「もっと早く知っていれば」とならないために早期発見!注意したい永久歯の生え方

 

 口・顎の発達が著しい学童期。この成長の変化にともなってしばしばみられるのが「永久歯の生え方の異常」。以下に、歯の生えかわり時期に特に注意したい5つのポイントをご紹介します。

乳切歯の残存と下顎の切歯の舌側転位

 乳歯が残ったまま永久歯が生えてきて、一時的に2枚歯になっている状態のことです。永久歯が内側から生えてくること自体は異常ではありませんが、乳歯が長くとどまる場合は注意が必要です。

永久歯の萌出遅延

 何らかの原因で永久歯がなかなか生えてこない状況を朝出遅延といいます。永久歯の萌出の大幅な遅れにより、隣にある永久歯や歯並び、噛み合わせ全体にまで影響が及ぶことがあります。

第一大臼歯の異所萌出

 歯が本来生えるべき位置から離れて出てきたり、大きく傾いたまま生えてくることを指します。「八重歯」はまさに異所前出ですし、八重歯よりも多く、早い時期に起こるのが、第一大臼歯(6歳臼歯)の異所萌出です。異所萌出によって、第一大臼歯が遅れて生えてきたり、完全に生えない状態のままで対の歯と噛み合ってしまうこともあります。

永久歯の過剰歯

 過剰歯とは、正常な歯の数より多く存在する歯のことです。上の前歯にもっともよくみられ、乳歯の時期に発見されることが多く、その後の永久歯列に大きな影響を及ぼします。永久歯が生えるべき場所に過剰歯が生えてくるため、スペースがなくなり、歯並びが乱れたり、前歯が離れてしまうといったことがあります。

永久歯の先天欠如

 先天欠如とは、何らかの原因で顎の中に歯が形成されないことをいいます。上の歯よりも下の歯に起こることが多く、約10人に1人の割合でみられることがわかっています。先天欠如がある場合は、乳歯を永久歯の代わりとして長く使うため、乳歯をむし歯にさせない徹底した歯みがきや定期
受診による管理が必要となります。

 じつは大人になったときの歯並びや噛み合わせの問題は、上記のような歯の生えかわり時期のトラブルが直結していることが多いといわれています。しかも永久歯列の完成とともに問題は大きくなっていきます。ですので、早期に発見することが重要になります。それには、3〜4か月に1度のかかりつけ歯科への受診がカギ。何十年と使うお口ですので、早い段階で悪い芽を摘み取り、しっかり噛めるよう機能させていきましょう。

 

引用参考文献:nico2023年2月

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『なぜしみる?どうしてすぐに治らない?知覚過敏の疑問にお答え!』

 

知覚過敏はなぜしみる?

 歯を断面で見ると、中心に歯髄(歯の神経)があり、それを覆うように象牙質とエナメル質があります。歯髄からは微細な管が無数に伸び、その管を通って栄養が象牙質に送られていきます。この管を「象牙細管」といい、内部は空洞ではなく、組織液(歯髄液)で満たされています。

 歯ぎしりでエナメル質の表面がすり減ったり、歯周病や過度の歯みがきなどで歯ぐきが下がると、いままで隠れていた象牙質がむき出しになり、象牙細管も露出します。

 このとき、冷たい・熱いという刺激や、歯ブラシなどの物理的刺激、細菌などの異物による刺激が加わると、象牙細管内の歯髄液の流れに変化が生じます。これが歯髄に伝わることで、痛みとして知覚される=知覚過敏となります。つまり、露出した象牙細管が刺激の通り道となるわけです。

どうして治療に時間がかかる?

 知覚過敏の治療は、経過を診つつ段階を追って進むため、「歯医者さんで診てもらえばすぐに治る」とはならないことが多いです。むし歯や歯周病、歯のヒビ割れなどがしみる原因のこともありますので、それらの可能性も考慮しながら治療を進めます。

 問診や検査ではっきりとした疾患やトラブルは見つからないけれど、象牙質が露出しているのが確かな場合、まずは生活習慣の改善から取り組んでいただきます。

 食生活の改善や、過度の力での歯みがきの改善にくわえ、知覚過敏を抑える成分を含んだ歯みがき剤を使ってもらいます。

 歯みがきを続けても症状が改善しないなら、刺激に対する歯髄の反応を抑える薬剤を、象牙質が露出している場所に塗布します。それからまた様子をみて症状が改善しないなら、コーティング剤を塗布して、露出した象牙細管を封鎖します。このように、効果が出るのか見定めながら治療を進めるために時間がかかるのです。

