小さいけれど大きな話。ミクロの世界で見る 脱灰と再石灰化

ミクロの世界で歯はどう見える?

 「脱灰」と「再石灰化」という言葉は、歯みがき剤のCMなどで耳にしたことがある人も多いでしょう。

 脱灰は、むし歯菌のつくる酸などにより歯の成分が溶け出してしまうこと。再石灰化は、その溶け出した成分が歯に戻ることをいいますが、歯の内部に実際にどのような変化が起こっているのか、見たことはあるでしょうか。今月は大学の研究室で撮影した電子顕微鏡写真をもとに、そうしたミクロのレベルの歯の変化をお見せします。

脱灰でエナメル質はどう見える?

 ここでは、歯の外側の部分である、エナメル質の脱灰の様子を見てみましょう。(実験で再現した写真です。)

 

 

 ①は、健全な状態のエナメル質です。表面は、光沢がありツルツルしています。この表面にプラーク(細菌のかたまり)が付き成熟すると、細菌のつくり出した酸がエナメル質の内部へと浸透します。すると、②のようにうっすらと表層が溶けていきます。このとき、内部でもエナメル質が溶けています。

 このまま酸と触れる状態が続くと、やがては表面の層がポロっと崩れ落ちます。これが③の脱灰が進行した状態です。魚のウロコのように見えますが、ひとつひとつのウロコは、エナメル質の内部に規則正しく並んでいる「エナメル小柱」の表面です。脱灰で歯が溶けることで、小柱が露出してきてしまうのです。ここからさらに脱灰が進めば、小柱がどんどん崩れていきます。

 

引用参考文献:nico2020年10月

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『食べることが少し苦手なお子さんに。「食べる機能」を養うのんびり食育講座』

 

 子どもの「食べる機能」は、おっぱいに吸いつく力(原始反射)のように生まれつき備わっているわけではありません。毎日の食事のなかで発達し、獲得していく能力なのです。食べることがちょっと苦手なお子さんのお口の成長に役立つ「歯科ならではのアドバイス」をお教えしましょう。

離乳初期(5、6か月~)

 それまでおっぱいを原始反射で飲んでいた赤ちゃんにとって、離乳食の開始はおとなが想像する以上に大きなハードル。反射がまだ少し残っていると、いくらおいしい離乳食をあげても「ベエー」と舌で出します。スプーンでちょんちょんと下唇をつついたとき、舌で押し出したり、口をとがらせてスプーンを入れさせないのは「離乳食はまだ早い」というサイン。お口を開けてくれる時期を待ちましょう。

離乳中期(7、8か月~)

 下あごの前歯2本が生えてくる頃から、上唇と舌の動きが活発になってきます。舌をあごの天井まで持ち上げられるようになり、お豆腐のような少し形のあるものを上手につぶせるようになります。唇が左右にキュッキュッと引っ張られていたら、食べ物を舌で押しつぶしているサインです。

離乳後期(9か月~)

 ついに下あごをモグモグ動かす「噛む」 動きが始まります。ただ、奥歯は生えていないので、本格的なカミカミはまだ先。あまり頑張らせないようにお願いします。

 この時期は「手づかみ食べ」が始まり掃除がたいへん。口に詰め込めるだけ詰め込み、「ゲッ」と出しては適切なひと口量を学びます。のどに詰まらせないようご注意を。

離乳完了期(1歳、1歳半~)

 奥歯が生えはじめ、カミカミがぐっと上手に。「かじり取り」も始まる時期です。 離乳後期に詰め込み過ぎの失敗を重ねたおかげで、適切なひと口量がわかるようになり、「自食」がさまになってきます。

 機能の発達とともに食べる意欲も育ち、「自分で!」という自己主張が始まります。 散らかるので面倒ですが、食べる意欲ものびのびと育てていきたいものです。

  乳歯が生え終わった3歳くらいからは、食べる機能の発達のほか、歯並びや噛み合わせも「食べること」に影響するようになってきます。前歯が噛み合わない(開)、むし歯が多い、舌小帯が短く舌が動きづらい、おロポカンのクセがある(口呼吸)などは、適切な時期に歯科でしっかりと対応してもらうことをお勧めします。

