歯医者さんで目指せ!におわないお口

口臭の大部分(80%以上)は、お口の中の気体に由来します。その主要な原因物質は「揮発性硫黄化合物」である硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドです。なかでも硫化水素とメチルメルカプタンが約 90%を占めるといわれます。

においのもとはどこにある?

 溜まったプラーク:プラークはお口に長くあるほど硬くなっていき、歯ブラシで落ちにくくなります。長く残って熱成したプラークは、においのもととなります。


 穴の開いたむし歯:むし歯になって穴の開いたところは、食べかすやプラークが溜まりゃすい場所です。そのままにしていると、むし歯が進行しやすいだけでなく、においのもとにもなります。


 歯周病:歯周病菌の中でも病原性の強いPg菌が出す口臭物質が、メチルメルカプタンです。歯周病になっている認識がないために、気づかぬうちに不快な口臭が発生していることも多いです。いわば歯周ポケットの中にガス工場があるようなものです。また、深い歯周ポケットの中には、どうやっても歯ブラシは届きません。プラークや歯石がだんだんと蓄積されていき、強いにおいを発します。


 舌苔:舌には細かな突起(舌乳頭)が無数にあり、そのすき間にはがれ落ちたお口の粘膜や唾液の成分、食べかすなどが堆積します。これが舌苔で、だれしもうっすらとあるものですが、厚く堆積すると細菌の温床となり、不快な口臭を生じます。


 汚れた入れ歯:入れ歯にもプラークや歯石は付きます。ですから、しっかりみがけていない入れ歯もにおいを生じます。


 つけっぱなしの仮歯:仮歯は本来、本番の彼せ物ができあがるまで、仮の歯として使っていただくものです。しかし、仮歯を入れたら噛めるようになったからと、そのままつけっぱなしの方がときどきいます。
長くお口にあるうちに、仮歯の表面のプラスチックが傷ついたり、夜せた歯との間にすき間が空いたりすると、においのもとであるプラークが溜まってしまいます。

こうした歯科的なにおいのもとを治療してもらったり、清掃のしかたを教えてもらうことで、口臭が改善されるケースは珍しくありません。口臭対策は1人で悩むより、歯科医院でお口を診てもらうのが近道ですよ!
 なお、糖尿病や内臓疾患など、全身の病気が口臭のもとになっていることあります。まずは歯科医院でお口由来の要因を取り除いてもらい、もし身体の病気が原因と疑われるなら、内科を受診しましょう。

 

引用参考文献:nico2023年7月

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『なぜしみる?どうしてすぐに治らない?知覚過敏の疑問にお答え!』

 

知覚過敏はなぜしみる?

 歯を断面で見ると、中心に歯髄(歯の神経)があり、それを覆うように象牙質とエナメル質があります。歯髄からは微細な管が無数に伸び、その管を通って栄養が象牙質に送られていきます。この管を「象牙細管」といい、内部は空洞ではなく、組織液(歯髄液)で満たされています。

 歯ぎしりでエナメル質の表面がすり減ったり、歯周病や過度の歯みがきなどで歯ぐきが下がると、いままで隠れていた象牙質がむき出しになり、象牙細管も露出します。

 このとき、冷たい・熱いという刺激や、歯ブラシなどの物理的刺激、細菌などの異物による刺激が加わると、象牙細管内の歯髄液の流れに変化が生じます。これが歯髄に伝わることで、痛みとして知覚される=知覚過敏となります。つまり、露出した象牙細管が刺激の通り道となるわけです。

どうして治療に時間がかかる?

 知覚過敏の治療は、経過を診つつ段階を追って進むため、「歯医者さんで診てもらえばすぐに治る」とはならないことが多いです。むし歯や歯周病、歯のヒビ割れなどがしみる原因のこともありますので、それらの可能性も考慮しながら治療を進めます。

 問診や検査ではっきりとした疾患やトラブルは見つからないけれど、象牙質が露出しているのが確かな場合、まずは生活習慣の改善から取り組んでいただきます。

 食生活の改善や、過度の力での歯みがきの改善にくわえ、知覚過敏を抑える成分を含んだ歯みがき剤を使ってもらいます。

 歯みがきを続けても症状が改善しないなら、刺激に対する歯髄の反応を抑える薬剤を、象牙質が露出している場所に塗布します。それからまた様子をみて症状が改善しないなら、コーティング剤を塗布して、露出した象牙細管を封鎖します。このように、効果が出るのか見定めながら治療を進めるために時間がかかるのです。