歯みがきも立派な「治療」です

 知覚過敏の治療で食生活の改善と並び第一選択肢となるのが「歯みがき」。なかでも重要なのが「歯みがき剤の成分」です。

 1つめはおなじみの「フッ素(フッ化物)」。 再石灰化を促進するフッ素の作用が、露出した象牙細管を少しずつ封鎖します。 1450ppmの高濃度フッ素がおすすめです。

 2つめは「硝酸カリウム」。これは神経の反応を抑える成分として、知覚過敏治療の塗布剤としても使われています。

 明日、明後日には治らないかもしれませんが、1週間、2週間と使い続けるうちにだんだんと変化が出てくるはずです。知覚過敏の治療には根気が大切です。

 

引用参考文献:nico2022年10月

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『歯にやさしくて審美性も耐久性もUP!ご存知ですか?今どき接着ブリッジ』

 

接着ブリッジってどんな治療?

 接着ブリッジは、その名のとおり、失った歯を補うダミーの歯を、隣の歯に接着剤でくっつける治療法です。保険適用(ただし材料は金属や硬質レジンに限られる)にもなっており、1~2本の歯を失ったときの治療の選択肢になっています。

 メリットは、なんといっても「ダミーの歯を支える歯(支台歯)を大きく削らずにすむこと」。歯は削るほど弱くなり、将来割れて失われるリスクが高まります。

 従来の接着ブリッジは、ブリッジの強度を確保するため、多くは金属が使われてきました。接着面を広げる際に金属が大きくなるので、審美性はいまひとつです。また、接着材頼みの治療法なので、耐久性は接着材の接着力次第。そのため昔は「接着ブリッジ=取れやすい」と考えられがちでした。

  しかし今は、ジルコニアという硬く丈夫で審美的な材料が誕生し、接着材の質も向上。現在の自費の接着ブリッジは、歯質の保存と審美性、耐久性を備えた治療法へと進化しています。

こんな方に選ばれています

 もっとも多いのは、「前歯にブリッジを入れたいけれど、なるべく健康な歯を削りたくない」という患者さんです。「削ることで歯が弱くなっては困る」という方のほか、「以前歯を削って被せ物を入れたときに歯がシミて困ったから、削るのはなるべく避けたい」という方もおられます。

 また、「本当はインプラントで前歯を治療したいけれど、それができない」という患者さんが選ぶことも。インプラントを入れるのに必須の外科処置に抵抗感があったり、持病や治療期間、費用の点で入れられない方の第二の選択肢にもなっています。

苦手なのは「過剰な力」

 ただし、接着ブリッジが向いていないケースもあります。それは、強い力がかかりやすい奥歯の治療や、激しい歯ぎしりや食いしばりのある方です。

 審美的なセラミックの接着ブリッジは、前歯から小臼歯の治療に向いています。奥歯の治療はできないわけではありませんが、向いていません。同様に、ダミーの歯が何本もあるブリッジも力の影響を受けやすいため向きません。できれば1本(多くても2本)の歯を失ったケースが望ましいです。

 歯ぎしりや食いしばりが激しい患者さんは、力に対する耐久性の高いインプラントを選択したほうが、結果的に QOLの高い治療が実現できるかと思います。

 ブリッジをご希望で、「でも健康な歯を削りたくない」とお考えの方。進化した接着ブリッジを、ぜひ検討してみてください。

 

引用参考文献:nico2022年9月

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「そのツライをラクにするがん治療に歯科が役立ちます」

 

歯科ががん治療完遂の助けに!

