「そこが知りたい!フッ素の力」

フッ化物、使っていますか?

 「フッ化物がむし歯予防に効く」と、皆さん聞いたことありますか?

日本では1948年にフッ化物入りの歯みがき剤がはじめて製品化され、現在では販売されている歯みがき剤の89%にフッ素が配合されています。

皆さんがいま使っている歯みがき剤にも、フッ化物が入っているのではないでしょうか。

 日本ではそのほかにも、フッ化ジェル、スプレーなど、毎日の歯みがきの際に歯に直接塗る方法や、フッ化物溶液でぶくぶくするフッ化物洗口(学校や幼稚園・保育園などでおもに実施)、そして歯医者さんで定期的に受けるフッ化物歯面塗布が行われています。

こうした、口のなかにフッ化物を使う方法を「局所応用」といい、日本ではフッ化物を局所応用で用いています。

 海外では、こうした局所応用のほかに、水道水のフッ化物濃度調整や食塩にフッ化物を添加したり、フッ化物タブレットを使うなどの「全身応用」もさかんに行われています。日本では「水道水にフッ化物?」「食塩に?」「飲んでいいの?」と驚かれてしまいますが、じつはフッ素元素はミネラル栄養素。

フッ化物のむし歯予防効果が発見されたきっかけ自体「フッ化物濃度の高い天然水を飲む地域にむし歯が少ない」という調査結果からだったのです。

 

自然から教わったむし歯予防法

 フッ化物のむし歯予防への応用は、1901年、若い歯科医師がアメリカのロッキー山脈の麓にあるコロラドスプリングスの住民に、独特の褐色の歯を見つけて調査をはじめたことにはじまります。

歯が褐色で形成不全であるほかに、住民たちには別段健康上の問題が見受けられず、むしろむし歯がとても少ないというすぐれた特徴がありました。

 

フッ化物利用のはじまり

 これがきっかけになって、アメリカ中の飲み水のフッ化物濃度とむし歯の関係を調べる大規模な調査が行われました。

すると約1ppmのフッ化物が入った水を飲んでいる地域では、うまい具合にむし歯が減って、しかも歯の色にほとんど問題が起きないことがわかったのです。

このフッ化物のすぐれた力を限られた地域の人々だけが享受するのではなく、より多くの人々の歯科保健に役立てようと、1945年には早くもアメリカで初の水道水のフッ化物調整が開始され、全身応用が始まりました。

 本誌では、現在110ヶ国以上で用いられ効果を上げている、フッ化物を使ったむし歯予防についてお話していきます。

引用参考文献:nico 2011年10月号