 

引用参考文献:nico2020年9月

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保険と自費はどう違う?部分入れ歯を初めて選ぶあなたに。

部分入れ歯をつくるときって、保険の入れ歯にするか、保険外の自費治療の入れ歯にするか、悩みどころですよね。

 機能の面からいえば、部分入れ歯を固定するための前処置が施され、留め金が適合していれば、保険の入れ歯でも動かない・噛める入れ歯となります。しかし、もっと「快適に噛みたい」「見た目をよくしたい」というときに、保険と自費の違いがグッと出てきます。保険の入れ歯では使用する材料や全体の設計に制限があるのですが、自費の場合は制限がないため、患者さんのお口により緻密にフィットするものがつくれるのです。

保険→自費。使い心地にこだわるなら?

 保険の部分入れ歯の義歯床(歯ぐきを覆う部分)には、主にアクリルレジンという歯科用プラスチックが使われています。プラスチックでは、割れるのを防ぐためにどうしてもある程度の厚みが必要となり、これが違和感のもととなります。

 自費の入れ歯では、義歯床のなかで金属にできる部分が格段に多くなります。金属にすると、入れ歯の強度や耐久性を増しながら「薄く」できます。お口の中のスペースが広がり、舌が快適に動くスペースが確保されるので、使い心地が向上します。

保険→自費。審美性にこだわるなら?

 部分入れ歯の留め金のひとつであるクラスプ(バネ)。歯を表と裏からパチンと挟み込むのですが、保険の入れ歯では、金属なので目立ってしまうのが困りもの。自費の入れ歯の場合、このクラスプの形や材質を変えたり、クラスプを使わない固定法を選べるようになります。

 形や材質を変えるパターンでは、歯の裏側からのみ固定するIバーや、目立たない白いプラスチックであるホワイトクラスプを用います。

 クラスプを使わないパターンでは、磁石や特殊な金具などを利用します。残った歯の根に磁石を埋め込み、それと重なる位置にある入れ歯に磁石をつけて固定したり、残った歯に金属のバーがついた被せ物をかぶせ、そこに入れ歯をはめ込んだりします。こうしたタイプは、比較的目立たず、残った歯への影響を軽減できます。

 なお、保険の入れ歯でも自費の入れ歯でも、快適に使い続けるには、できあがったあとの調整が欠かせません。調整を繰り返すことで、より使い心地の良い入れ歯になるのです。「入れ歯をお口に入れてもらって終わり」ではなく、調整とメインテナンスのために定期受診をお願いいたします。

引用参考文献:nico2020年8月

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新型ウイルスへの防御力、上げましょう!お口からはじめる感染症対策!

新型コロナウイルスという新たな脅威の詳細は、まだ明らかではありません。しかし、インフルエンザウイルスと同じエンベロープ(被膜)をもつウイルス族だけに、感染の仕組みは共通していると考えられます。ですから、新型コロナウイルスから身を守るためにもっとも参考になるのは、インフルエンザの予防法でしょう。そこで、インフルエンザウイルスを例に、ウイルスがどのように私たちの体内に入り込むのかをみていきましょう。

 

ウイルスはどうやって体内に入り込む?

 ウイルスはみな、生きた細胞に入り込まないと生きられず、細胞の中でしか仲間を増やせないパラサイトです。

 ノドなどの粘膜細胞のレセプター(細胞の膜にある受容体/入口)に吸着すると、自分を包む膜と細胞の膜を一体化させてスルリと内部に侵入し、細胞の中に自分の遺伝子を放り込みます。そして乗っ取った細胞のタンパク質やエネルギーを利用して、自分の遺伝子を増殖させていくのです。

 とはいえ、粘膜細胞はそうやすやすと乗っ取られるわけではありません。ふつうは豊富な粘液で覆われているので、ウイルスがレセプターに吸着しようとしても、粘液が邪魔してなかなか吸着できないのです。

 

歯周病菌がウイルスの侵入を手引きする?!