 多くの場合、がんと診断されてから本格的な治療の開始までには、検査などの関係で日数を要します。そのあいだに時間をみつけて歯科に通い、お口の状態を改善しておくと、がんの治療期間がぐっと楽になります。具体的にいうとー。

口内炎などの副作用が緩和される

 抗がん剤治療や放射線治療(頭部に放射線を当てた場合)では、副作用が起こることが多いです。

 お口に出る主な副作用は、口内炎、舌の痛み、お口の乾燥、歯ぐきの痛み、味覚障書などで、感染症である口腔カンジダ症やヘルペスを発症することもあります。特に口内炎はツラく、症状がひどい方は、痛くて食事はおろか水も飲めない、歯もみがけないという人も・・・。

 口内炎や感染症は、お口の中に細菌が多いほど悪化しやすいです。抗がん剤で体の免疫が抑制されている状態ではなおさらですし、放射線の影響で細胞が脱落し、そこに細菌が多量に入り込むと、炎症が悪化し長引きます。

 こうした症状ができるだけ出ないように、また出たとしても軽度で済むようにするには、お口の中の細菌を減らすことです。 そのためには、むし歯や歯周病の治療が第→。歯科で病巣=細菌の住処を応急的に取り除いてもらいましょう。そして歯石除去やお口のクリーニングを受けて、お口の衛生状態を良くしましょう。

 くわえて、歯や被せ物、入れ歯が当たってお口の粘膜を傷つけているところがないかも診てもらいましょう。がん治療中は、傷口に細菌感染が起きるとひどくなりやすいです。

肺炎などの合併症の危険性が減る

 がんの手術は、たいていは全身麻酔で行われます。全身麻酔では人工呼吸器で呼吸を補助します。気管チューブを患者さんのお口から気管へと挿し込んでいくのですが、グラグラしている歯があると、それが折れたり抜けたりすることがあります。

 折れたり抜けたりした歯が気管に入ると、窒息を起こしかねません。ですから、グラついている歯があるのなら、手術の前に歯科で抜いてもらうことをおすすめします。

 また、気管チューブを通すとき、お口の中が汚れていると、細菌が肺に入り込んで、手術後に肺炎(誤の性肺炎)などの合併症を起こす危険性もあります。このような意味でも、お口の衛生状態は大切です。

 歯科受診は、がん治療を始める前にコンディションを整える“準備運動”です。おろそかにせずぜひ受診しましょう!

 

引用参考文献:nico2022年8月

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「安心・安全な治療のために持病とお薬、教えてください」

 

 高血圧や糖尿病の持病のある方、血液サラサラのお薬を飲んでいる方。歯科を受診した際に、そのことをお伝えいただけているでしょうか。「病院ならともかく歯医者さんで言う必要はないだろう」と思うかもしれませんが、それはとても危険です。

 特に抜歯やインプラントなどの外科治療を受けられる際、病気やお薬によっては、歯科が知らないまま治療を進めてしまうと、生命の危険が生じたり、治療後に痛みや腫れが続いたり、治りが悪くなることがあるのです。ここではその一例として、患者さんの多い「高血圧症とそのお薬」についてお話ししましょう。

高血圧症とそのお薬の作用

 血圧が高いと、ホース内を勢いよく水が流れるように、血管にかかる血液の圧力が大きくなります。この状態は、そのままでは脳や心臓への負担となります。高血圧症は脳卒中や心筋梗塞、心不全の最大のリスクで、脳の血管が破れると、脳出血やくも膜下出血が起き、最悪死に至ります。

 高血圧症の方が飲んでいるお薬は「降圧薬」といいます。いろいろな種類があり、作用のしかたも違いますが、目的は同じで「血管にかかる圧力を下げる」ことにあります。

歯科治療とどう関係する?

 歯医者さんで治療を受けるときは緊張しますよね。このときからだはストレスを感じて、血圧が上がっています。これは「白衣性高血圧」といい、血圧が高くない方にも起こる現象です。

 高血圧症の方は、緊張でさらに血圧が上がります。血圧が上がると心臓がドキドキしますが、それよりも怖いのは脳の血管への影響です。めったにないものの、内圧が上がりパンパンになった血管が破れ、脳出血を起こしてしまうおそれがあるのです。

患者さんへの歯科からのお願い

 万一のトラブルを避けるため、高血圧症の方は必ずお伝えください。受診前には、通常通りお薬の服用もお願いします。

 また、チェアに上がったときや麻酔注射をするとき、抜歯などの外科治療をするときには、血圧を測りながら進めていきます。

 緊張により血圧が上昇しているなら、落ち着くまで時間をおきます。ですので、治療にはお時間がかかります。時間をおいても血圧が下がらないなら、治療を延期させていただくこともあります。

 nico 6月号では、ほかにも「血栓症とそのお薬」「骨粗しょう症とそのお薬」 「糖尿病とそのお薬」「ステロイド剤」と歯科治療との関係もご説明しています。

 

