患者さんもご家族も快適、幸せ。広がってます!歯科の訪問診療

 「うちのおじいちゃん・おばあちゃんの入れ歯が壊れてしまった」「飲み込みにくくて食べるのに苦労している」「お口が臭う」ーでも、歯医者さんに連れて行くのはとてもたいへん。そうしたお悩みをおもちの方、いらっしゃいませんか。
 どうにかしなきゃと思いつつも、食事や着替え、風呂、トイレなど身体のお世話で忙しく、お口の中まで手が回らないことも多いでしょう。そんなときはぜひ歯科に頼ってください。歯科への通院が困難な方のために、一部の歯科では「訪問診療」を行っているのです。

受けられる治療はほぼ変わりません


 訪問診療でも、歯科医院と同じ種類の治療が受けられます。いちばんニーズが多いのは入れ歯関連のお困りごとで、「入れ歯が割れた」「人工歯が抜けた」「入れ歯が合わなくなって食べられない」といった相談をよく受けます。
 家族や介護士さんの歯みがきではお口をきれいにするのは難しく、プラーク(歯垢)
や歯石が溜まり、そこから歯周病になっている方も多いです。歯周病は万病の元。動脈硬化や心筋梗塞、糖尿病など全身の病気に関連するといわれます。
 訪問診療では歯科衛生士による「専門的口腔ケア」(お口のクリーニング)も受けられます。残っている歯とともに、お口の粘膜や舌、入れ歯を清掃させていただきます。
 介護を受けている方にとって、お口のクリーニングはたんにむし歯や歯周病を予防するだけのものではありません。お口が清潔になると、命を奪いかねない誤嚥性肺炎のリスクの減少にもつながります。口臭も減りますので、患者さんは快適ですし、介護をされるご家族にもうれしいですね。

訪問診療ミニ Q&A


 最後に、訪問診療でよく聞かれる疑問に簡単にお答えしましょう。
Q:訪問診療はどんなふうに進みますか?
A:患者さんの持病、服薬の影響、体調によっては難しい治療もありますので、主治医やケアマネジャーと情報を共有しつつ、無理のない範囲で進めていきます。
Q:保険は使えますか?
A: 訪問診療は保険適用です。医療保険のほか、介護保険を使う場合もあります。
Q:家から遠い歯科にもお願いできますか?
A:保険診療としてお伺いできるのは、訪問診療を行う歯科医院から半径 16km以内と決められています。

引用参考文献:nico2021年8月

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歯周病がアルツハイマーの原因に?!歯科からはじめる ザ・認知症予防

認知症の発症抑制に歯周病の予防を!

「歯周病を予防している人は認知症になりにくい」一日々の診療経験からこうした実感をもつ歯科医師は多いのかもしれません。このような実感を裏づける臨床研究は、近年つぎつぎと報告されてきましたが、これまで歯周病が認知症の発症にどう関与しているのかは謎に包まれていました。
 しかし、九州大学の最新の研究結果から「アルツハイマー型認知症への Pg菌の関与」が科学的に証明されました。Pg菌とは、歯周病菌の中でも病原性が高い菌です。
「Pg菌が起こす炎症により、アルツハイマー型認知症の原因物質=老人斑アミロイードB(脳に溜まる異常なタンパク質、以下、アミロイド8)が体内に増えること」、それに加え 「Pg 歯がアミロイドBを脳内へと誘導していること」までが明らかになったのです。

なぜ歯周病菌が脳にまで悪さできる?

歯周病菌が歯の周りだけでなく、なぜ脳の病気の原因にもなるのでしょうか?
 歯周病菌であるPg菌は、歯周病の炎症でできた歯ぐきの粘膜の破れ目を入口にして、歯ぐきの中、そして身体に入り込みます。
 Pg菌が歯ぐきにたくさん入り込むと、免疫細胞は必死になって戦いますが、多勢に無勢で取り逃してしまいます。逃げおおせたPg菌は体内を巡るうえ、免疫細胞の過剰反応がアミロイドBを増加させるというさらなる困った事態を引き起こします。

アミロイドBはなぜ脳内に入り込める?

