは、寝息に近いようなあまり問題のないものもあり、ほとんどは単なる騒音として片付けられがちです。ところがいびきの原因の正体も、程度の差こそあれ、睡眠時無呼吸症候群と同じ気道の閉塞なのです。
「いびきをかいて寝ている」というと、グッスリと眠っているイメージがあり放置しがちですが、現実はその逆。いびきは、眠りの邪魔をするやっかいものです。
なぜ歯科でいびきの治療を?
こうした不眠症は、眠れないからといって、いくら眠り薬などを処方してもらっても改善はしません。原因の根本は気道の閉塞、つまり気道が物理的に塞がれてしまうことが問題だからです。
横になったとき、ダラリと気道のほうへ下がってしまう舌や軟口蓋がトラブルのおおもとなら、それをなんとかしないかぎり、改善は望めません。口のなかの治療、といえば、歯科治療の領域内ですよね。というわけで、いびきが引き起こす不眠症の治療は、歯科で受けることができます。ただし、現在の健康保険制度の規定では、治療を保険診療で受けるための「診断」は、医科で受けなければなりません。
そのため、まずは耳鼻咽喉科や呼吸器内科、睡眠センターなどに受診して保険適応を診断してもらったうえで、具体的な治療は歯科・口腔外科や専門知識のある歯科医師が行うことになります。「もしかしたら」と思うかたは、お早めに専門の医療機関に受診なさることをおすすめします。
引用参考文献:nico 2013年7月号