引用参考文献:nico2022年6月

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「プラスaの支えでよく噛める!人生100年時代の快適入れ歯計画」

 

 部分入れ歯は上手に使いこなしている方も多いとはいえ、じつは噛む力をバランスよく受け止めるのが難しい治療です。

 部分入れ歯のバネをかけている支えの歯は、噛むたびに揺さぶられるので傷みやすいです。その歯が抜けてしまったら、別の歯を支えにするしかなく、歯を失うたびに部分入れ歯が大きくなっていきます。

 残った歯を守りつつ、入れ歯の違和感を軽減するにはどうしたらよいでしょうか。 そのヒントとなるのが、「プラスaの小さな支え」を新たに入れる治療です。

残っている歯根を支えにする

 プラスαの支えにはいろいろ種類がありますが、まずご紹介するのが、2021年から保険適用された磁石を使う固定装置(磁性アタッチメント)です。残っている歯根に「キーパー」とよばれる金属を設置し、入れ歯には強力な磁石を埋め込んで、磁力で固定します。着脱が楽で、垂直にかかる噛む力への安定性が高いだけでなく、横から強い力がかかったときは磁石が外れて、キーパーを設置した歯根に余分な負担をかけにくいのが利点です。

 もう1つが、ホックタイプの固定装置。 残っている歯根に金属のホックを取り付け、入れ歯にはホックをはめる穴を作ります。穴にパチンとはめるだけなので、着脱や扱いがとても楽です。

 両タイプともバネがなく、入れ歯を付けると装置が完全に見えなくなります。ただ、キーパーやホックを設置するには、「健康な歯根が必要な本数残っていること」が条件になります。歯根がグラグラでは設置できません。また、磁性アタッチメントの入れ歯は、MRI検査の画像に悪影響を与えてしまうデメリットもあります。

インプラントを数本入れて支えにする

 支えに使える歯や歯根がなかったり、残った歯を削りたくない場合は、インプラントを数本入れて、それを入れ歯の支えにする方法もあります。

  あごの骨と結合して噛む力をガッチリ支え、力学的にもっとも入れ歯が安定しやすい場所に設置できるのがインプラントの強みです。インプラントを支えとした入れ歯は、違和感を軽減し、治療の繰り返しを止めることにつながります。自費治療ではありますが、少ない本数でできるので一考していただく価値はあると思います。

 人生100年時代、長くなった老後をすこやかに過ごしたいもの。人生の終わりまで食事を楽しめるよう、プラスαの支えで入れ歯を安定させ、定期的にメインテナンスに通って具合の良い状態をずっと維持していきましょう!

 

引用参考文献:nico2022年5月

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「子どものお口の機能を育てる「食べる姿勢」教室」

 

意外な盲点、「食べる姿勢」

 「うちの子は食べるのが遅くて・・・・・」「あまり噛まずに丸飲みしているみたい」「食べるときクチャクチャ音がして、注意しても変わらないんです」一これらは子育て中の親御さんからよく聞くお悩みです。
 いま大人である私たちからすると、食べることは、成長とともに自然にできるようになってきたイメージがあります。ですが、食べること=「食べる機能」は、じつは自然に育っていくものではありません。
 食べる機能は、基本的には食べることで発達していきます。食べるために何が必要かを考えたとき、専門家の視点でいわれるのは、咀嚼に必要な歯が生えているか、歯は健康かなどの「形態」と、歯やあごを協調運動させる筋肉や神経が発達しているかという「機能」。そしてその子の食べる「意欲」です。ただ、このほかにも大切なことがあります。それが食べるときの「姿勢」です。
 正しい姿勢は、よく噛めて安全に飲み込めるのはもちろん、お口の筋肉を動かしやすい姿勢なので、食べる機能の成長がおのずと促されます。しかも、少し気をつけるだけで改善しやすい要因でもあります。
 

正しい「食べる姿勢」とは?

