「麻酔を味方に!リラックス治療。」

歯医者さん嫌いを何とかしたい!

 「いくつになっても歯医者さんが苦手」という方は意外に多いのではないでしょうか。歯科医院のキーンという音を聞いたり、消毒のにおいを嗅いだりすると、子どもの頃のむし歯の治療を思い出して「つい緊張してしまう」という方、けっこうおられるのではないかと思います。

 一方、私たち歯科医師は長年にわたり、患者さんにできるだけ安全でストレスのない治療をご提供したい、と願い続けてきました。私たちだって、一生懸命にする仕事で患者さんに嫌われたくはありませんし、「歯科医院に行くのがおっくうで、つい行かないでいるうちに悪化した」という気の毒な患者さんを1人でも減らしたいのです。

ノンストレスの治療が大切!

 そのためにもっとも重要なのが、痛くない治療を提供することでしょう。現在歯科医院では注射麻酔のほかに、歯ぐきに麻酔薬を塗布する方法、歯ぐきに向かって噴射する方法など、治療内容によっては複数の麻酔法を組み合わせることで、きめ細やかな痛みへの対応が可能になっています。

 麻酔薬もより安全で、すぐれた効き目のあるものへと進化し、そして注射器や点滴の機器のハイテク化などが、治療中の患者さんのストレスを軽減して、治療中の痛みを完全にシャットアウトするという理想に向かって、確実に成果を上げています。

 もうひとつ重要なのが、患者さんのリラックスです。近年は治療の痛みとともに、患者さんのこころに加わるストレスについても、注目が集まっています。たとえば高血圧や心臓病などの患者さんにとって、緊張によるストレスの軽減は偶発症を防ぎ、からだの健康を維持するためにも重要であると認識されるようになりました。

麻酔は、患者さんの強い味方!

 そうした流れから、ぐっすり眠っている間に治療を終えられる全身麻酔での歯科治療の重要性がクローズアップされ、地域の歯科医院と、歯科麻酔の専門医のいる病院の口腔外科や大学病院などとの連携も急速に進んでいます。

 「麻酔」と聞くと、何となくこわい、と思われるかもしれません。しかし、麻酔は近代の医学が勝ち得た究極の癒し。これ抜きの医学はいまや考えられません。

 歯科の麻酔学も、歯科治療にともなうストレスの軽減に大きな成果を上げて今に至っています。ぜひ、麻酔を「こわいもの」なんて思わず、味方にしてください。そうすることで、治療を受ける気持ちもずいぶんとラクになるはずです。

引用参考文献:nico 2013年3月号