脳には「血液脳関門」という、門番のようにはたらく脳血管の機構があり、血液中の異物を通さない仕組みになっています。
では歯ぐきでつくられたアミロイドBは、どうやってこの厳しい関門をすり抜けて脳内に入り込むのでしょうか?
 Pg菌は歯ぐきから血流に乗って頭部に到達し、血液脳関門を構成する血管壁の細胞にくっつきます。すると、Pg菌に抵抗する血管壁の細胞がカテプシンBをつくり出します。カテプシンBは、血管壁の細胞に「アミロイドBを脳内へと送り込む受容体」を増やします。この受容体から入り込めるようになったアミロイドBが長い時間をかけて脳内に蓄積し、株々に神経細胞を傷つけ脳を萎縮させ、アルツハイマー型認知症を引き起こすと考えられるのです。
Pg菌は、歯ぐきの粘膜を壊して歯ぐきに入り込んでアミロイドBを増産させるだけでなく、つくったアミロイドBを脳内へ輸送する役割も果たしていたわけです。
 認知症を防ぐためにも、歯科で歯周病の治療と予防を受けましょう。

引用参考文献:nico2021年7月

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STOP!口腔機能低下症。ムセ、せき払い・・・見逃すな!お口の老化のサイン

 加齢にともない進行するお口の老化は、ムセやすくなる、食べ物が飲み込みにくくなるだけでなく、窒息や誤嚥性肺炎のリスクとなります。お口の老化を予防するには、まず「お口の老化のサイン」に気づくことが大事です。

お口の老化、始まってませんか?

 お口の老化は早めに気づけばそのぶん予防もしやすいのですが、そもそもご自分のお口の機能が衰え始めていることに気づいていない方が多いです。

 たとえば最近、せき払いが増えましたか? 食べ物がのどにつかえる感じがすることが増えましたか?歯科治療中にお口に水をためていられず、ムセてしまったことはありませんか?ガラガラ声など、声がかすれてきましたか?こうした変化は、お口の老化を示すサインです。

お口の老化はなぜ怖い?

 お口の老化、つまりお口の機能が低下していくと、どのようなことが起こりうるのでしょうか。まず思い浮かぶのが「うまく食べられなくなる」ことです。しかし、それよりも怖いのがムセと窒息、誤嚥性肺炎 です。

 気管に入った異物を吐き戻すムセという行為は、身体にとても負担をかけます。シ ニアの身体には思わぬダメージとなりかねません。また、ムセができているうちはいいのですが、できなくなると窒息の危険性が高まります。

 誤嚥性肺炎は、唾液に含まれる細菌が誤って肺に入って増殖し、炎症(肺炎)を引き起こす病気です。多くの高齢者の命を奪っているのは、みなさんもご存じでしょう。お口の機能が低下すると、これらのリスクが非常に高まるのです。

お口の老化を防ぐエクササイズ

 お口の老化のサインに気づいたら、お口の筋肉を扱えるエクササイズで改善と予防をしましょう。

 「上向きうがい」は、水をひと口ふくみ、顔を上げて 10〜15秒かけてガラガラとうがいします。少し時間をかけてうがいすることで、のどにある喉頭蓋の弁が鍛えられ、誤嚥しにくくなります。

 「ベロ回し」は、お口を閉じ、歯の上を舐めるように、舌を右に 10回、左に 10回ゆっくり大きくまわします。舌の力が鍛えられ、飲み込みがしやすくなります。

 どちらも最初はハードですが、余裕でできるようになったころには、お口の老化は相当に改善されていますよ。 nico 6月号では、ほかにも簡単にできて効果のあるエクササイズをご紹介しています。ぜひご一読ください。

引用参考文献:nico2021年6月

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いびきをかかずに眠れてますか?歯科で気づく!閉塞性睡眠時無呼吸

 

 私たちは、1日の約3分の1を睡眠に費やしています。この深い眠りを私たちが欲するのは、休息が身体と脳にどうしても欠かせないものだからです。なのに、「もしも睡眠中に窒息状態に陥り、酸欠になってしまっていたら」どうでしょうか。
 いびきを兆候とする「閉塞性睡眠時無呼吸」は、心臓、脳、血管に負担をかけ、高血圧症、糖尿病、脳卒中、狭心症、心筋梗塞、認知症のリスクを高める万病のもと。放置すると命取りになりかねません。

歯科が気づいてくれるのはなぜ?