 お子さんが食べているときに、次のことができているでしょうか。
 
あごを上げない:飲み込むときにあごが上がっていると、食べ物が気管に入りやすくなります。これは大人になり、高齢になつてお口の機能が弱ってくると、誤嚥や窒息のリスクとなります。
 
机やいすの高さがからだに合っている:食べることは手と目と口の協調運動ですから、机の高さが合っていないと、手が動かしにくいので食べにくいです。お子さんは自分で机やいすを選べませんから、親御さんのほうで環境を整えてあげましょう。
 
背筋が伸びている:猫背の姿勢でものを食べると、お口まわりの筋肉が動かしにくいです。一方、背筋が伸びた姿勢だと、体幹が安定するので、お口まわりの筋肉やあごをリズミカルに動かしやすくなります。
 
足の裏が床についている:足の裏が床についていると、踏ん張れるので飲み込みやすくなり、しっかり噛めるようになります。 お子さんが小さくて足の裏が床につかないなら、台を置きましょう。
 
  お口の機能は加齢により低下していきます。でも子どものころからお口の機能がしっかり育っていれば、高齢になってからの低下も緩やかになります。正しい「食べる姿勢」は、健康な歯と同じく、お子さんにとって将来の財産となることでしょう。
 
 
 
 
 
 

「これがスタンダード・プリコーション患者さんを守る!歯科の感染対策」

「スタンダード・プリコーション」とは、歯科診療に従事する者ならだれもが知る細菌・ウイルス感染の「標準予防策」のことです。もともとはエイズウイルスの感染予防などのために構築され、「自分がキャリアであることを知らずに受診する患者さんがいる可能性」を前提につくられたもので、これが新型コロナウイルスに対しても基本的な対策として機能しました。

コロナ前から不織布マスクと手袋

 歯科医師・歯科衛生士の仕事に欠かせないのがマスクとグローブ(手袋)。パンデミック下でこそさまざまな医療分野で使われていますが、コロナ前からこれらが標準装備だった医療分野は、思えば歯科くらいかもしれません。

 スタンダード・プリコーションの根底にあるのは、「ウイルス感染拡大を防ぐこと=社会貢献」という考え方です。診療を介しウイルス感染を広げない。そのためには、みずからが感染源とならないようしっかりと予防をする、というわけです。

 もし患者さんに感染した人がいて、私たちが感染してしまったら、今度は私たちが他の患者さんにうつしかねません。感染リスクが高いとされる仕事だけに、以前から厳重な予防策を行っています。

器具・器材の洗浄、消毒、滅菌

 歯科では診療に使用した器具を「滅菌処理」しています。滅菌とは、殺菌をさらに徹底して、すべてのウイルスや細菌を完全に死滅させること。そのために、滅菌処理用の「オートクレーブ」という装置を各医院が備えています。

 もうひとつ習慣化されているのが、「診療環境の消毒」です。使用した椅子やテーブルの消毒は、今ではレストランなどでも当たり前の風景になりました。しかし、身の回りを適切に消毒するのは意外と難しく、ウイルスを効果的に不活化できる消毒薬の使い方には慣れや経験が必要です。

3密対策も得意分野です

 スタンダード・プリコーションに加えて重要なのが3密対策。歯科ではこまめな換気を心がけ、待合室が混雑しないように配慮しています。待合室の混雑の回避は、もともと歯科の得意分野です。通常、歯科診療は予約制なので、待ち時間はもともと短め。そのため混雑しにくいのです。

 依然として出口の見えない状況で、気の抜けない日々が続いています。引き続きスタンダード・プリコーションと 3密回避を徹底してお迎えいたしますので、ご来院時は歯科医院の感染対策にご協力ください。

 

引用参考文献:nico2022年3月

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「歯医者さんが楽しくなるマイクロスコープのお話」

 

 治療する個所を何十倍にも拡大して見ることができる歯科の最先端装置「マイクロスコープ」(歯科用顕微鏡)。この装置は、歯科医療者にとって「よく見える」だけでなく、患者さんにとっても治療が「よくわかる」ようになるメリットがあります。

マイクロスコープでより精密に!

