「歯医者さんと一緒に治す!顎関節症」

 

 顎関節症は、症状により重症度も違えば、患者さんにしてもらいたいことや歯科医院で行う治療も異なります。

「音がする」タイプ

 口を開けたときに「音がする」というのは顎関節症の典型的な症状。ですが、いちばん軽度なので、過度に心配される必要はありません。また、特に治療の必要はありません(治療の必要がないかは、歯科で診てもらうのが安心です。自己判断は危険です)。

 ただし、「痛みがある」「口が開かない」といった症状が出はじめたら重症化しています。こうした症状が出てきたら、できるだけ早く歯科を受診してください。

 重症化させないためには、生活習慣の改善を心がけましょう。長時間のスマホや TCH(歯列接触癖)など、「顎関節症に影響する習慣」はありませんか?

「痛みがある」タイプ

 「口を開けたり噛みしめると痛みがある」、または「今まで音がするだけだったのが、痛むようになった」場合は、できるだけ早く歯科を受診してください。

 歯科では、痛みの原因が顎関節の内部にあるのか、顎関節を覆う筋肉にあるのかを判断してから指導や治療を行います。

 どちらが原因にしろ、まず患者さんにしていただくことは1つ。それは、「痛みが出るような顎の動きはしない」「痛いなら口を開けない」。筋肉を傷めたら安静にしますよね。それと同じです。

 安静にしていても痛みが引かなければ、鎮痛剤を処方したり、顎の負担を減らすマウスピースを作ったりします。

「口が開かない」タイプ

 「大きく口を開けられない」、または「今まで音がするだけだったのが、口が開かなくなった」場合は、できるだけ早く歯科を受診してください。

 このタイプでは、ほぼ顎関節の内部に問題が起きています。顎関節では、上顎骨と下顎骨の間に「関節円板」という平たい組織があります。この組織がクッションのようにはたらくおかげで、私たちはスムーズに顎の開閉ができます。しかしこれが何かの拍子にズレて顎の動きを阻害するようになると、口が開かなくなります。

 歯科では、ズレた関節円板による動きの阻害を解消する治療(マニピュレーション) を行います。マニピュレーションが難しかったり、その後も開けにくさが残ったりする場合は、開口訓練を行います。

 顎関節症は患者さん自身が治していく側面もあるとはいえ、歯医者さんと相談して治療を進めていくのが安心ですよ。

 

引用参考文献:nico2023年10月

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「被せ物が欠けた、外れた、壊れた?それもしかして歯ぎしりのせいかも」

 詰め物や被せ物がよく壊れる、歯が割れたり欠けたりしやすいとお悩みの方。そのトラブル、もしかしたら歯ぎしりや歯の接触癖(TCH)が原因かもしれません。

過剰な力が歯や被せ物を壊します

 歯を傷める過剰な力には、大きく分けて 2種類あります。ひとつは「歯ぎしり」。眠っているとき無意識に行う歯ぎしりは、起きているときと違い力の加減がきかず、たいへん強い力が歯にかかります。

 もうひとつは、TCHとよばれる「上下の歯を無意識に接触させる癖」。上下の歯は、食事をしたり重いものを持つときに一時的に噛む以外は、本来は離れているものです。 しかし、患者さんのなかには歯を接触させる癖のある方がいて、ごく弱い力が長時間加わることで、顎関節症になったり、歯や入れ歯を傷めてしまうことがあります。

歯根が割れたり、あごの骨が減ることも

 歯ぎしりが引き起こす歯への害の中でも、患者さんにとってもっともつらいもの が「歯根破折」です。

 歯根破折とは、噛む力に耐えきれなくなった歯根が縦に裂けるように割れることで、いわば歯の「疲労骨折」です。細菌だらけの口の中で、割れて汚染された歯を再利用することはたいへん困難で、ほとんどの場合、抜歯になります。

 歯根破折を起こすリスクがもっとも高いのは、神経を取って治療してある歯。歯に栄養を送っていた神経が失われたせいで、枯木のようにパキッと割れやすくなってしまうのです。

 また、歯周病の炎症によって、歯を支える骨(歯槽骨)が減っているときに強い力が加わると、骨の破壊がさらに進んで歯周病の悪化が加速します。

被害を減らすための歯科の対策とは?

 歯ぎしりから歯と被せ物を守る方法としてもっとも有効なのが、夜間のマウスピースの装着です。

 マウスピースをして眠ると、約9割の方は歯ぎしりがいったん止みます。3週間ほどして装着に慣れるとまた始まりますが、マウスピースが歯にかかる力を分散し、代わりに削れてくれます。保険で作れて、削れても補修ができますので、ぜひ毎晩使ってください。

 これから被せ物の治療を受ける方におすすめなのが、耐久性のある材料や治療法を選ぶことです。セラミックの歯なら、硬度の高いジルコニアを。神経を取った歯なら、歯根破折のリスクを低減できる接着性レジンとファイバーポストを使った治療がおすすめです。ただしその場合も、マウスピースの使用は続けていきましょう。

 

引用参考文献:nico2022年1月

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詰め物が取れた、被せ物が割れた?歯の天敵?歯ぎしりにご用心!