 ただ、この粘膜による防御作用が弱くなってしまうことがあります。それにかかわっているのが、思わぬ伏兵、「歯周病菌」なのです。お口にプラークがたっぷりあり、歯周病菌が跋扈していると、歯周病菌の出す毒素が粘膜の層を溶かして壊します。するとウイルスの標的である粘膜細胞のレセプターが丸見えになり、吸着が容易になってしまう。つまり歯周病菌が、ウイルスがすばやく体内へ侵入できるよう手引きするのです。

 歯周病菌とウイルス感染のかかわりは、これだけではありません。歯周病菌の出す毒素が、ウイルスのもつ「細胞の入口を開ける鍵」をパワーアップさせてしまうこともわかっています。

 お口の中で歯周病菌が増える原因は、お手入れ不足です。歯みがきを怠ってプラーク(細菌のかたまり)が溜まったり、歯周病菌の巣になった歯石を放置していたりすると、歯周病が起きてしまいます。

 感染症から身を守るには、マスクに手洗い、うがい、体調管理と3密を避けること。これに加え、「ふだんからお口の中を清潔にして歯周病を予防すること」とおぼえてください。そのためには、歯科医院への定期受診もお忘れなく!

引用参考文献:nico 2020年7月

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『筋肉痛、ねんざ、クッションのずれ、骨の変形 4タイプでわかる顎関節症』

 

 「あごが痛い」「口が開かない」「口を開くときに音がする」という顎関節症。こうした症状が起こる理由は、顎関節のどこに何が起きているかにより異なります。そしてそれは4タイプに分類できるのです。ご自分の顎関節症がどのタイプかを理解することが、治療と再発予防の早道ですよ。

筋肉痛タイプ

 顎関節症というと「顎関節に異常が起きている」と思いがちですが、顎関節を動かす筋肉の炎症が、あごの痛みと感じられたり、口を開けにくくすることも多いのです。

 頬骨から側頭部のあたりに広がる側頭筋、あごのえらあたりから頬にかけて広がる咬筋。このどちらか、または両方が炎症を起こし張りやこりとなっているのが「筋肉痛タイプ」の顎関節症です。炎症を起こしている筋肉に無理な力がかかると痛みま すし、口も開きにくくなります。

ねんざタイプ

 関節には、骨のほかに軟骨や靭帯、関節包といった組織があります。「ねんざ」というのは、そうした組織に無理な力がかかり、傷めてしまうことをいいます。

 顎関節でも、無理な力がかかって関節内の組織を傷めてしまうことがあります。これが「ねんざタイプ」の顎関節症です。

クッションのずれタイプ

 顎関節の内部(耳の穴の手前の凹みあたり) には、「関節円板」という組織があります。 これは、口を開け閉めしたときに、頭蓋骨とあごの骨が直接当たるのを防ぐ“クッション”の働きをしています。顎関節への異常な負担により、このクッションが前のほうにずれてしまった結果起こるのが、「クッションのずれタイプ」の顎関節症です。

 口を大きく開けたときにポキッと音が鳴る、口を開けようとしても引っかかったようにあごが動かなくなるというのはこのタイプ。口を開けたときに、前のほうにずれていた関節円板が元の位置に戻ろうとして音がしたり、元の位置に戻れずに引っかかって、あごが動かなくなるのです。

骨の変形タイプ

 関節円板が前にずれ、さらに加齢などにより軟骨が薄くなると、顎関節内で頭蓋骨とあごの骨が直接当たるようになり、やがて骨が変形していきます。これが「骨の変形タイプ」です。クッションのずれタイプを放置して悪化すると、骨の変形タイプに移行することが多いです。

 

引用参考文献:nico2020年6月

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『脱・歯ブラシ一刀流!デンタルフロス&歯間ブラシ使いかた講座』

 

歯ブラシではみがけない場所がある!

