お口に悪いだけじゃないんです。歯周病とからだの病気

 「お口の病気である歯周病がからだの病気に関係する」という話は、みなさんも耳にしたことがあるでしょう。今月は、特に関連性が高いと考えられている病気について、進行した歯周病がどのようにかかわっているかを、現在想定されているパターンをもとにご説明します。

 

歯周病菌が脳梗塞や心筋梗塞を起こす?!

 歯周病が進行すると、腫れて出血した歯ぐきから歯周病菌が体内に侵入します。血流に乗った歯周病菌は、血管の内壁に入り込み、死んだあとにおかゆのようなかたまりとなります。すると、コレステロールが血管に沈着して動脈硬化を起こすように、かたまりとなった歯周病菌が血管を狭くし、血流を阻害するのです。これが脳の血管で起これば脳梗塞、心臓の弁で起これば心筋梗塞を起こしかねません。

 

歯周病の炎症が糖尿病を悪化させる?

 糖尿病は、すい臓から分泌されるインスリンの働きが悪くなり、血糖の濃度(血糖値)が慢性的に高いままになってしまう病気です。歯周病に侵された歯ぐきでは、炎症が起こっていますが、進行した歯周病の場合、歯ぐきから「炎症性物質」がからだに入り込み、血糖値を低下させるインスリンの働きを邪魔します。その結果、糖尿病が悪化すると考えられています。

 

お口の細菌たちが誤嚥性肺炎の原因に!

 誤嚥性肺炎は、本来は胃に入る食物や唾液が、誤って気管から肺に入ってしまうことが原因です。肺の中で食物や唾液に含まれていた細菌やウイルスが増殖し、肺炎を起こします。歯周病になっていてお口の中に細菌が多い状態だと、肺に入り込む細菌の量も必然的に多くなります。

 

歯周病が早産や低体重児出産を招く?!

 歯周病による炎症性物質の増加は、妊娠中の母親のからだに作用し、子宮の収縮を引き起こす恐れがあります。子宮の筋肉が収縮した結果、赤ちゃんが押し出されて予定より早く生まれてしまうのです。また、歯周病菌が子宮内部に感染して早産を促す可能性も指摘されています。

 炎症が起きている歯ぐきは傷口と同じで、歯周病菌が体内に流れ込む入口になります。「歯ぐきから血が出る」という方はできるだけ早く歯科で治療を。炎症のもとであるプラークと、プラークがたまる足場となる歯石が除去されれば、炎症は徐々に治まります。

 

 今は異常はないと感じている方も油断は禁物。少なくとも半年に1回は、歯科でメインテナンスを受けてくださいね。

引用参考文献:nico 2019年8月号

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ただの当座の歯と思ったら大間違い。知ってる?仮歯のだいじな役割

 歯の根の治療中や被せ物の製作中など、治療している最中の歯にかぶせる「仮歯」。取れやすく割れやすいので、患者さんにとってはやっかいな歯かもしれません。

 でも仮歯には、治療のクオリティを上げ、患者さんの歯を守るだいじな働きがあります。仮の歯だからどうでもいい?いいえ、決してそんなことはないんです!

 

良質な治療のための“仮歯の3大役割”!

 なぜそんな仮歯がだいじなのか、その訳をご説明しましょう。仮歯は大きく分けて3つの役割を担っています。

  • 削った歯を細菌感染や刺激から守る。

仮歯をつけずに放っておくと、そこにプラーク(細菌のかたまり)がくっつき、被せ物をかぶせる土台の歯がむし歯になってしまいます。仮歯は細菌の感染や知覚過敏から、包帯のように歯を守るのです。

  • 歯が動かないように固定する。

歯を放っておくと自然と動きます。仮歯を入れておかないと、空いたスペースに隣の歯が倒れ込んできて、本番の被せ物がピッタリ入らなくなることがあります。

  • 歯根膜の感覚を維持する。

仮歯が入っていないとその部分で噛むことがないので、歯の根の周りにある、噛む力を感じるセンサー「歯根膜」が怠けます。すると、いざ被せ物を入れたとき「当たりすぎ!」と噛む力に過剰に反応してしまいます。そこで本番に備え、仮歯を使って、噛む感覚を忘れないようにします。

 

仮歯をだいじに使うコツって?
・硬いもの、くっつくものは我慢。

 仮歯が取れたり割れたりしないように、硬い食べ物は避けましょう。グミやガム、キャラメル、おもち、求肥の和菓子などのくっつきやすい食べ物はよくありません。しばらくのあいだ我慢を。

・取れたらすぐ連絡を!

