このコラムをお読みの皆さんには、こんな習慣はないでしょうか?
・運動のおともにスポーツドリンク。
・健康のために柑橘類や黒酢を毎日摂取。
・酎ハイ、梅酒、ワインを毎晩チビチビ。
・仕事中がつねに手元にコーラ飲料。
これらは、じつは歯
が溶ける「酸蝕症」のリスクが高い習慣なんです。
4人に1人が酸蝕症です
酸蝕症とは、歯に酸性の飲食物や胃酸が「繰り返し触れる」ことで起きる病気です。
歯はもともと、酸がとても苦手。酸に触れると化学反応を起こして溶けてしまうからです。とはいえ、食べ物のほとんどは酸性。みそもしょうゆも穏やかな酸性です。なのに歯が溶けてなくなってしまわないのは、唾液が酸を洗い流し中和して、歯を守ってくれているから。
ただし、唾液の能力にも限界があります。すっぱい飲み物や食べ物などに含まれる強い酸が口の中に繰り返し入ってきたり、逆流性食道炎により胃酸が口の中にたびたび逆流していると、唾液の作用が追いつかず、歯が溶けてしまうのです。
これを聞いて、「自分には関係ないや」と思うのは大間違い。国内の調査では、軽度のものを入れると26.1%、つまり4人に1人がの方に酸蝕症がみられるんです。
酸蝕症は現代病。それはなぜ?
酸蝕症は、現代の食生活や生活習とかかわりの深い病気です。ここ数十年で、歯を取り巻く酸の環境は様変わりしました。季節ものだった柑橘類が一年中手に入るようになり、お酒も果汁たっぷりの酎ハイやワインが大人気。一方おやつはコーラ飲料や柑橘ジュースがどこでも手に入ります。
また、もう1つ注目すべきは、健康意識の高い方の酸蝕症です。酢や柑橘類などのすっぱいものを積極的に摂る健康法は、習慣的に続けてこそいい結果が出ます。酸蝕症は歯が酸に繰り返し過剰に触れることで起きるので、「健康意識が高いまじめなかたほど酸蝕症になりやすい」という皮肉な現実があるのです。
こうした健康法をどうしても続ける必要があるのなら、カプセル入りの酢に代えたり、歯になるべく触れないようストローで飲んだり、飲んだ後に水をひと口飲むなど、歯をいたわる工夫が必要となります。
酸蝕症を防ぐには、現代人が陥りがちな「酸性飲食物の過剰摂取」にまず気づいて止めることが重要。過ぎたるは及ばざるがごとし。酸の摂取は唾液が守ってくれる程度に抑えて、からだだけでなく、歯の健康にも気を配っていきましょう。
引用参考文献:nico 2018年2月号