歯みがきも立派な「治療」です

 知覚過敏の治療で食生活の改善と並び第一選択肢となるのが「歯みがき」。なかでも重要なのが「歯みがき剤の成分」です。

 1つめはおなじみの「フッ素(フッ化物)」。 再石灰化を促進するフッ素の作用が、露出した象牙細管を少しずつ封鎖します。 1450ppmの高濃度フッ素がおすすめです。

 2つめは「硝酸カリウム」。これは神経の反応を抑える成分として、知覚過敏治療の塗布剤としても使われています。

 明日、明後日には治らないかもしれませんが、1週間、2週間と使い続けるうちにだんだんと変化が出てくるはずです。知覚過敏の治療には根気が大切です。

 

引用参考文献:nico2022年10月

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「被せ物が欠けた、外れた、壊れた?それもしかして歯ぎしりのせいかも」

 詰め物や被せ物がよく壊れる、歯が割れたり欠けたりしやすいとお悩みの方。そのトラブル、もしかしたら歯ぎしりや歯の接触癖(TCH)が原因かもしれません。

過剰な力が歯や被せ物を壊します

 歯を傷める過剰な力には、大きく分けて 2種類あります。ひとつは「歯ぎしり」。眠っているとき無意識に行う歯ぎしりは、起きているときと違い力の加減がきかず、たいへん強い力が歯にかかります。

 もうひとつは、TCHとよばれる「上下の歯を無意識に接触させる癖」。上下の歯は、食事をしたり重いものを持つときに一時的に噛む以外は、本来は離れているものです。 しかし、患者さんのなかには歯を接触させる癖のある方がいて、ごく弱い力が長時間加わることで、顎関節症になったり、歯や入れ歯を傷めてしまうことがあります。

歯根が割れたり、あごの骨が減ることも

 歯ぎしりが引き起こす歯への害の中でも、患者さんにとってもっともつらいもの が「歯根破折」です。

 歯根破折とは、噛む力に耐えきれなくなった歯根が縦に裂けるように割れることで、いわば歯の「疲労骨折」です。細菌だらけの口の中で、割れて汚染された歯を再利用することはたいへん困難で、ほとんどの場合、抜歯になります。

 歯根破折を起こすリスクがもっとも高いのは、神経を取って治療してある歯。歯に栄養を送っていた神経が失われたせいで、枯木のようにパキッと割れやすくなってしまうのです。

 また、歯周病の炎症によって、歯を支える骨(歯槽骨)が減っているときに強い力が加わると、骨の破壊がさらに進んで歯周病の悪化が加速します。

被害を減らすための歯科の対策とは?

 歯ぎしりから歯と被せ物を守る方法としてもっとも有効なのが、夜間のマウスピースの装着です。

 マウスピースをして眠ると、約9割の方は歯ぎしりがいったん止みます。3週間ほどして装着に慣れるとまた始まりますが、マウスピースが歯にかかる力を分散し、代わりに削れてくれます。保険で作れて、削れても補修ができますので、ぜひ毎晩使ってください。

 これから被せ物の治療を受ける方におすすめなのが、耐久性のある材料や治療法を選ぶことです。セラミックの歯なら、硬度の高いジルコニアを。神経を取った歯なら、歯根破折のリスクを低減できる接着性レジンとファイバーポストを使った治療がおすすめです。ただしその場合も、マウスピースの使用は続けていきましょう。

 

引用参考文献:nico2022年1月

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患者さんもご家族も快適、幸せ。広がってます!歯科の訪問診療

 「うちのおじいちゃん・おばあちゃんの入れ歯が壊れてしまった」「飲み込みにくくて食べるのに苦労している」「お口が臭う」ーでも、歯医者さんに連れて行くのはとてもたいへん。そうしたお悩みをおもちの方、いらっしゃいませんか。
 どうにかしなきゃと思いつつも、食事や着替え、風呂、トイレなど身体のお世話で忙しく、お口の中まで手が回らないことも多いでしょう。そんなときはぜひ歯科に頼ってください。歯科への通院が困難な方のために、一部の歯科では「訪問診療」を行っているのです。