 仮歯が取れて1週間もたつと、歯が動いて本番の被せ物が入りにくくなります。もし取れたら、すぐに歯科医院にご連絡を。

・お掃除はていねいに。

 仮歯は、本番の被せ物ほどピタリと調整されていません。歯ぐきとの境目に汚れが溜まりやすいため、ていねいな歯みがきを。ただし、フロスや楊枝は仮歯に引っかかってしまうおそれがあるので使わないで。

 

 せっかく被せ物を入れるなら、お口にピッタリ収まって噛み心地の良い方がいいですよね。そのためには、本番の被せ物ができあがるまで、仮歯を壊さないように上手に付き合ってください。治療をより良いものにするために、ご協力をお願いします。

引用参考文献:nico 2019年7月号

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穴の開いたむし歯とどう違う?徹底解剖!初期むし歯

「むし歯は黒い」とは限らない!

 むし歯というと、「黒い」とか「穴が開いている」イメージがありますが、「穴の開いていない」むし歯もあります。それがむし歯のできはじめの段階である「初期むし歯」です。

 初期むし歯になっている部分は、健全な歯がもつ透明感や光沢が失われ、「白く濁った」見かけになります。歯の表面にいつの間にか白く濁った斑点ができたというなら要注意。初期むし歯の可能性が大です。初期むし歯が進行すると、やがてみなさんおなじみの「穴の開いたむし歯」になります。

 患者さんご自身が初期むし歯に気づくのはとても難しいことですので、歯科での定期的な健診をおすすめします。

 

決め手はフッ素!初期むし歯の修復

 飲食のたびに、歯の表面に付着したプラーク(細菌のかたまり)がつくる酸の作用により、歯の結晶の内部から成分が溶け出していきます。溶け出した部分は、唾液がもつ歯の修復作用により補修されていくのですが、溶け出すスピードのほうが速い期間が長く続くと、歯の結晶がスカスカになり、初期むし歯になります。

 穴の開いたむし歯は、穴をふさぐには詰め物を詰めるしかありません。しかし初期むし歯は、“あるもの”を利用すれば、元の健全な状態に戻せる可能性があります。そのあるものとは、歯みがき剤でおなじみの「フッ素(フッ化物)」です。

 フッ素には、唾液による歯の修復を促進するはたらきがあります。フッ素により修復のスピードが上がると、初期むし歯で生じた結晶のスカスカが、時間をかけて埋まっていきます(個人差はあるものの、歯の表面の白濁が薄く小さくなっていきます)。

 

歯科医院に相談しよう!

 フッ素が効果があるとはいえ、フッ素配合歯みがき剤を使っていても、適切に使えていなければ効果が半減してしまいます。また、初期むし歯ができてしまったということは、日ごろの生活がむし歯になりやすい状況だったということでもあります。

 初期むし歯を穴の開いたむし歯にさせないためには、歯みがきのしかたや歯みがき剤の使い方、食生活を見直す必要があります。それには、歯科医院でプロのアドバイスを受けるのがいちばんです。

 フッ素配合歯みがき剤を使う際に大切なのは、「すすぎはおちょこ1杯程度の水で1回程度にする」ということ。すすぎが多いと、せっかくのフッ素がお口から洗い流されてしまいます。また、歯みがき剤の濃度は、高濃度(1,450ppm)

のものが良いですよ。

引用参考文献:nico 2019年6月号

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カギは歯みがきとメインテナンス!HOW TO 歯周病の治療&予防

 

歯周病を治す“主役”はあなたです!