 ところで、「なぜ歯科が閉塞性睡眠時無呼吸の治療をよびかけるの?」「医科の分野では?」と不思議に思われるかもしれませんね。これには理由があります。
 閉塞性睡眠時無呼吸の前段階の「いびき」は寝入りばなに起きることが多く、呼吸が妨げられ苦しいため、頻繁に覚醒が生じ寝不足気味となります。チェアに仰向けになったとき、すぐに寝入っていびきをかきはじめる患者さんがいらっしゃいますが、診療中に睡魔に勝てずに寝てしまうというのはよほどの眠気ですよね。
 また、眠りが浅くなったときに起きやすいのが歯ぎしりやくいしばり。浅い眠りが繰り返されることで、歯ぎしりによる歯の吸耗や、頬や舌に残る食いしばりの痕、傷んだ.せ物や詰め物など、特徴的な痕跡がお口の中にみられることが多いです。くわえて、舌が大きい、口蓋垂(のどちんこ)が下がっているなども関係します。そうしたことから、歯科は「閉塞性睡眠時無呼吸」の兆候に気づきやすい分野なのです。

歯科の口腔内装置、使ってみませんか?

 医科で行う閉塞性睡眠時無呼吸の治療といえば、器械で空気を送り込んで呼吸を助けるCPAP 治療。一方、歯科ではおもに、口腔内装置(マウスピースの一種「オーラルアプライアンス』) を用いた治療を行います。
 オーラルアプライアンスとは、就寝時に下に垂れて気道をふさいでしまう舌を、顎を少し前に出し固定することで持ち上げる装置です。小型の装置ですが効果は大きく、気道を確保して就寝中の酸欠を改善することができます。
 CPAP 治療と異なり機械音はしませんし、持ち運びも手軽です。顎を少し前に出して固定するので噛み合わせが悪くなるのではと心配な場合は、毎朝簡単な額のストレッチをすることを推奨します。
 閉塞性睡眠時無呼吸は、命にかかわる病気です。若い方も「たかがいびき」と油断せず、就寝中に酸欠になっていないか、検査と診断、治療を受けましょう。

 

引用参考文献:nico2021年5月

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『お医者さんが伝えたい 歯医者さんに通うべき5つの理由』

 

 「口は災いの元」というように、さまざまな病気がお口からやってきます。歯医者さんに通うことが「健康で長生き」のためになぜ大事なのか。医師の目線から、いま注目のトピックをお話しします。

糖尿病の改善に歯周病の治療が役立つ!

 糖尿病は、血糖が高いままになり、それがやがて血管や臓器にダメージを与える病気です。インスリンは血糖を下げるホルモンなのですが、体内に炎症が起きていると、インスリンの効きが悪くなります。

 脂肪を貯め込んだ内臓脂肪は、免疫細胞を刺激して、身体に炎症を起こします。このとき生み出される炎症物質が血流にのって体内に広がり、インスリンの効きを悪くします。

 歯周病もお口に炎症を起こしています。 腫れや出血、痛みは炎症のせいですね。免疫細胞と細菌の闘いの結果生じた炎症物質が、同じように血流にのって体内に広がり、インスリンの効きを悪くします。

 つまり、糖尿病と歯周病になっている場合、身体からの炎症にくわえ、お口からの炎症がダブルでインスリンの働きを邪魔するのです。ですがこれは、歯周病が治療されれば、お口からの炎症の火元が止められるので、糖尿病にも良い影響を与えるということでもあります。

歯周病が認知症の進行に関与?!

 歯周病菌のなかには、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)という病原性の高い菌がいます。この菌が怖いのは、歯周病菌のなかでも際立って強力なたんぱく質分 解酵素(ジンジパイン)をもっていることです。

 歯周病が進行すると、Pg菌はジンジパインで歯の周りの組織を破壊し、やがては血管をすり抜けて体内旅行を始めます。Pg 菌が体内に入り込むと何が起きるのか。近年、恐ろしいことがわかってきました。脳にたどり着いたPg菌がジンジパインで神経細胞を変性させ、アルツハイマー型認知症を進行させている可能性があるのです。

 認知症はいくつもの要因が絡み合って起こるものの、歯周病菌そのものが認知機能を奪っている可能性があるというのは衝撃ですね。

 nico4月号では、このほか「お口の健康と感染症」「お口の健康と寝たきりになるリスク」「歯科医院で受ける予防指導の大切さ」についてお話ししています。お口の健康は、自分の力だけでは維持しにくいものです。歯医者さんの力を借りて、「健康で長生き」を実現させましょう!