受けられる治療はほぼ変わりません


 訪問診療でも、歯科医院と同じ種類の治療が受けられます。いちばんニーズが多いのは入れ歯関連のお困りごとで、「入れ歯が割れた」「人工歯が抜けた」「入れ歯が合わなくなって食べられない」といった相談をよく受けます。
 家族や介護士さんの歯みがきではお口をきれいにするのは難しく、プラーク(歯垢)
や歯石が溜まり、そこから歯周病になっている方も多いです。歯周病は万病の元。動脈硬化や心筋梗塞、糖尿病など全身の病気に関連するといわれます。
 訪問診療では歯科衛生士による「専門的口腔ケア」(お口のクリーニング)も受けられます。残っている歯とともに、お口の粘膜や舌、入れ歯を清掃させていただきます。
 介護を受けている方にとって、お口のクリーニングはたんにむし歯や歯周病を予防するだけのものではありません。お口が清潔になると、命を奪いかねない誤嚥性肺炎のリスクの減少にもつながります。口臭も減りますので、患者さんは快適ですし、介護をされるご家族にもうれしいですね。

訪問診療ミニ Q&A


 最後に、訪問診療でよく聞かれる疑問に簡単にお答えしましょう。
Q:訪問診療はどんなふうに進みますか?
A:患者さんの持病、服薬の影響、体調によっては難しい治療もありますので、主治医やケアマネジャーと情報を共有しつつ、無理のない範囲で進めていきます。
Q:保険は使えますか?
A: 訪問診療は保険適用です。医療保険のほか、介護保険を使う場合もあります。
Q:家から遠い歯科にもお願いできますか?
A:保険診療としてお伺いできるのは、訪問診療を行う歯科医院から半径 16km以内と決められています。

引用参考文献:nico2021年8月

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ヒリヒリ、ピリピリ、つらいです。原因不明の痛み 舌痛症!

舌痛症ってこんな病気です

 「舌痛症」って聞いたことありますか?舌に起きる原因不明の慢性的なヒリヒリ、ピリピリ感。それが舌痛症です。

 舌が痛む場合、原因には、舌を噛んだときにできるキズや口内炎にはじまり、カンジダ症やドライマウス、舌がんに至るまでさまざまありますが、それらの可能性をすべて調べても特定の病気が見つからない場合に診断されます。

 中高年の女性の患者さんに圧倒的に多く、痛む場所は通常、舌の先や横っぺた。つまりちょうど歯に触れるあたりです。 

 朝よりも夕方から夜にかけて痛みが強くなる傾向があり、就寝中には痛みはなく、食事中や、何かに集中しているときには悪化せず、痛みが消えてしまうこともあります。そのため食事や睡眠の障害になることはまれです。

 

「心の痛み」が原因のことも

 舌痛症の原因は、現在の研究では残念ながら「不明」とされていますが、脳が「心の痛み(ストレス)」をキャッチしたときに、その情報をうまく処理しきれず「からだが痛い!」という誤った翻訳をしてシグナルを発してしまうことが一因ではないかと考えられています。

 治療法も不明な点が多いものの、少なくとも心身両面からの対応が必要な病気であることが明らかになっています。

 もしかしたら舌痛症は、患者さんの心が「そろそろ少しのんびりしませんか」と発しているシグナルなのかもしれません。

 

痛みの改善に向けたアドバイス

 「心の痛み」に着目して、舌痛症の痛みを減らすためのヒントをお教えします。専門外来の受診と合わせて、お試しください。

  • 痛む場所の繰り返しの確認は避けよう

 痛む場所が気になって、舌に変化がないか鏡で見たり、指で触ったり、歯に舌を触れさせるのを繰り返すと、痛みの記憶が定着し、症状が悪化することがあります。

  • どんなときに痛みが減るか観察しよう

舌痛症の痛みは、日や時間帯によって増減します。何をしているときに痛み

が増すのか、減るのかを意識してみてください。痛みを客観的にとらえて、痛みの不安から距離を置くきっかけになります。

  • お薬にくわえ生活の改善をしよう

お薬は舌痛症の抑制に効果的ですが、服薬をやめると痛みが元どおりになっ

てしまうのでは困ります。そこで、問診とカウンセリングで受けた生活指導を毎日に活かしましょう。食事では刺激物を避け、睡眠時間を確保します。できるところから、日常生活のストレスを減らしていきましょう。

引用参考文献:nico 2020年3月号

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歯並びのためのお口のトレーニング

歯並びに舌とくちびるが影響?!