 歯周病の原因は、歯と歯ぐきの境目にたまる「プラーク」という細菌のかたまり。この中に潜む歯周病菌が出す毒素が、歯の周りの組織に炎症を起こします。炎症で歯を支える骨が失われると、ついには歯がグラグラになってしまいます。

 プラークは毎日お口の中にたまります。歯科医院で徹底的にプラークを取り除いても、明日になれば、またたまります。プラークを毎日取り除けるのは「あなたご自身の歯みがき」だけ。つまり、「患者さんの歯みがき=プラーク除去」こそ、歯周病の治療であり予防なのです。

 

治療はなぜ歯みがき指導から?

 歯周病の治療といえば歯科による歯石除去。でもその前に欠かせないのが、歯みがき指導です。歯ブラシの正しい当て方をマスターする前に歯石を取っても、再びプラークがたまって歯石になってしまうので、元の木阿弥になります。

 プラークが歯みがきでしっかり落とせるようになり、歯ぐきの腫れが治まると、歯石を除去するときの痛みや出血も少なくなります。

 

炎症の原因、プラークを歯石ごと除去!

 歯石とは、プラークの中にいる細菌の死骸や唾液中のカルシウムが固まった軽石状の付着物で、歯の見えるところだけでなく、歯周ポケットの奥深くにもつきます。

 歯石自体には毒性はないのですが、問題はこの中にベタベタ入り込むプラーク。歯石は歯に固くこびりつき、歯みがきでは取れません。歯石ごと取り除かないかぎりプラークは温存され、歯周病の炎症の原因を取り去ることはできないのです。

 深くなった歯周ポケットの奥にある歯石を取るには、専門的で高度なテクニックが必要。歯科の手技の出番です。何回か通って、歯石除去を受けていただきます。

 

再発予防にはメインテナンスが必須!

 治療がひと区切りしたからといって、「もうプラークをほったらかしでOK!」とはいきません。それでは炎症が再発してしまいます。炎症のない爽快なお口を維持していくためにおすすめなのが、歯科での「メインテナンス」です。

 メインテナンスでは、歯みがきへのモチベーションを取り戻し、再発しやすい要注意ポイントをあらためて確認し、取りにくい細部のプラークもすっかりお掃除できた状態で、気持ちよくお帰りいただきます。

 治療がひと区切りしたら、再発防止のためにぜひ定期的なメインテナンスを!

引用参考文献:nico 2019年3月号

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二次カリエス(むし歯)の原因【つめもの】

治療したからといって安心は禁物!
むし歯になってしまった場合、むし歯の部分を削って「 つめもの 」したり、型取りをして銀歯を製作したりなどして歯を元の形に修復します。
むし歯は治療したからと言って「 もう安心! 」というわけではありません。

実は、むし歯は治療した箇所こそ注意が必要!

なぜなら、「 つめもの 」をしたところは、さまざまな理由により再びむし歯になってしまうリスクが大変高いのです。

こうしてできてしまうむし歯を「 二次カリエス(むし歯) 」といいます。

➀.そもそもむし歯になりやすいところである

一度治療したということは、その部分がもともとむし歯になりやすいところであるともいえます。

例えば、むし歯の原因となる歯垢(プラーク)がたまりやすかったり、あるいは

ブラッシングしにくい部分であることが多く、再度むし歯になってしまう可能性が高くなります。



②.「 つめもの 」は形がとても複雑

歯はとても複雑な形をしています。

もちろん、つめものを製作する際には、できる限りぴったりと隙間が少なくなるように製作します。

しかし、つめものは複雑な形状になりやすいため、完全に隙間をなくすことは非常に困難。

さらに、長年の使用などによるすり減りねどによて、少しずつ段差や隙間ができてしまいます。

こうしたすき間にむし歯菌が入り込むことによって二次カリエスとなってしまうのです。

③.接着剤が少しずつ溶けていく

つめものは特殊な接着剤でしっかり接着されています。

この接着剤はそれ自体が隙間をるようになっていますが、お口の中で長年使用していると、どうしても接着剤が少しずつ溶けだしてしまいます。

そこにすき間ができ、歯垢(プラーク)がたまって二次むし歯になってしまいます。

※ 以上のように一回削って治療した部位は、むし歯になりやすいため処置する前以上にブラッシングは特に要注意です!