 

引用参考文献:nico2021年4月

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お医者さんが伝えたい 歯医者さんに通うべき5つの理由

 

「口は災いの元」というように、さまざまな病気がお口からやってきます。歯医者さんに通うことが「健康で長生き」のためになぜ大事なのか。
医師の目線から、いま注目のトピックをお話しします。

糖尿病の改善に歯周病の治療が役立つ!

 糖尿病は、血糖が高いままになり、それがやがて血管や臓器にダメージを与える病気です。インスリンは血糖を下げるホルモンなのですが、体内に炎症が起きていると、インスリンの効きが悪くなります。
 脂肪を貯め込んだ内臓脂肪は、免疫細胞を刺激して、身体に炎症を起こします。このとき生み出される炎症物質が血流にのって体内に広がり、インスリンの効きを悪くします。
 歯周病もお口に炎症を起こしています。
腫れや出血、痛みは炎症のせいですね。免疫細胞と細菌の闘いの結果生じた炎症物質が、同じように血流にのって体内に広がり、インスリンの効きを悪くします。
 つまり、糖尿病と歯周病になっている場合、身体からの炎症にくわえ、お口からの炎症がダブルでインスリンの働きを邪魔するのです。ですがこれは、歯周病が治療されれば、お口からの炎症の火元が止められるので、糖尿病にも良い影響を与えるということでもあります。

歯周病が認知症の進行に関与?!

 歯周病菌のなかには、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)という病原性の高い菌がいます。この菌が怖いのは、歯周病菌のなかでも際立って強力なたんぱく質分解酵素(ジンジバイン)をもっていることです。
 歯周病が進行すると、Pg菌はジンジパインで歯の周りの組織を破壊し、やがては血管をすり抜けて体内旅行を始めます。Pg菌が体内に入り込むと何が起きるのか。近年、恐ろしいことがわかってきました。脳にたどり着いた Pg菌がジンジパインで神経細胞を変性させ、アルツハイマー型認知症を進行させている可能性があるのです。
 認知症はいくつもの要因が絡み合って起こるものの、歯周病菌そのものが認知機能を奪っている可能性があるというのは衝撃ですね。

 nico4月号では、このほか「お口の健康と感染症」「お口の健康と寝たきりになるリスク」「歯科医院で受ける予防指導の大切さ」についてお話ししています。お口の健康は、自分の力だけでは維持しにくいものです。歯医者さんの力を借りて、「健康で長生き」を実現させましょう!

引用参考文献:nico2021年4月

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「神経を取る」だけじゃないんです!ゼロからわかる歯の根の治療

 

 神経に及んだむし歯は激しい痛みをともなうだけでなく、そのままでは歯を失うことになります。そんなとき歯を残す切り札となるのが「歯の根の治療」。歯にとっては心臓病の手術並みの大手術ですが、単に「歯の神経を取る」治療ではありません。

 歯の根の治療は、「歯の内部の細菌感染を起こした部分をきれいに取り除く」治療です。歯の内部にある、神経がとおる管= 根管の中を掃除するので「根管治療」ともいいます。取り除いた後は、細菌を新たに入り込ませないように、掃除した根管の内部を埋めます。感染した部分がなくなれば痛みもなくなっていきます。

 とはいえ、感染部分をきれいに取り除くのは至難の技。根管は1mm以下と非常に細く形も複雑。しかも相手はミクロの細菌。 ですから歯の根の治療は、歯科治療でもつとも難しい治療の1つとされています。

歯の根の治療(根管治療)の流れ

 歯の根の治療は、以下の流れで進みます。

①感染部分の除去

 感染部分は細菌のかたまりですので、まずはこれを除去しなくてはなりません。むし歯(=エナメル質や象牙質の感染部分)を削ったら、死んだ神経(=根管内の感染部分)を取り除きます。まち針のようなドリル状の器具を挿し込んで、少しずつ削ります。

②洗浄と消毒

 除去したときには細かい削りかすが出ます。削りかすにも細菌が混じっているので、取り除きます。注射器状の器具で、消毒薬を根管内に行き渡らせて洗浄します。

③仮詰め

 根管内に消毒薬を詰めて仮の封=「仮詰め」をします。仮詰めをしたあと、「痛みがなくなったからいいか」と、次の受診を先延ばしされるのはおやめください。仮詰めはあくまで「仮」のもの。劣化したり外れると、細菌がまた根管の中に入り込んで、治療が台無しになってしまいます。