 歯はきれいな馬蹄形に生えるのが当たり前だと思われがちですが、この馬蹄形は、歯と接しているくちびるや舌の筋肉から加わる力の支え合いによって生まれています。なぜなら、歯は力を与えられると、その方向にジワジワと動いていくからです。

 言いかえれば、歯は舌の力とくちびるの力のバランスが釣り合うところへと動き、並んでいます。とくに歯の生え替わり時期のお子さんの場合、

・乳歯が抜けた部分など、気になるところをつねに舌で触っている。

・飲み込むときに舌で歯を押している。

・お口をいつもポカンと開けている。

というように、お口の癖が、歯にかかる舌やくちびるの力のバランスを崩していると、その影響で歯は前へと動き、噛み合わせも崩れていってしまいます。

 

舌には理想的なポジションがある。

 歯に加わる力のバランス、ひいては歯並びを乱す原因となりやすいのが「舌」です。いまこれを読んでいるあなた、舌の先はお口の中のどこに触れていますか。上あごの天井付近ですか。それとも前歯ですか。

 じつは舌には、収まるべき正しい位置があります。リラックス時に舌が上あごの天井につきつつ、舌先は前歯に触れないか、触れたとしてもほんの軽く触れるくらいの位置が理想です。

 対して、舌が上あごにつかず、低い位置にあり歯にもたれかかっていると、常に歯に力が加わってしまいます。

 また、舌の癖は矯正治療の妨げにもなります。舌からかかる力のせいで、矯正装置を入れても想定したほど歯が動かなかったり、治療が済んで装置を外した後に後戻りを起こしてしまうことがあるのです。

 

トレーニングで矯正治療がスムーズに。

 こうした癖を改善し、矯正治療をスムーズに進めるために役立つのが「お口のトレーニング」です。舌を上あごの天井に当てる、舌を上に持ち上げる力を鍛える、奥歯を噛みしめて噛む力を強くするなどの練習を、矯正装置の装着と並行して(または単独で)繰り返していただきます。これは専門的には「MFT:口腔筋機能療法」といい、舌をはじめとしたお口まわりの筋肉のバランスを整える効果があります。

 ただし、トレーニングはすぐに効果が出るものではありません。長時間、毎日繰り返していただくことで、徐々に効果が表れてくるものです。慣れるまで舌が疲れたり痛くなりますし、時間も根気も必要となります。ですが、素敵な歯並びのために大切なことですので、歯医者さんといっしょに根気よくがんばっていきましょう!

引用参考文献:nico 2020年2月号

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見過ごしてない? お口のなかのにおいの元 不快な口臭のふか〜い話

 口臭というと、「歯磨きはしているから胃腸が悪いせい?」とお口以外の原因を思い浮かべがちですが、ほとんどの口臭の原因はお口の中にあります。歯周病やむし歯、舌や歯の汚れがにおいの元となっていることが多いのです。口臭ストップの早道は、歯科治療とお口のケアにあり!です。

 

においの主犯はお口の細菌!

 ミクロの世界で見ると、口臭の主犯はお口の中の細菌といえます。細菌のうち、特に歯周病菌などの酵素を嫌う菌が、悪臭をともなうにおい物質を生み出します。彼らが唾液や血液、はがれ落ちたお口の粘膜、食べかすに存在するタンパク質を分解したときに、揮発性の硫黄化合物を出すのです。

 

あなたは大丈夫?お口の中のにおいの元

 不快な口臭の元となるのは、おもに以下のようなお口の病気や汚れです。

・歯周病になっている歯周ポケット

 歯周病になっているとき、歯周ポケットの中にはプラークや歯石のほか、死んで歯ぐきや頰からはがれ落ちた細胞(老廃物)や、血液、体液、細菌の代謝物が溜まり、強いにおいを発します。

・溜まったプラーク

 磨き残しにより溜まったプラーク(歯垢)もにおいの元になります。入れ歯の方は、入れ歯自体のお掃除も欠かせません。

・象牙質に及んだ多数のむし歯

 歯の表面を覆うエナメル質はほぼ100%無機質ですが、内部の象牙質は約3割がタンパク質(コラーゲン)でできています。むし歯が進行すると象牙質のタンパク質が細菌により分解され、においを出します。むし歯が深く多いほど、においは強まります。