 歯みがきは1日2回、いや3回以上している方も増えてきました。しかし、どんなにていねいに上手に歯みがきができる方でも、歯ブラシ1本でお口を清潔に保つこ ・とは「不可能」(!)です。歯ブラシだけではほぼ絶対にみがききれない場所があるのです。

 その1つ目は、歯と歯の接する「コンタクトポイント」。2本の歯がぴったりくつついて生えているとき、歯がぶつかっているところです。このすき間には歯ブラシの毛先は物理的に入りません。しかしそれでも細菌は入り込み、プラークを形成し酸を出して、むし歯(う)のもとになります。 ここに溜まったプラークは、デンタルフロス(以下、フロス)でないと取り除けません。

 2つ目は、歯が隣り合ったところの「歯の根元まわり」。上の歯でも下の歯でも、根元まわりには歯ブラシが当たりにくく、溜まったプラークは時間とともに病原性を増し、歯周病の原因となります。特に歯の裏側の根元まわりの場合、表側よりもいっそう歯ブラシが届きにくいです。

 ここに溜まったプラークを取り除くには、フロスや歯間ブラシを根元まわりに沿うように当てて、みがく必要があります。

極意伝授!フロス&歯間ブラシの使いかた

 ではフロスと歯間ブラシの動かしかたのコツをお教えしましょう。フロスの場合、

①フロスの糸を、のこぎりを引くように斜めにスライドさせながら歯と歯のあいだに挿入します。コンタクトポイントの清掃は、単純にフロスをとおせばOKです。

②糸を歯の根元まわりに沿わせます。歯肉の溝に、優しく少しだけ挿入します。

③歯の表面に沿って、根元から先端方向にかき出すようにフロスを動かします。

 一方、歯間ブラシは、

①歯と歯の間にある歯肉(歯簡乳量)を傷つけないように、上の歯なら斜め下方向に、下の歯なら斜め上方向に歯間ブラシを優しく挿入します。

②歯の根元まわりにブラシの毛先が沿うように、歯間ブラシの角度を変えます。

③ワイヤーではなくブラシの毛先を当てるようにしてみがきます。 

 フロスや歯間ブラシは、誤った使いかたをすると、いたずらに歯肉や歯を傷つけてしまいかねません。とりわけ、まじめに熱心にお口のケアをされる方ほど、誤って使い続けてしまったときのダメージは大きいもの。歯科医院で正しい使いかたを教えてもらってから、脱・歯ブラシー流”にまい進していただければと思います。

 

引用参考文献:nico2020年4月

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『ヒリヒリ、ピリピリ、つらいです。原因不明の痛み 舌痛症!』

 

舌痛症ってこんな病気です

 「舌痛症」って聞いたことありますか? 舌に起きる原因不明の慢性的なヒリヒリ、ピリピリ感。それが舌痛症です。

 舌が痛む場合、原因には、舌を噛んだときにできるキズや口内炎にはじまり、カンジダ症やドライマウス、舌がんに至るまでさまざまありますが、それらの可能性をすべて調べても特定の病気が見つからない場合に診断されます。

 中高年の女性の患者さんに圧倒的に多く、痛む場所は通常、舌の先や横っぺた。 つまりちょうど歯に触れるあたりです。

 朝よりも夕方から夜にかけて痛みが強くなる傾向があり、就寝中には痛みはなく、食事中や、何かに集中しているときは悪化せず、痛みがえてしまうこともあります。 そのため食事や睡眠の障になることはまれです。

「心の痛み」が原因のことも

 舌痛症の原因は、現在の研究では残念ながら「不明」とされていますが、脳が「心の痛み(ストレス)」をキャッチしたときに、その情報をうまく処理しきれず「からだが痛い!」という誤った翻訳をしてシグナルを発してしまうことが一因ではないかと考えられています。

 治療法も不明な点が多いものの、少なくとも心身両面からの対応が必要な病気であることが明らかになっています。

 もしかしたら舌痛症は、患者さんの心が「そろそろ少しのんびりしませんか」と発しているシグナルなのかもしれません。

痛みの改善に向けたアドバイス

 「心の痛み」に着目して、舌痛症の痛みを減らすためのヒントをお教えします。専門外来の受診と合わせて、お試しください。

①痛む場所の繰り返しの確認は避けよう

 痛む場所が気になって、舌に変化がないか鏡で見たり、指で触ったり、歯に舌を触れさせるのを繰り返すと、痛みの記憶が定着し、症状が悪化することがあります。

②どんなときに痛みが減るか観察しよう

 舌痛症の痛みは、日や時間帯によって増減します。何をしているときに痛みが増すのか、減るのかを意識してみてください。 痛みを客観的にとらえて、痛みの不安から距離を置くきっかけとなります。