④根管充填

 仮詰めを外して根管内の消毒薬を洗い流したあと、充填材を詰めて根管を密封します。この処置は、内部を埋めて強度をもたせるため。ではなく、取り切れずに残った細菌を封じ込めるのと、新たに外から細菌が入ってくるのを防ぐことが目的です。 充填後は、歯を整形して仮歯を装着します。

⑤本番の被せ物を入れて治療終了

 本番の被せ物ができあがったら、仮歯と入れ替えて治療終了です。仮歯を入れて噛めるようになったからといって、受診を先延ばしにしないようにしましょう。仮歯もあくまで「仮」のもの。劣化したり外れたりすると、根管の中にまた細菌が入り込んで、治療が台無しになってしまいます。

 

引用参考文献:nico2021年2月

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「神経を取る」だけじゃないんです!ゼロからわかる歯の根の治療

 

神経に及んだむし歯は激しい痛みをともなうだけでなく、そのままでは歯を失うことになります。そんなとき歯を残す切り札となるのが「歯の根の治療」。歯にとっては心臓病の手術並みの大手術ですが、単に「歯の神経を取る」治療ではありません。
 歯の根の治療は、「歯の内部の細菌感染を起こした部分をきれいに取り除く」治療です。歯の内部にある、神経がとおる管=根管の中を掃除するので「根管治療」ともいいます。取り除いた後は、細菌を新たに入り込ませないように、掃除した根管の内部を埋めます。感染した部分がなくなれば痛みもなくなっていきます。
 とはいえ、感染部分をきれいに取り除くのは至難の技。根管は1mm 以下と非常に細く形も複雑。しかも相手はミクロの細菌。
ですから歯の根の治療は、歯科治療でもっとも難しい治療の1つとされています。

歯の根の治療(根幹治療の流れ)

 歯の根の治療は、以下の流れで進みます。


①感染部分の除去 
 感染部分は細菌のかたまりですので、まずはこれを除去しなくてはなりません。むし歯(=エナメル質や象牙質の感染部分)を削ったら、死んだ神経(=根管内の感染部分)
を取り除きます。まち針のようなドリル状の器具を挿し込んで、少しずつ削ります。


②洗浄と消毒
 除去したときには細かい削りかすが出ます。削りかすにも細菌が混じっているので、取り除きます。注射器状の器具で、消毒薬を根管内に行き渡らせて洗浄します。


③仮詰め
 根管内に消毒薬を詰めて仮の封=「仮詰め」をします。仮詰めをしたあと、「痛みがなくなったからいいか」と、次の受診を先延ばしされるのはおやめください。仮詰めはあくまで「仮」のもの。劣化したり外れると、細菌がまた根管の中に入り込んで、治療が台無しになってしまいます。


④根管充墳
 仮詰めを外して根管内の消毒薬を洗い流したあと、充墳材を詰めて根管を密封します。この処置は、内部を埋めて強度をもたらせるためではなく、取り切れずに残った細菌を封じ込めるのと、新たに外から細菌が入ってくるのを防ぐことが目的です。充填後は、歯を整形して仮歯を装着します。


⑤本番の被せ物を入れて治療終了
 本番の被せ物ができあがったら、仮歯と入れ替えて治療終了です。仮歯を入れて噛めるようになったからといって、受診を先延ばしにしないようにしましょう。仮歯もあくまで「仮」のもの。劣化したり外れたりすると、根管の中にまた細菌が入り込んで、治療が台無しになってしまいます。

 

引用参考文献:nico2021年2月

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知ると知らないでは大違い!親知らずを抜く前にお読みください。

なぜ放っておくとよくないの?

 骨の中で横向きに埋まっている、あるいは傾斜して頭を出している親知らずは、生ぇようとして隣の奥歯を押して傷めたり、隣の歯との隙間にブラーク(細菌のかたまり)を溜めこんでむし歯や歯周病を起こす トラブルメーカーです。

 まっすぐ正常に生えているなら抜く必要はありませんが、「将来トラブルが起きる」と歯科で指摘されたのでしたら、遅くならないうちに抜くことをおすすめします。

 だましだまし過こしているうちに、親知らずが原因のむし歯や歯周病で、治療が手遅れになるほど隣の歯が傷んでしまった り、歯並びがおかしくなって奥歯で噛めなくなったり。親知らずの周りに起きた炎症が歯ぐきから舌の下、頬や首の組織へと広がって発熱し、入院が必要になることもめずらしくありません。

大ごとにならないうちに抜きましょう!