・被せ物やブリッジと歯ぐきの境い目

 被せ物と歯ぐきの境い目や、ブリッジのポンティック(ダミーの歯)と歯ぐきが接する面もお掃除が行き届かないことが多く、においの元になりやすいです。

・舌苔

 舌の表面は一見平坦のようですが、じつは非常に微細で長い毛足をもつじゅうたんのような構造です。舌苔は、これに新陳代謝ではがれ落ちたお口の粘膜や細菌が付着し、ベットリと厚い層になったものです。

 

 歯周病やむし歯など、お口の病気が原因のにおいは、治療をしなくては解消されません。また、プラークや舌苔がたくさん残ったままでは、ブレスケア製品でにおいをごまかそうとしても焼け石に水。歯の健康を取り戻す、または維持するついでに口臭予防もできるのですから、定期的に歯医者さんに行かない手はないですよ!

引用参考文献:nico 2019年12月号

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口内炎との違い、予防のコツ etc. いまこそ知りたい!口腔がん

口腔がんってどんながん?

 「口腔がん」はお口の中にできるがんの総称です。舌、歯ぐき、口腔底、頰の粘膜、口蓋、顎の骨、唇など、歯以外のどこにでも発生する可能性があります。なかでも多いのは舌にできるがんで、約6割を占めます。

 年代・性別としては、60代以上の高齢者や男性に発症しやすい傾向があるもの、昨今では女性や若者の患者さんも増えてきています。日本では、口腔がんはずっと前から増加の一途をたどっており、現在の患者数は年1万人以上と推計されます。

 

口内炎とはどう違う?

 口内炎がすべて口腔がんになるわけではなく、口内炎がある日突然、口腔がんになるわけでもありません。口内炎のうち、粘膜の細胞の増殖に異常が起きて、ごくまれにがんになる潜在能力を有したものが口腔がんになる可能性があるのです。

 くわえて、潜在能力をもった口内炎ががんになるには、必ず「前がん病変」(がんではない状態)を経由します。そして口内炎が前がん病変を経てがんになるには、5年以上の長い年月がかかります。前がん病変も必ずがんになるわけではなく、そのまま状態が変わらないこともあります。

 とはいえ、繰り返し口内炎になる場所では絶えず細胞の増殖と修復が行われていますので、細胞に異常が起きる可能性が高まります。口内炎ができるようなお口の環境を放置するのは、やはりよくないのです。

 

「慢性的な刺激」が原因に。

 一般的にがんの原因は、食事、生活習慣(お酒とタバコ)、ウイルスだといわれていますが、口腔がんではさらにお口の粘膜への「慢性的な刺激」が原因となります。刺激が繰り返されるうち、ある時粘膜の細胞に異常が起き、口内炎から前がん病変、そして口腔がんになるのです。

 刺激には、歯が傾いていて舌やお口の粘膜にぶつかる、唇や舌を噛んでしまう、被せ物や入れ歯が当たるなどの物理的なもののほか、食品の添加物や、歯周病による炎症などの化学的なものがあります。重度のむし歯が絶えず当たる粘膜が床ずれのようになり、がんになった例もあります。

 口腔がんの早期発見には、異常を感じていなくても半年に1回は歯科で定期検診を受け、粘膜のチェックもお願いするようにしましょう。発症を防ぐために、慢性的な刺激となるお口の要因を取り除くことも大事です。万一、前がん病変が見つかった場合は、がん化を確認したらすぐに対応できるように、少なくとも3か月に1回は歯科で経過を見守ってもらえるようにしてください。

引用参考文献:nico 2019年9月号

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からだに自信あり?それじゃ歯は?アスリートの歯を守りたい!

 トレーニングに励んでいるアスリートのお口って、プロやアマチュアを問わず、むし歯や歯周病になりやすいって、ご存知ですか。これにはアスリートならではの理由があります。バレーボール日本代表のメディカルチームの一員として、選手の皆さんを歯科の立場からサポートさせていただいている経験から、お話ししましょう。

 

アスリートはむし歯になりやすい!

–—–—–そう聞くと、驚くかもしれませんね。でもこれ、本当のことです。運動中は口で呼吸をするので、お口の中がカラカラに乾きますよね。唾液には本来、むし歯になりかかった歯を修復してくれる「再石灰化作用」があるのですが、唾液が乾くとむし歯のリスクが高くなってしまうのです。

 また、たくさん汗をかくと唾液の分泌自体が減りますし、疲れと空腹で糖分を摂りがちなことや、練習でヘトヘトになって就寝前の歯みがきがおろそかになりやすいことも理由と考えられます。

 

アスリートは歯ぐきが腫れやすい!

