患者さんもご家族も快適、幸せ。広がってます!歯科の訪問診療

 「うちのおじいちゃん・おばあちゃんの入れ歯が壊れてしまった」「飲み込みにくくて食べるのに苦労している」「お口が臭う」ーでも、歯医者さんに連れて行くのはとてもたいへん。そうしたお悩みをおもちの方、いらっしゃいませんか。
 どうにかしなきゃと思いつつも、食事や着替え、風呂、トイレなど身体のお世話で忙しく、お口の中まで手が回らないことも多いでしょう。そんなときはぜひ歯科に頼ってください。歯科への通院が困難な方のために、一部の歯科では「訪問診療」を行っているのです。

受けられる治療はほぼ変わりません


 訪問診療でも、歯科医院と同じ種類の治療が受けられます。いちばんニーズが多いのは入れ歯関連のお困りごとで、「入れ歯が割れた」「人工歯が抜けた」「入れ歯が合わなくなって食べられない」といった相談をよく受けます。
 家族や介護士さんの歯みがきではお口をきれいにするのは難しく、プラーク(歯垢)
や歯石が溜まり、そこから歯周病になっている方も多いです。歯周病は万病の元。動脈硬化や心筋梗塞、糖尿病など全身の病気に関連するといわれます。
 訪問診療では歯科衛生士による「専門的口腔ケア」(お口のクリーニング)も受けられます。残っている歯とともに、お口の粘膜や舌、入れ歯を清掃させていただきます。
 介護を受けている方にとって、お口のクリーニングはたんにむし歯や歯周病を予防するだけのものではありません。お口が清潔になると、命を奪いかねない誤嚥性肺炎のリスクの減少にもつながります。口臭も減りますので、患者さんは快適ですし、介護をされるご家族にもうれしいですね。

訪問診療ミニ Q&A


 最後に、訪問診療でよく聞かれる疑問に簡単にお答えしましょう。
Q:訪問診療はどんなふうに進みますか?
A:患者さんの持病、服薬の影響、体調によっては難しい治療もありますので、主治医やケアマネジャーと情報を共有しつつ、無理のない範囲で進めていきます。
Q:保険は使えますか?
A: 訪問診療は保険適用です。医療保険のほか、介護保険を使う場合もあります。
Q:家から遠い歯科にもお願いできますか?
A:保険診療としてお伺いできるのは、訪問診療を行う歯科医院から半径 16km以内と決められています。

引用参考文献:nico2021年8月

付録ダウンロードはこちら

付録ダウンロードはこちら

歯科がおうちにやってくる!訪問診療で快適、在宅ライフ

その気がかり、歯科がお役に立てるかも。

 高齢の方、持病や障害などがある方の場合、ご自分で歯科医院に通うのは難しく、かといって、ご家族の方が医院に毎回付き添われるというのもたいへんです。

 では、我慢してもらうしかないのでしょうか。いえいえ、医科の先生が定期的におうちに来てくださるように、歯科でも在宅の方への「訪問診療」を行なっているところがあるんです。歯科医師や歯科衛生士が定期的に訪れ、入れ歯の調整・修理・製作、口腔ケアなどを行い、その方のお口の健康を継続的に管理していきます。

 お口を清潔に保ち、栄養を摂るためのコンディションを整えることは、ご家族のお力だけでは難しいこともあります。そんなときに、お口のプロフェッショナルである歯科の訪問診療をご利用いただければと思います。

 

口腔ケアはシゲキが肝心。 

 介護を受けられている方にとってとくに怖いのが誤嚥性肺炎。その予防に大切なのが、皆さんもご存知の「口腔ケア」です。

 しかしこの口腔ケア、たんにお口の中をきれいにしているだけでなく、じつはお口の粘膜や舌を刺激する効果もあるんです。

 お口や舌は、刺激を繰り返し受けるうちに神経がつながって、完全とはいえないまでも、衰える前の動きを取り戻せる可能性があります。そうやって、低下した「飲みこむ力」を目覚めさせるというのも、口腔ケアの目的のひとつなのです。

 ですから、ご家族の方のお口をみがいてあげるときは、食べかすやプラークを落とすことだけでなく、歯ぐきや舌、お口の粘膜などに刺激を与えることも意識してあげてください。

 訪問診療では、その際の正しい姿勢やみがき方、手順について、ケアを受けられる方にあったやり方を歯科衛生士がお教えいたします。

 

歯科の訪問診療を利用するには…?

 訪問診療を受ける方にかかりつけの歯科の先生がいらっしゃるようなら、まずはそちらにご相談を。先生が訪問診療をしていなくても、お知り合いの先生を紹介してもらえることがあります。かかりつけの歯科の先生がいない場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センター、地域の歯科医師会などにご相談ください。

 歯科医師や歯科衛生士に定期的にお口の中を診てもらうことは、全身の健康維持にもつながります。大切な人、または将来のあなた自身の“快適在宅ライフ”のために、歯科の訪問治療をお役立てください。

引用参考文献:nico 2016年12月号