よーく考え、納得して選択を。40代からのインプラント入門

 

インプラントは「オンリーワン」の治療

 歯を失ったとき「ブリッジか、入れ歯か、それともインプラントか」と、多くの方が迷うことでしょう。

 インプラント治療は、金属の一部をからだに埋め込み、上部に人口歯を取りつけて使うという特殊な治療法で、いちばんの特長は、金属が埋入した骨にガッチリと結合し自立すること

 

です。それはつまり、部分入れ歯などのようにほかの歯に負担をかけず、傷めずに済むということ。こうした治療は現状ではインプラント治療以外になく、そういう意味で、替えの利かない治療になっています。

 ただし欠点もあります。手術が必要、治療期間が長い、予備治療に時間がかかることもある、そして自費治療である点です。ただ、信頼性の高い材料と機器・器具を使い、検査と治療計画を精密に行い、感染対策を万全にして、専門的に訓練されたスタッフが治療するとなると、ある程度の費用が生じざるを得ない、といえるでしょう。

 

治療に時間がかかるのはなぜ?

 インプラント治療のおおまかな流れは、①相談と検査、②診断と説明、③埋入前の予備治療、④インプラント体(人口歯根)の埋入、⑤アバットメントの頭出し(接続部分の取り付け)手術、⑥上部構造づくり(人口歯の取り付け)となります。

 インプラント治療は、インプラント体を埋入してからあごの骨に結合するまでに1〜4か月ほどかかります。この結合は接着材でつけたり部品をはめ込むのではなく、骨の生体反応によるもの。つまり、インプラント治療を成功させるためには、骨の自然治癒力を見守りじっくりと待つことが不可欠。治療に時間がかかるのはそのためです。

 また、人によっては、埋入の下準備として「お口の環境整備」が必須となります。お口のクリーニングと歯みがきのスキルアップでお口の清潔を保つほか、虫歯や歯周病があるならまず治療し、あごの骨が足りなくなっているなら再生療法で増やします。

 

治療後のメインテナンスも重要です。

 インプラント治療は入れたら終わりではありません。快適に使い続けるには、むしろ入れてからのお手入れが重要です。放っておいてインプラントの周りがプラークや歯石だらけになると、今度はインプラントの周りに炎症が起き、あごの骨との結合が失われて、せっかくの治療が機能しなくなってしまいます。治療を長持ちさせるために、かならず定期的に歯科医院へメインテナンスにおいでくださいね。

引用参考文献:nico 2018年1月号

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歯を失いはじめたかたにアドバイス。治療の選択肢 どんなのがある?

 いざ歯を失って治療が必要になったときどんな治療を選ぶべきかは、患者さんのお口の状態はもちろん、どの歯を失ったのかや、患者さんのご希望によって大きく異なります。それだけに、選択に迷うかたも多いと思います。そこで、主な治療法について基本的な特徴を整理してみました。

 

ブリッジ

 「ブリッジ」は、失った歯の両脇の歯を支えにして、歯のない部分に連結型のダミーの歯を入れる治療です。

 3連結のブリッジなら、3本分の仕事を両脇の2本の歯にさせることになります。つまり支えの歯には、本来の1.5倍の仕事がふりかかるわけです。ですから、失った歯の代わりに噛む力を肩代わりできる支えの歯があるかどうか。これが良いブリッジをつくるための最大のハードルです。

 片側の支えだけでもつくれないわけではないのですが、支える歯の負担が増えるので耐久性が低くなってしまいます。

 

部分入れ歯

 「部分入れ歯」は、クラスプを歯に引っかけて固定するタイプから、マグネットやホック、インプラントなどの維持装置を設置して、より動きにくくした自費治療のもの、ソフトタイプで目立たないもの(やはり自費治療)まで、その種類はさまざまです。

 基本的にはほとんど歯を削らずにすみ、外科手術ももちろん必要ないため、ブリッジやインプラントと比べれば、もっとも選択しやすい治療でしょう。

 場合によっては試したあと、ほかの選択肢に変えることもできるので、迷うなら「ひとまず部分入れ歯で」という判断はありうると思います。

 