 マイクロスコープがもっとも活躍するのが歯の根の治療です。むし歯が広がり歯の内部の神経にまで及んだ場合、痛みをなくすにはむし歯部分はもとより、細菌感染を起こした神経を取り除く必要があります。

 しかし神経は、「根管」という直径1ミリ以下の管の中に詰まっています。根管がどこにあるのか、何本あるのか、きれいに感染部分が除去できているのか。それらを確認する際に、マイクロスコープの拡大視野が大きな力になります。

 また、肉眼で見えにくく、レントゲンにもほぼ写らない極小のむし歯やヒビ割れを見つけるうえでも活用されています。

 メインテナンスにマイクロスコープを利用している歯科医院では、歯石除去の際に歯科衛生士が使用していることもあります。高精度に見えることで、より精密な治療ができるのですね。

「治療の価値」がよくわかります!

 マイクロスコープのレンズをとおした映像は、外付け、あるいは内蔵のカメラで録画できます。そのため、治療中に必要なシーンを録画し、治療後に映像を患者さんに見ていただくことが可能です。それにはどんなメリットがあるかというと・・・。

①歯医者さんと同じ視界で見られる!

歯科医療者が見ているのと同じ拡大映像を、患者さんも見ることができます。ご自分の歯や歯ぐきをこれほど鮮明に見る機会は、ほかにはありえません。最初に目にしたときは、きっと感動されると思います。

②どんな治療をしてくれたかがよくわかる!

歯科医療者がどんな治療を行ったかも、録画した映像で見ることができます。 言葉での説明では理解しにくい複雑な治療内容も一目瞭然。どんなふうに器具を動かしているのかもわかります。

③みがけていないところがよくわかる!

プラークや歯石が溜まりがちな、むし歯や歯周病のリスクの高いところを確認していただく際にも役立ちます。手鏡で見るより大きく見やすいです。

 拡大して見られるマイクロスコープ。治療が「よくわかる」ようになることが歯医者さんへの信頼につながり、歯科受診が楽しくなればうれしいです。

 

引用参考文献:nico2022年2月

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『侵襲の少ない、より快適な治療が可能に。歯科のレーザー治療』

 

すべての歯科医院で導入されているわけではないですが、歯科では昔からレーザー機器が利用されています。歯を削る器具や歯石を除去する器具、手術用のメスの代わりにレーザー光を用います。

 とはいえ、レーザーを使用しなくても、歯科医師の技術により的確な治療を行うことは十分に可能です。ですが、レーザー光という、従来の器具より薄く細い、極小範囲にアプローチできる技術を利用することで、「生体へのダメージ(侵襲)が最小限に抑えられる」というメリットがあります。

 その結果、患者さんが治療時に感じる痛みや不快感が軽減されますし、なにより治るまでにかかる時間が短くなります。

快適かつMIなむし歯治療に

 むし歯の治療を受けるとき、歯を削るタービンの回転音や振動が苦手な方、多いですよね。レーザーにはそうした回転音や振動はありません。

 また、レーザー光は従来の器具よりも狭い範囲にてることが可能なため、歯を削る量が最小限で済みます。いわゆるMI (Minimal Intervention:最小限の介入)な治療ができるわけですね。

 ただ極小範囲に当てることを繰り返すぶん、治療時間はどうしても長めになります。

歯周病治療で殺菌もできます

 加齢などで抵抗力の落ちた患者さんの歯周病の治療には、レーザーが特におすすめです。プラークや歯石が除去されたとき、棲み処を失った細菌の一部は、傷ついた歯ぐきの粘膜から血管内に入り込みます。

 すると、抵抗力の落ちている方は熱を出されたり体調を崩されることがあります (菌血症)。レーザーなら、プラークや歯石を除去するときに殺菌も同時に行えますので、こうした症状を抑えられます。

 歯周病の外科治療で歯ぐきを切開する際も、切開すると同時に止血されて侵襲が抑えられるので、治りが速くなります。

審美治療こそレーザーの得意分野

 メラニン色素の沈着による歯ぐきの黒ずみや、土台の金属の色素が歯ぐきにうつるメタルタトゥーの除去など、審美治療こそレーザーの得意分野です。レーザーでごく薄く歯ぐきを削って、着色した部分を取り除きます。そのほか、ガミースマイルの治療にも活躍。歯ぐきのボリュームを落として整形していきます。

 審美治療でも、侵襲が最小限に抑えられ、治りが速くなるメリットは変わりません。 nico12月号では、ほかにも詳しくご説明しています。ぜひご一読ください!

 

引用参考文献:nico2021年12月

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