 問題のある親知らずがあるけど、「腫れや痛みがひどくなったら、そのときは覚悟 ・を決めて抜こう」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんね。でも、強い炎症が起きている最中の抜歯は、避けなくてはなりません。炎症によって生じる酸が麻酔薬の効果を打ち消すため、麻酔が効きにくくなってしまうのです。

 炎症があるなか抜歯をすると浴りが遅いですし、二次的な感染症を起こして痛みや 腫れがひどくなることもあります。くわえて、年齢が進むと、歯とあごの骨の癒着が起きやすく、抜くのがとてもたいへんになります。

事前の準備にご協力ください。

 安全に抜歯を受けていただくために、歯科ではこんなことをお願いしています。

●持病についてお教えください:糖尿病で血糖のコントロールが不十分な方は、抜歯後に感染を起こしやすく、治癒が遅くなります。高血圧や心臓病の方は、抜歯中に血圧や心拍数が上がり、脳出血や心筋梗塞を起こすと危険ですので、血圧や脈拍を確認し、新キドキしにくい麻砕菜(アドレナリンを含まない)を選んで抜歯します。

●お薬についてお教えください:血液サラサラのお薬(抗血栓薬)や糖尿病のお薬、骨粗しょう症のお薬や注射は、抜歯時の出血や体調、その後の細菌感染に影響します。 ご自分の判断で休薬せず、まずお薬の服用の有無をお教えください。 

引用参考文献:nico2021年1月

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忘れてませんか?インプラントのメインテナンス

 インプラント治療を受けたあなた。その後も歯科への定期受診を続けていらっしゃいますか。歯科ではインプラント治療を行う際に、治療後もメインテナンス(定期受診)に欠かさず通っていただくようご説明しています。ですが、何年か経つうちに、「痛みがないから」「違和感がないから」とだんだんと足が向かなくなってしまう方も少なくないのです。

インプラントも“歯周病”になる!

 インプラントは、噛むところから歯の根に当たる部分まで、完全なる人工物。ですのでインプラント自体は細菌に強いです。しかし、インプラントが埋まっているまわりの歯ぐきは別で、天然歯と同じように、歯周病になるおそれがあります。

 歯周病は、歯の根元まわりに付着した細菌が、まず歯ぐきを炎症させて腫れや出血を起こします。いわゆる「歯肉炎」です。これが悪化すると、あごの骨が溶けてなくなっていく「歯周炎」=歯周病となります。

 インプラントの歯周病も、進行のしかたは似ています。インプラントに付着したプラークがまわりの歯ぐきを炎症させて、腫れや出血を起こします。(「インプラント周囲粘膜炎」といいます)。これが悪化すると、あごの骨にも炎症が及ぶインプラントの歯周病=「インプラント歯周炎」となります。周囲炎が進むと骨が失われていき、やがてはインプラントが抜けてしまいます。

メインテナンスに来ていただきたいわけ。

 メインテナンスでは、インプラントと、そのまわりの歯ぐきやあごの骨の状態を複数の検査で調べます。周囲炎や、その前段階の周囲粘膜炎になっていることがわかったら、まずは患者さんにセルフケアを見直ししていただきます。ケアのしかたがそのままでは、治療をしても細菌は減らず、炎症も引きません。改善されたら、歯ブラシなどでは届かない、歯ぐきの中のプラークや歯石を専用の器具で除去します。

 周囲粘膜炎の段階で発見できれば元に戻せますし、周囲炎になっていても、あごの骨のダメージが少ない状態ほどインプラントを失わずにすむ可能性が高まります。歯周病と同じで、痛みや違和感を覚えてからでは進行していることが多いです。

 また、歯ぎしりや食いしばりといった、無意識に生じる継続的な強い力により、あごの骨がダメージを受けていることもあります。歯科では、噛み合わせや、上下の歯やインプラントの状態を調べることで、絶えずそうした兆候に目を光らせています。ですから、欠かさずメインテナンスに来院していただきたいんですね。

 

引用参考文献:nico2020年12月

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