インプラント 

 「インプラント」の最大の特徴は、人口歯でありながら、天然歯のように「自立する」ということ。ブリッジや部分入れ歯は残った歯に支えられないと機能しませんが、インプラントの場合は、インプラント体を埋めて半年ほどそっとしておくと、あごの骨とガッチリ結合するのです。そのため周囲の歯に負担をかけずに使えます。

 ただし弱点もあります。人口歯なのでむし歯にはなりませんが、炎症に弱いのです。インプラントの周りにプラーク(細菌のかたまり)がたまると、歯周病そっくりの炎症が起きます。天然歯よりも進行が速いので、油断するとあごの骨との結合が壊れて噛めなくなってしまいます。

 特に、歯を失った原因が歯周病だというかたはもともと歯周病のリスクが高いので、ていねいなお手入れが必須です。

引用参考文献:nico 2017年7月号

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究極の細密テク。根っこの治療を知りたい!

「根っこの治療」って何ですか?

 歯の根っこの治療とは、炎症を起こしている細菌を歯の中から徹底的に追い出し減らすことにより炎症を止め、治癒に導く治療です。針のような細い器具を用いて、歯の中にある極細の神経を取り除き、神経の通っていた細い管を掃除します。

 

ミクロの敵(細菌)との勝負です!

 しかしじつはこの治療、歯科医師にとってもとても難しい治療です。というのも、闘いの相手が細菌なので、退治できたかを目で見て確認することができないのです。

 しかも、患者さんによっては歯の中で神経が迷路のように枝わかれしていたり、ねじれていたり、大きくわん曲していたりしていて、一筋縄ではいかないケースもめずらしくありません。

 こんな不利な条件下で、私たち歯科医師にできることといえば、歯の中を徹底的に掃除し、消毒して細菌を減らすことに尽きます。細菌を減らし、残った細菌が身動きできないようピタリと歯にフタをして活動を封じ込めることに成功すると、患者さんの自然治癒によって治っていくというわけです。

 このように、根っこの治癒にはさまざまな困難がありますが、治療が成功したときのメリットはたいへん大きいです。なにしろ、抜くしかなかったはずの歯を、被せ物を被せて使い続けられるのですから。

 

治療の前に知っておいてほしいこと

 根っこの治療には、痛みや違和感はつきもの。強い痛みから違和感程度のものまで含めると、6〜7割の患者さんになんらかの症状が出ることがわかっています。痛みのピークは48時間〜72時間で、2〜3日過ぎるとだいぶ楽になり、1週間もすれば患者さんの95%は痛みが治まっていきます。 

 歯科で処方された痛み止めの薬は、「痛くなってきたな」と思ったら、我慢せずに早めに飲みましょう。強い痛みを我慢すると、痛みに対する感覚が敏感になって、薬が効きにくくなってしまいます。

 また、根っこの治療の間隔は、長く空いたとしても4週間以内にしましょう。根っこの治療では、掃除をした歯の管に細菌が入らないようにシャットアウトする封の役割が非常に重要ですが、治療途中の封は外して掃除することができる仮の封なのです。

 仮の封の耐久期間は4週間程度といわれており、治療の間隔が1か月以上も空くと、封の隙間から細菌が入り、それまでの治療が無駄になってしまうことがあります。ですから、治療は間隔を空けずに終わらせましょう。

引用参考文献:nico 2017年6月

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歯の詰め物イマドキいろいろ図鑑

 国内で使われている代表的な詰め物の材料には現在、いくつかの種類があり、患者さんのご希望や歯の状態に合ったものが選択されています。軟らかめのもの、硬く丈夫なものなど、それぞれ長所と短所があるので、見た目だけでなく、むし歯の大きさ、前歯か奥歯か、噛む力の強さなども考慮して、選択されています。

 

即日治療終了。コンポジットレジン

 「コンポジットレジン」のいちばんの強みは、詰めるために歯を削る量が少なくて済むこと。詰め物が取れにくいように、余分に削ってはめ込む必要がありません。

 ただし、着色しやすいこと、大きな治療や、強い力がかかる歯の治療が苦手という弱点も。軟らかいので、使っているうちに削れたり崩れたりすることもあります。とはいえ、軟らかいぶん周りの歯にも優しく、安心しておすすめできる材料です。

 

おなじみの金属。耐久性は太鼓判!

