親知らずのお話

皆さんは親知らずって聞いて、どう思われますでしょうか?

やっぱり“抜くのが痛い”っていうイメージが大きいと思います。

昔の場合は、この親知らずも顎がしっかり発達している場合などはもちろん抜く必要もなく、しっかり親知らず同士で噛み合っていて合計32本の歯の数が普通だったのです。

語源としては、平均寿命が50歳代だったころは、この歯が生えてくるころには親元を離れていたり、親が亡くなったりしてから生えてくることが多かったために、この名前が付いたといわれています。

また、親知らずのことを英語ではwisdom tooth(智歯)というのですが、これは物事の分別がつく年頃になってから、はえてくる歯であることに由来します。

ところで、レントゲンなどで“親知らずがあります”というと、必ずと言っていいほど、「親知らずは抜いた方がいいでしょうか?」というご質問をいただきます。

これに付きましては、最近の傾向としては、顎の退化により親知らずの生えてくるスペースがなく、斜めの向きにちょっとだけ頭を出したり、真横にもと(歯胚・・・しはい)があったり、その歯胚自体がなかったりと人によって様々ですので、その処置方法も何パターンかあります。

①、親知らずのもとがない場合
・・・もちろん抜歯の必要もなく、特に心配する必要もないですが、最近では親知らずのもとだけでなく、2番目や5番目の歯のもとがない方も多いですので、レントゲンでの確認をお勧めいたします。(これは、主に矯正などを小学生から始める場合などは大変重要になってきます。)

なぜ、2番目や5番目、8番目(親知らず)のもとがない場合が多いかというのは、歯には切歯(1・2番目)、犬歯(3番目)、小臼歯(4・5番目)、大臼歯(6.7.8番目)という種類があるのですが、その種類の中で最も後方の歯が必要ないと判断され、退化していっているのだと言われています。

②、親知らずのもとはあるが完全に骨の中に埋伏(埋まっている)している場合
・・・特に抜歯の必要はないですが、このまま高齢になる可能性が高く、入れ歯などの製作後に生えてきたりする場合は高齢で抜歯が出来ない時もあります。(骨が吸収されて骨折の可能性がある場合などがある。)

③、親知らずが頭だけ生えてきている場合
・・・この場合が1番むし歯にもなりやすく、また隣の歯もむし歯になりやすかったりします。この場合は残すのと抜歯するのとのメリット・デメリットを天秤にかけて通常は抜歯した方がいい場合が多いです。
また、疲れたり、体の抵抗力が落ちたりした場合は、親知らずの周りの歯と歯茎の境目の歯周ポケットから細菌による感染が起きやすく、頬が外からみても腫れたり、化膿したりします。この際も一回は炎症は落ち着くのですが、いつかははっきり言えませんが、再度同じ症状になる場合が殆どです。
また腫れている時に抜歯を希望されても、その状態での抜歯は炎症が顎の骨まで波及する可能性が高いために(歯は顎の骨に直接埋まっているため)最低2、3日は消毒と抗生剤投与などで炎症消退してからの抜歯になります。
この場合は患者さまが抜歯を希望されない場合は、また腫れる可能性をお伝えして、そこのブラッシングに注意していただいて、何回か腫れる場合は抜歯しましょうとお話します。
患者さまが抜歯を希望される場合は上の親知らずと下の親知らずでの抜歯の違いなどをお話した上で抜歯いたします。

その違いというのは、まず顎骨の構造上の違いにより上は麻酔も通常の麻酔(浸潤麻酔・・・通常1~2時間でその歯の周囲にだけ効く)で効きやすいのに対して下は効きにくい場合は下顎孔伝達麻酔(通常3~4時間くらい効果あり、舌や唇もしびれた感じが残る)+浸潤麻酔を行うということが1つ。

また、上は顔面の骨にくっついているので傷口も治りやすく、通常抜歯しても次の日くらいまでにはほぼ痛みが無くなる場合が多いのに対して、下はしゃべったり、食事をしたりする際に傷口が落ち着きにくいため、治癒しにくく場合によっては1週間前後痛み(違和感)が続くこともあるというのが1つ。

他には、上は特に問題なければ30分以内で抜けますが、下の歯で骨の中に埋まっている程度や向き、隣の歯との位置関係によっては、分割したり、周囲の骨を削ったりする必要があり1時間以上かかる場合もあるというのが1つ。
(ただ上の歯でもむし歯の範囲が大きくてつかむ場所がなく、根っこしか残らなかったりした場合は時間がかかります。)

もちろん、患者さまの希望をお聞きした上で残した場合と抜歯した場合をきちんとお話して、最終的に処置を決めていきます。

親知らずといえども、何年か後に他の奥歯がダメになった場合にインプラント(人工歯根)ではなく、この自分の歯である親知らずを利用できる場合もあるのですから。。。

親知らずについて、少しは参考になったでしょうか???

また、ご質問などあれば、ウェブ上でも受け付けますのでよろしくお願いいたします。