歯と口の健康に関する正しい知識と習慣を身につけ、歯科医院などで行う 「 プロケア 」 と 自宅でできる 「 セルフケア 」を実践しましょう!
ここでは、毎日の 「 セルフケア 」 で大切な、歯みがき&仕上げみがきのポイントをご紹介いたします^^
※ 日本歯科医師会雑誌 「 歯の学校 64号 」 参照



歯が痛くなって歯科医院を受診したらほかにも悪いところが見つかったり、治療が終わって安心していたら、しばらくしてまた悪くなった経験はありませんか?
お口の環境を改善して病気の原因を減らさないと、新たなトラブルと治療のいたちごっこに。むし歯や歯周病になりにくいお口に変えるため、定期的なメインテナンスをはじめましょう!
メインテナンスとは、歯科医院で受けられるプロフェッショナルケアのこと。お口の健康診断のほかに、歯や歯ぐきをすみずみまでクリーニングし、患者さんにあったセルフケアや間食のコツをお教えします。
患者さんにメインテナンスの大切さを説明するとき、私はこんなたとえ話をよくします。「もし高血圧が原因で血管が切れたとき、血管だけつないで患者さんを帰すお医者さんはどこにもいませんよね?」って。
高血圧の改善のために、患者さんごとに原因を調べ、投薬や食事指導など、その人に合った指導をするはずです。そのままだと再発してしまいますからね。
お口の中の病気も同じです。治療がうまく終わっても、原因を減らさなければまた同じことが起きてしまう。だからこそ、専門家が患者さんといっしょに歯を守るメインテナンスが大切なのです。
歯周病が進行すると深い歯周ポケットができますが、問題は、治療して炎症が治ったあともポケットがなかなか浅くならないこと。放っておくと、歯ブラシの届かないポケットのおくに歯石やプラークが溜まって炎症が再発し、重篤になりやすいのです。
また、詰め物や被せ物の周りは、削ったことのない健康な歯にくらべむし歯に弱いってご存知ですか?歯と詰め物の継ぎ目には、どんなに上手に治療しても、ミクロの目で見るとギャップ(段差)があり、そこにプラークが溜まりやすいからです。
むし歯も歯周病も、知らないうちに少しずつ壊れていく病気。壊れてから「穴が開いた!」「グラグラする!」と気づいて治療を受けても、歯を救うには手遅れになってしまっている場合が多々あります。
早めに気づいて対策をとるため、メインテナンスをはじめましょう!むし歯と歯周病のコントロールをトータルに受けられるので、歯の寿命に断然違いがでてきます。
痛くなったら行く歯科医院から、お口の健康管理のために定期的に通う歯科医院へ。歯医者さんとの新しいお付き合い、はじめてみませんか?
引用参考文献:nico 2017年1月号
私たちの歯科医院では、お子さんの付き添いで来院した親御さんにも、「お子さんといっしょに、むし歯のリスクを測る唾液検査を受けませんか?」とお勧めしています。じつは親御さんのお口は、お子さんのむし歯のリスクと切っても切れない、合わせ鏡のような存在だからです。
むし歯菌は、赤ちゃんの頃に主に親からうつり、これが一生定着します。親にむし歯菌が多いと子どもに感染しやすく、少ないと感染しにくいのです。子どものお口のむし歯菌を解析してみると、一般的にもっとも多いのが母親由来、つぎに父親由来、つぎに祖父母や保育者となります。とすると、お子さんの唾液検査で検出されるむし歯菌も、おそらくは親御さん由来。そこで、「お子さんのお口に影響を与えたご自身のお口も一度調べませんか?将来のご自身の歯の健康のためにも、ぜひどうぞ」というわけです。
親子で唾液検査を受けていただいた結果を見て驚いたのは、親御さんご自身のお口の中にあ
る問題の多さでした。むし歯でいえば、リスクが高いと判定が出る方が、4割ほどもいらっしゃったのです。
こうしたお口の中には、詰め物や被せ物がいくつもあり、それは、「悪くなったときだけ歯科医院に行き治療を受けてきた」というこれまでの歯科とのかかわりを物語っていました。
悪くなった歯をいくら上等な材料で詰めたり被せたりしても、人口のものはいつか壊れます。できるだけ歯の健康を保って大切に使っていくことが、一生自分の歯で食べるために、とても大切なことなのです。
親御さんが歯科医院のメインテナンスを受けて効果を実感してくださり、「悪くなってから治療に行く」から「悪くならないように予防する」へと考え方を変えてくださると、歯に対するご家庭の意識が変わります。すると、食習慣やフッ素の使い方、仕上げみがきの工夫などの相乗効果が生まれ、お子さんのむし歯予防にもよい影響があることでしょう。
せっかくのお子さんの付き添いで来院してくださっているのなら、この時間を最大限に有効活用し、試しに唾液検査を親子で受けてみてください。