 「金銀パラジウム合金(金バラ)」は耐久性に定評あり。ただ、歯より格段に硬いので、この硬さが歯の負担となることも。歯が自然と咬耗していくのに対して、この金属は変わらないので、歯と詰め物のあいだに段差ができ、そこに汚れがたまると、新たなむし歯の火種となってしまいます。

 「金合金(ゴールド)」は、いわゆる「金歯」のこと。今でもなくてはならない貴重な歯科材料です。というのもゴールドは、金箔をつくれるほど粘りがありしなやかなので、ピタリと歯になじみ、歯といっしょに咬耗し、しなってくれます。そのため歯と段差ができにくく、周囲の歯質も傷みにくので、保険の金バラとくらべると、長期的にみて格段に歯によいのです。デメリットは、目立つことと高価なことですね。

 

人気のセラミック。さらに割れにくく!

 「セラミック」とはそもそも「陶材」のこと。透明感がありきれいで、プラークもつきにくく変色しないかわりに、お茶碗のように欠けやすいのが難点でした。しかし、最近は歯と同程度の曲げ強度のある新材料「e.max(イーマックス)」が登場し、この弱点は改善傾向にあります。

 以前は耐久性の点から、強い力がかかる奥歯にはおすすめできませんでしたが、この新素材が登場してからは、だいぶ適用範囲が広がりました。

 

 「nico」2017年5月号では、上記以外にもさまざまな詰め物を写真つきで解説しています。詰め物について疑問に思ったら、ぜひ手に取ってみてください。

引用参考文献:nico 2017年5月号

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将来寝たきりにならないための歯と入れ歯のお話

 いま高齢者の暮らしを支えるうえで大きなテーマになっているのが、平均寿命と健康寿命の差をいかにして小さくするのか、ということです。どうすれば多くの高齢者を歯科がサポートできるのか。この命題を探るために、9月号では、「歯がある人は丈夫で長生き」など昔からの言い伝えに着目し、さまざまな研究による科学的な裏付けをみていきます。

 

「歯がある人は丈夫で長生き」って本当?

 これについては、1,000人以上の高齢者を対象に行った追跡調査の結果があります。この調査では、①噛み合わせが安定している、②噛み合わせが不安定、③噛み合わせがまったくない——-の3グループに高齢者を分け、8年間にわたり生存率を調べました。その結果、噛み合わせが良い人ほど生存率が高く、噛み合わせがない人ほど生存率が低くなっていました。

 入れ歯を使っている人と入れ歯を使っていない人でも、生存率に大きな差がありました。もし歯を失っていても、入れ歯を使って良く噛める状態を維持できていれば、より長生きできる、ということなんです。

 

「歯が丈夫な人は転びにくい」って本当?

 これも本当です。「歯が20本以上残っている人」と、「19本以下で入れ歯を使っていない人」の転倒リスクを比べたところ、なんと2.5倍も転倒リスクが高いことがわかりました。

 では、すでに歯を失っている方は歯科の力で転倒を防げないのかというと、そうではありません。認知症の高齢者に入れ歯を入れていただき、その後1年間の転倒回数を調べたところ、回数が減っていました。

 また、1年間に2回以上転倒した人と、1回以下の人の統計を取ったところ、2回以上転んだ人は、歯がなく入れ歯も使っていない割合が非常に多かったのです。

 

「良く噛める人はボケにくい」って本当?

 認知症との関係については、①20本以上歯が残っている人、②19本以下の人、③歯がほとんどなく入れ歯を使っている人、④歯がほとんどなく入れ歯を使っていない人——-に分け、割合を調べました。

 結果は、歯が多く残っている人ほど認知症の割合が低いのに加え、③の「入れ歯を使っている人」の割合は、自分の歯で食べている人、それほど離れていませんでした。入れ歯の力を借りることで、認知症の割合が低く抑えられているのです。

 このように、歯と入れ歯は、健やかな老後を送るための、ひとつの鍵になります。

引用参考文献:nico 2016年9月号