③お薬にくわえ生活の改善をしよう

 お薬は舌痛症の抑制に効果的ですが、服薬をやめると痛みが元どおりになってしまうのでは困ります。そこで、問診とカウンセリングで受けた生活指導を毎日に活かしましょう。食事では刺激物を避け、睡眠時間を確保します。できるところから、日常生活のストレスを減らしていきましょう。

 

引用参考文献:nico2020年3月

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『歯並びのためのお口のトレーニング』

歯並びに舌とくちびるが影響?!

 歯はきれいな馬蹄型に生えるのが当たり前だと思われがちですが、この馬蹄型は、歯と接しているくちびるや舌の筋肉から加わる力の支え合いによって生まれています。なぜなら、歯は力を与えられると、その方向にジワジワと動いていくからです。

 言いかえれば、歯は舌の力とくちびるの力のバランスが釣り合うところへと動き、並んでいます。とくに歯の生え替わり時期のお子さんの場合、

・乳歯が抜けた部分など、気になるところをつねに舌で触っている。

・飲み込むときに舌で歯を押している。

・お口をいつもポカンと開けている。

というように、お口の癖が、歯にかかる舌やくちびるの力のバランスを崩していると、その影響で歯は前へと動き、噛み合わせも崩れていってしまいます。

舌には理想的なポジションがある

 歯に加わる力のバランス、ひいては歯並びを乱す原因となりやすいのが「舌」です。 いまこれを読んでいるあなた、舌の先はお口の中のどこに触れていますか。上あごの天井付近ですか。それとも前歯ですか。

 じつは舌には、収まるべき正しい位置があります。リラックス時に舌が上あごの天井につきつつ、舌先は前歯に触れないか、触れたとしてもほんの軽く触れるくらいの位置が理想です。

 対して、舌が上あごにつかず、低い位置にあり歯にもたれかかっていると、常に歯に力が加わってしまいます。

 また、舌の癖は矯正治療の妨げにもなります。舌からかかる力のせいで、矯正装置を入れても想定したほど歯が動かなかったり、治療が済んで装置を外した後に後戻りを起こしてしまうことがあるのです。

トレーニングで正治療がスムーズに

 こうした癖を改善し、矯正治療をスムーズに進めるために役立つのが「お口のトレーニング」です。舌を上あごの天井に当てる、舌を上に持ち上げる力を鍛える、奥歯を噛みしめて噛む力を強くするなどの練習を、矯正装置の装着と並行して(または単独で)繰り返していただきます。これは専門的には「MFT:口腔筋機能療法」といい、舌をはじめとしたお口まわりの筋肉のバランスを整える効果があります。

 ただし、トレーニングはすぐに効果が出るものではありません。長期間、毎日繰り返していただくことで、徐々に効果が表れてくるものです。慣れるまでは舌が疲れたり痛くなりますし、時間も根気も必要となります。ですが、素敵な歯並びのために大切なことですので、歯医者さんといっしょに根気よくがんばっていきましょう!

 

引用参考文献:nico2020年2月

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被せ物は人口。だけど土台はむし歯になります。意外と知らない?被せ物長持ちナビ!

被せ物を支えるのは患者さんの天然歯

 被せ物の治療が終わり、きれいな人口の歯が入ると、「これでもう歯科医院にしばらく通わずにすむ」と思う方もいることでしょう。人口の被せ物により「歯が強くなった」と考える方もおられるようです。

 でもこれ、じつは大間違い。被せ物の治療というと、口を開いたときに見えるところにばかり目が行きがちですが、その耐久性を決めているのは、歯ぐきの下、歯を支えている骨の中に隠れている「患者さんご自身の歯の根(歯根)」なのです。もちろん被せ物自体は一定の耐久性を備えていますが、それを支える土台の歯は、ケアを怠るとむし歯や歯周病になってしまいます。

 

土台の歯のむし歯にご用心!