 アスリートはからだが丈夫というイメージがあります。たしかに皆さん強靭な肉体をおもちですが、体力ギリギリまでトレーニングを積むと、からだは傷んだ組織の修復で手いっぱい。そのため免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなる可能性が指摘されています。

 風邪やインフルエンザだけでなく、歯ぐきが腫れる歯周病も、お口の中の細菌が炎症を引き起こす感染症。ですからアスリートは、歯周病にも注意が必要なんです。

 

アスリートこそしっかりと予防を!

 では最後にアスリート向けに歯の健康を守るポイントをご紹介します。

 ・毎晩歯みがきを欠かさずに。

 トレーニングで疲れて、つい歯みがきをせずに寝てしまう。でもそうすると、お口の中は朝までむし歯菌や歯周病菌の楽園に。眠くてもファイト!毎晩歯みがきを。

・スポーツドリンクと賢くつきあう。

 スポーツドリンクは酸を多く含むため、長期間飲む続けると「酸蝕症」という歯が溶ける病気のリスクに。エナジードリンクやビタミン飲料、柑橘類やクエン酸も同様です。飲んだ後は水でお口をすすぐなどして、酸を洗い流すようにしましょう。

・半年に一度は歯科医院へ。

 スポーツに打ち込んでいると毎日忙しく、オフの日も歯科医院に足が向きづらいもの。でもアスリートのお口は、むし歯や歯周病、酸蝕症のリスクにさらされています。ぜひ半年に一度は歯科医院で健診を!

引用参考文献:nico 2019年5月号

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詰め物が取れた、被せ物が割れた?歯の天敵?歯ぎしりにご用心!

 「詰め物がよく取れる」「朝起きるとあごが痛い・だるい」「歯がすり減っていたり、欠けたり割れたりするといった経験はないでしょうか。それはもしかすると、“睡眠中の歯ぎしり”が原因かもしれません。

 

「良い歯ぎしり」と「悪い歯ぎしり」

 じつは歯ぎしり自体は、日中に受けたストレスを睡眠中に発散して脳とからだの健康を保つための無意識の行動で、本来は悪い癖などではありません。

 しかし、噛み合わせがよくない方のばあ、睡眠中の歯ぎしりが、強い力で歯を削ったり揺さぶったりする「悪い歯ぎしり」となってしまうことがあります。

 上の歯と下の歯がうまく噛み合っている良い噛み合わせの方は、歯ぎしりをしても上下の犬歯が力を受け止めてくれます。歯ぎしりの力を、長くて丈夫な歯根をもつ犬歯が引き受けてくれるので、ほかの歯にはほとんど負担がかからずにすみます。

 一方、犬歯がガチッと噛み合わない、奥歯ばかりで歯ぎしりするようなお口の場合、奥歯に直接、強い力がかかります。あごの動きにもストップがかからないので、下あごのがグラインドしやすく、広範囲に歯が削れていってしまいます。

 歯ぎしりをする方は、平均8時間の睡眠中に約40分間も強い力で噛む(通常は約15分)そうです。もしこれが悪い歯ぎしりだった場合、歯をいかに傷めてしまうか容易に想像できるのではないでしょうか。

 

悪い歯ぎしりから歯を守るには?

 歯ぎしりによる被害を防ぐもっともポピュラーな歯科治療は、マウスピースを使う方法です。就寝中にマウスピースを装着し、力のかかり方を修正して歯やあごを守ります。また、良い噛み合わせをつくる矯正治療は、悪い歯ぎしりを良い歯ぎしりへと変える根本的な改善策です。

 こうした治療と同時に重要なのが、就寝前のイメージトレーニング。「歯ぎしりをしないぞ」と繰り返し唱え自分を暗示にかけます。簡単なわりに効果があり、歯ぎしりが4割減るともいわれています。

 くわえて、生活習慣や癖の改善も大切。歯ぎしりは眠りの浅いときに起きやすいので、寝床でスマホを操作しない、ぬるめの風呂にゆったり入るなど、快眠できる生活習慣を整えるほか、日中に噛みしめていることを自覚したら、スッと力を抜いて歯が接触しないようにしましょう。

 

 むし歯や歯周病で歯が弱っているところに悪い歯ぎしりが加わると、被害がより甚大に。悪い歯ぎしりにぜひご用心を!

引用参考文献:nico 2019年1月号

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