「ぶつけた歯&神経を取った歯 前歯の変色を治したい!」

歯の変色ってなぜ起こる?

 むし歯になっていないし、本来なら健康できれいな歯のはずなのに、いつの間にかある歯だけが周りの歯よりも黒っぽく目立ってきてしまうことがあります。治療していない歯にこうしたことが起こる場合、原因として考えられる代表的なものが「歯の打撲」です。前歯はとくにぶつけやすい場所にあり、しかも根っこは1本。もともと衝撃に弱いのです。そのため、転んだり、スポーツの試合中に強くぶつけたりしたときに、そのショックで歯の神経が死んでしまうことがあるのです。

 ぶつけたときに歯が欠けたりグラグラしたりすれば、緊急に歯科医院で診てもらうでしょうが、ぶつけただけの痛みでは、なかなか歯科医院にはかからないでしょう。歯の色が黒く変わってきてはじめて受診して、「神経が死んでいる」と知って驚くかたも少なくありません。

原因は歯のコラーゲンの変色

 こうした神経の死んだ歯を、私たちは「失活歯」と呼んでいます。歯の失活による変色は、失活してすぐにはじまるとは限らず、何年もかかって徐々に進むことも多いのが特徴です。では、なぜこんな変色が起こるのでしょうか?

 神経のなかには血液が流れていて、歯に栄養を届けています。意外かもしれませんが、神経の周りにある象牙質には水分やコラーゲンがたっぷりと含まれています。失活すると血液循環がなくなるため、このコラーゲンなどが古くなり変性します。そして時間が経つうちに変色を起こし、象牙質の色が濃くなってしまうのです。その色がエナメル質に透けて見えるのが「変色歯」と呼ばれる状態です。

クラウン(かぶせ・差し歯)の境目の変色の原因にも

 同じような象牙質の変色は、打撲して神経が死んでしまった歯だけでなく、むし歯などの治療のために神経を取り除いた歯にも起こります。やはり血液循環がなくなり、象牙質が変性することが原因です。

 たとえば、神経を取ってクラウンを被せた歯の歯ぐきが下がったときに、クラウンと歯ぐきの境目あたりが黒っぽく見えてしまうことがあります。これは、失活して変色した歯根が見えるためです。

 

 口もとの美しさを損なう変色歯で悩むかたは少なくないでしょう。でも、「神経が死んでいるからダメだ」とあきらめず、まずは歯科医院でしっかりと検査をしてもらいましょう。そして、改善するための方法がいくつかありますので、歯科院でご相談いただきたいと思います。

引用文献:nico2011年1月号