 「詰め物がよく取れる」「朝起きるとあごが痛い・だるい」「歯がすり減っていたり、欠けたり割れたりするといった経験はないでしょうか。それはもしかすると、“睡眠中の歯ぎしり”が原因かもしれません。

 

「良い歯ぎしり」と「悪い歯ぎしり」

 じつは歯ぎしり自体は、日中に受けたストレスを睡眠中に発散して脳とからだの健康を保つための無意識の行動で、本来は悪い癖などではありません。

 しかし、噛み合わせがよくない方のばあ、睡眠中の歯ぎしりが、強い力で歯を削ったり揺さぶったりする「悪い歯ぎしり」となってしまうことがあります。

 上の歯と下の歯がうまく噛み合っている良い噛み合わせの方は、歯ぎしりをしても上下の犬歯が力を受け止めてくれます。歯ぎしりの力を、長くて丈夫な歯根をもつ犬歯が引き受けてくれるので、ほかの歯にはほとんど負担がかからずにすみます。

 一方、犬歯がガチッと噛み合わない、奥歯ばかりで歯ぎしりするようなお口の場合、奥歯に直接、強い力がかかります。あごの動きにもストップがかからないので、下あごのがグラインドしやすく、広範囲に歯が削れていってしまいます。

 歯ぎしりをする方は、平均8時間の睡眠中に約40分間も強い力で噛む(通常は約15分)そうです。もしこれが悪い歯ぎしりだった場合、歯をいかに傷めてしまうか容易に想像できるのではないでしょうか。

 

悪い歯ぎしりから歯を守るには?

 歯ぎしりによる被害を防ぐもっともポピュラーな歯科治療は、マウスピースを使う方法です。就寝中にマウスピースを装着し、力のかかり方を修正して歯やあごを守ります。また、良い噛み合わせをつくる矯正治療は、悪い歯ぎしりを良い歯ぎしりへと変える根本的な改善策です。

 こうした治療と同時に重要なのが、就寝前のイメージトレーニング。「歯ぎしりをしないぞ」と繰り返し唱え自分を暗示にかけます。簡単なわりに効果があり、歯ぎしりが4割減るともいわれています。

 くわえて、生活習慣や癖の改善も大切。歯ぎしりは眠りの浅いときに起きやすいので、寝床でスマホを操作しない、ぬるめの風呂にゆったり入るなど、快眠できる生活習慣を整えるほか、日中に噛みしめていることを自覚したら、スッと力を抜いて歯が接触しないようにしましょう。

 

 むし歯や歯周病で歯が弱っているところに悪い歯ぎしりが加わると、被害がより甚大に。悪い歯ぎしりにぜひご用心を!

引用参考文献:nico 2019年1月号

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「就寝中に使うって、どんなの?知りたい!マウスピース」

自覚のないブラキシズムにご用心!

 「治療した歯がよく壊れる」と悩んで来院した患者さんのお口の中に、ブラキシズムの明らかな痕跡を見つけて「歯ぎしりしていませんか?」と尋ねると、「してませんけど」と答える方は、じつはめずらしくありません。

 ブラキシズムには日中する

 

ものと睡眠中にするものがありますが、歯やあごの健康への悪影響が問題になりやすいのは、睡眠中の歯ぎしり・食いしばりです。睡眠中の無意識で行われる歯ぎしり・食いしばりは、そのたびに自分で気づいて止めるということができません。しかも日中の歯ぎしり・食いしばりに比べると、睡眠中は歯やあごを守ろうとする防御機構が働きにくく、自分の歯を自分で痛めてしまうほどの強い力が加わります。

 また、歯周炎で炎症が起き歯槽骨が減っている方の場合は、歯ぎしり・食いしばりの力が毎晩のようにかかっていると、力のために歯を支えている歯槽骨が圧迫されて失われやすく、歯周炎の病状が悪化しやすかったり、治療しても治りにくいなどの問題が起きやすくなります。

そもそも原因はなんなの?

 歯ぎしり・食いしばりの原因として、現在最も有力視されているのがストレスです。それならば、原因であるストレスを減らすのがもっとも効果的な対処法のはず。しかし生活をガラリと変えてしまうわけにはなかなかいきません。それに、ストレスのほかに睡眠の質や服用中の薬の影響、飲酒、喫煙なども関わっているとされていますし、こうした原因だけではうまく説明がつかない領域も、いまだ残されています。

引用参考文献:nico 2015年8月号

ナイトガード使用時の注意点

患者さまが言っているマウスピースというものの中にも、実はいろいろなものがあります。

今回は、その中の 『 ナイトガード 』 について書きます。

このナイトガードだけでも目的には個人差があり、

・ 歯のすり減り防止

・ 前歯の差し歯治療後の保護

・ 顎の関節の疼痛緩和

・ 顎の筋肉の緊張緩和

・ 開口障害の治療

などがあります。

歯ぎしりから救う!