そこからきっと、「これまでとはまったく違った歯科医院とのお付き合い」が、始まると思いますよ。
引用参考文献:nico 2016年6月号
学校歯科健康診断とは、学校で行う歯科の集団健康診断で、「学校保健安全法」に定められ、文部科学省の指導のもとで行われている児童や生徒のためのお口の健康チェックです。
一方歯科医院の歯科検診は、厚生労働省の管轄で行われ、精密な検査をしてお口の中の病気を確定診断し問題を洗い出して、治療や経過観察をするために行われます。学校歯科健康診断の目的は、お子さんたちのお口の健康度をスクリーニングし、その結果をお子さんと保護者の方にお伝えして、お子さんのお口の健康の保持・増進に役立てていただくことにあります。
子どもたちのむし歯が減り、穴が開くほどの大きなむし歯が少なくなった結果、私たち学校歯科医は、むし歯をより軽度の段階で見つけ管理することで、穴が開くのを未然にくい止め、詰め物や被せ物のある歯を減らしていきたい、と考えるようになりました。そこで必要になったのが、「CO」という検査基準です。
ひと昔前の学校歯科健康診断では、すでに穴が開いた歯を見つけて通知していたのですが、現在は「CO」の段階で見つけ、これをいかに進行させないでいくかが、学校歯科の大きなテーマになっています。
「CO」の歯は、フッ素の入った歯みがき剤でていねいに歯みがきし、食事や間食をダラダラ摂らないようにすると、多くの場合進行を止めることができます。
歯は、一度削って詰めてしまうと、その修復治療の耐久性には自ずと限界があるため、一生歯をもたせるためには、削らないことがいちばん。将来歯で苦労しないように、「CO」の歯を適切にして管理して詰め物を減らし守っていきましょう。
じつはこの春、歯科からとてもうれしいお知らせがあります。これまで自費治療だった、歯科医院の「COの進行を止めるための処置」が、この春から保険で受けられるようになったのです。
この改定によって、学校歯科とかかりつけの歯科医院は、教育と医療というそれぞれの立場から、よりスムーズに連携し、国民のお口の健康増進という互いの最終目標に向かって進んでいくことができるでしょう。学校から歯科健康診断の結果のお知らせが届いたら、お子さんと一緒に読んでいただき、お子さんの生涯にわたる歯の健康の扉を開けるために、積極的に活用していきましょう。
引用参考文献:nico2016年4月号
フッ素とは、土の中や海水、食べ物やお茶、そして私たちのからだにも含まれている天然のミネラル成分です。海水には約1.3ppm、川の水には約0.1ppmのフッ素が含まれており、じつは私たちにとって、とても身近な成分なんです。
現在国内で販売されているほとんどの歯磨き剤には、むし歯予防を目的に、薬事法で定められた1,000ppm以下のフッ素が配合されています。フッ素は、微量でも口の中に長くとどまることによって効き目を発揮します。どれくらいで効果があるかというと、およそ0.05ppm〜1ppm。ppmとは、百万分の1という意味ですので、つまり0.000005〜0.0001%という低濃度。これくらいのわずかなフッ素が口の中にあると、むし歯予防に働いてくれるのです。
歯の結晶は、カルシウムイオンと水酸化イオン、リン酸イオンという3つのイオンが結合してできています。この結晶は、むし歯菌の出す酸に触れるとバラけてイオンに戻り、だ液の中に溶け出します。一方、だ液の中に溶け込んだ歯のイオンは、再び結合して結晶になり歯に戻ります。この出たり入ったりのバランスによって、歯の健康は保たれています。フッ素はだ液の中のイオンが結晶になるのを促進し、スピードを上げてくれます。すると歯がよく修復されるので、むし歯ができにくく、進行もしにくくなるというわけです。
さらに特筆すべきは、こうして歯に沈着した結晶がふたたび脱灰しだ液の中に溶けるときには、フッ素がイオン化し放出されるということです。つまり歯自体がフッ素の貯蔵庫でもあるのです。
フッ素の効果を最大限に引き出すには、フッ素配合製品の適切な用量や使用法などコツが必要です。またむし歯のリスクにはさまざまな要因がかかわり、その実態は一人一人違います。歯科医院でだ液検査を受け、定期的に口の中をチェックしてもらうと同時に、フッ素の利用法、歯みがき、食事についての指導やプロフェッショナルクリーニング、フッ素塗布を受けて、リスク管理とトータルケアをお願いするのがいちばんでしょう。
むし歯のリスク管理は、子どもにとってはもちろん、大人にとっても重要です。中高年に多発する根面う蝕など、年齢とともにむし歯のリスクが高くなって、自分だけでは予防が難しいケースも出てきます。歯医者さんと一緒に大切な歯を守っていきましょう。
引用参考文献:nico 2015年6月号