 被せ物の治療では、患者さんの歯を削ってつくった土台の上に、キャップ状の補綴物(セラミックや金属など)をかぶせます。建築物の耐久性がその土台にかかっているように、被せ物の治療の寿命は、土台の役目をする歯にかかっています。

 ただ、この土台の歯は、もともとそれほど強度に恵まれていません。被せ物がかぶさっている歯の多くは、むし歯のために神経を取ってあるなど、大きな負荷がかかる治療を経ているからです。大きな治療を経て残すことのできた歯は、健全歯だった頃にくらべると、むし歯に対しても噛む力に対してもだいぶ弱くなっています。

 

定期的なメインテナンスが長持ちの秘訣

 大切の土台の歯を守って、被せ物をなるべく長く使っていくにはどうすればよいのでしょう?そのカギを握るのが、歯科のプロフェッショナルによるお口の健康の維持管理=「メインテナンス」です。

 土台の歯は、被せ物に隠れて見えません。神経を取ってしまった歯であれば痛みも出ません。歯のことは、「痛くないから大丈夫」と判断しがちですが、被せ物の土台の状態を把握するには、痛みと見た目はあまり役に立ちません。油断していると、被せ物と土台の歯のすき間にむし歯が入り込んだり、噛む力に耐えられずに土台の歯が割れてしまうこともしばしばです。

 割れてしまった歯は、ほとんどの場合抜かざるを得ません。ですから被せ物を入れた後は、放っておかずに、土台の歯がむし歯や噛む力で傷んでしまわないようにプロの目で見守ってもらう必要があります。

 お口の中に被せ物がある方は、被せ物の治療の寿命を延ばすために、定期的なメインテナンス受診を始めましょう!

引用参考文献:nico 2020年1月号

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歯周病が進行したその歯 歯周組織再生療法で救えるかも。

 歯周病が進行すると、あごの骨をはじめ、歯のまわりの組織が失われていきます。そうなると歯を支える組織が減ってしまうため、歯の寿命にも影響が及びます。そんなときに歯を救う助けとなり得るのが「歯周組織再生療法」(以下、再生療法)という治療法です。

 

再生させるのは骨だけじゃない。

 歯を支えているのはあごの骨だけではありません。歯の根の表面にある「セメント質」や、セメント質とあごの骨のあいだにある「歯根膜」が、歯と骨を結びつけているのです。再生療法はこれらの組織を再生させることを目的とします。

 再生療法では、歯の根のまわりの組織が失われた部分に特殊な再生材料を入れるなどして再生を促します。

 歯ぐきを切り開いて歯の根を露出させ、プラークや歯石を除去してから、再生材料を充填。それから歯ぐきを元通りの位置に戻して縫合します。歯の根のまわりにはほとんど血餅ができますが、この血餅がとても重要で、これが歯を支える組織––––歯根膜やセメント質、あごの骨の変化していくのです。

 

治療の手法はいろいろあります。

 再生療法には、「エムドゲイン®ゲル」や「リグロス®」といったジェル状の材料のほか、お口の中のほかの場所から採取した骨、人口の骨補填剤(ウシやブタなどに由来)、薄い膜状の材料などが用いられます。

 とはいえ、再生療法はどんな状態の欠損でも再生できるわけではなく、欠損の範囲が広いと十分に再生できないこともあります。そのようなときには、上記の手法を組み合わせるなどして治療を行います。

 

治療を行なった後は、約2週間後に縫合したところを抜歯し、経過観察を続けて8〜9か月後に組織の再生を確認します。

 抜歯までは、治療した歯では噛まないように。また、歯ブラシを当てるのもNGです。治療した歯とそのまわりは、殺菌作用のある洗口液でケアをしましょう。歯みがきができないぶん歯科でクリーニングをしますので、週に2回は必ずご来院ください。

 抜歯後は、毛先のやわらかい歯ブラシで歯みがきを再開します。その後は1週間に1回、数週間に1回と来院していただく間隔を伸ばしながら、治療したところのチェックとクリーニングを繰り返します。

 8〜9か月たって、無事歯を支える組織の再生が確認できたら、治療を行なった歯を長くもたせるために、その後も歯科のメインテナンスに通ってくださいね。

引用参考文献:nico 2019年11月号

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