患者さまの中には、歯のケアに熱心でも

          歯が欠けたり、折れたり、被せ物が壊れたり

などのトラブルを繰り返す方がいらっしゃいます。

そういう方は奥歯を失って、ブリッジやインプラントを入れてからも何度も壊れて作り替えたなど、治療の連鎖に悩んでいます。

そういうときに一番に疑われるのが

               『  ブラキシズム  』

です。

このブラキシズムによって歯や歯の周囲組織、あごの骨などにその耐久性を越える力が繰り返しかかることで、さらにトラブルは拡大していきます。

過剰な力が原因となれば、大切なのはその力を減らすことで、そのために欠かせないのが、患者さまの気付きです。

まずは普段の行動を認識することが、改善への第一歩になります。

食生活の見直し、クセの改善、睡眠時のブラキシズムは?etc.。。。あらゆる角度から力の影響を洗い出し、リスクを1つずつ減らしていく必要があります。

睡眠時のブラキシズムは、さまざまな要因が複雑にからまり合って起きるため、じつは残念なことにその発生原因はいまだに解明されていません。

一方、睡眠中のどんな時にブラキシズムが起きるか?というのは明らかになっていて、実は眠りが浅くなるときに起きるのです。

眠りには周期があり、浅いノンレム睡眠に続いて深いノンレム睡眠が現れ、その後睡眠がぐっと浅くなりレム睡眠に移行していきます。

浅いノンレム睡眠の間は、一過性の覚醒が頻繁に発生しますが、ブラキシズムはこの一過性の覚醒とともに集中して起こります。

たとえば、いびきをすると息が苦しくなるために、たびたび眠りが浅くなります。

すると眠りのサイクルが乱れ、ブラキシズムの発現も頻繁になります。

健やかな眠りは、心身の健康にとって大切であることはもちろんですが、ブラキシズムの改善にとっても大変重要なのです。

睡眠時ブラキシズムの被害を食い止めるためもっとも重要なのは、患者やさまの気付きです。

患者さまが睡眠時ブラキシズムを認識し、納得して下さることが、スプリントを使用して確実に被害を減らす第一歩です。

むし歯や歯周病の感染対策に加え、今後は力がもたらす問題にも目を向けていただくと、今抱えているトラブルを解決する新たな突破口が見つかるかもしれません ^^

「歯ぎしりから歯&治療を救いたい!」

治療の連鎖、ブラキシズムが原因かも!

 患者さんのなかには、歯のケアに熱心なのに、歯が欠ける、折れる、被せ物が壊れるなどのトラブルを繰り返すかたがいます。私の勤務する病院にも、そんな患者さんが来院します。お聞きすると、奥歯を失い、ブリッジやインプラントを入れてからも何度も壊れて作り替えたなど、治療の連鎖に悩んでおられるのです。

 そんなとき疑われるのが「ブラキシズム」です。ブラキシズムによって歯や歯の周りの組織、あごの骨などにその耐久性を越える力が繰り返しかかることでトラブルは拡大していきます。

 過剰な力が原因となれば、大切なのはその力を減らすこと。そのため欠かせないのが、患者さんの気づきです。普段の行動を認識することが改善への第一歩になります。食生活の見直し、クセの改善、睡眠時のブラキシズムは?etc.……あらゆる角度から力の影響を洗い出し、リスクをひとつずつ減らしていく必要があります。

 

眠りのサイクルとの関係って?

 睡眠中のブラキシズムはさまざまな要因が複雑にからまり合って起きるため、じつは残念なことに、その発生原因はいまだに解明されていません。

 一方、睡眠中のどんなときにブラキシズムが起きるかは明らかになっています。じつは眠りが浅くなるときに起きるのです。

 眠りには周期があり、浅いノンレム睡眠に引き続いて深いノンレム睡眠が現れ、その後、睡眠がぐっと浅くなりレム睡眠に移行します。浅いノンレム睡眠のあいだは、一過性の覚醒が頻繁に発生しますが、ブラキシズムはこの一過性の覚醒とともに集中して起こります。

 たとえば、いびきをすると息が苦しくなるために、たびたび眠りが浅くなります。すると眠りのサイクルが乱れ、ブラキシズムの発現も頻繁になります。健やかな眠りは、心身の健康にとって大切であることはもちろんですが、ブラキシズムの改善にとってもたいへん重要なのです。

 

小さな気づき、見逃さずに相談を!

 睡眠時ブラキシズムの被害を食い止めるためもっとも重要なのは患者さんの気づきです。患者さんが睡眠時ブラキシズムを認識し、納得してくださることが、スプリントを使って確実に被害を減らす第一歩です。

 むし歯や歯周病の感染対策に加え、今後は力がもたらす問題にも目を向けていただくと、あなたが抱えるトラブルを解決する新たな突破口が見つかるかもしれません。ぜひ試してみてください。

引用参考文献:nico 2014年3月